《ガチャで死したら異世界転移しました》人竜戦爭 ④ 希

「あ゛ーーーー!!!」

伝令の兵が自の部屋を出て行き遠ざかるのを待った、部屋の主が、今日何度目かという苦悶のびをあげる。

「・・・はぁ・・・もうやだ・・・早く隠居したい・・・」

仕事中にも関わらず、素の口調が出てしまうほど、部屋の主セタリッド國王は疲弊していた。

「・・・よりによって、なぜ今日なのだ・・・」

國王の気が滅るのも仕方が無い、先程部屋を出ていった兵からの報告によると、スラグディアの南側から、大量の竜族達が飛來している、らしい。竜族一匹だけでも國の衛兵団がくほどだというのに、それが大量と來た。この國の勇者達でも、2、3匹足止めできていい方だろう。

勇者使えな、と思うかもしれないが、この世界ではこれが普通なのである。

打つ手無しとは、正にこのことだ。

優秀な臣下達が、既に隣國へと支援を要請してくれているようだが、他國が自分たちの國の勇者を派遣するとは思えないし、支援兵団が到著している頃には、もうこの國は滅んでいるだろう。

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そんな時、國王の脳裏には一人の、子供にも関わらず、思わず見惚れてしまうような貌を持つ(?)が浮かんだ、がしかし・・・

(本當に、なぜ今日なのだ・・・)

実際、竜族達がこの大陸のはるか南方に渡り住んでいたことは知っていたし、近くこの大陸へ侵略してくるだろうという報も摑んではいた。それ故、黒竜を消滅させられるほどの実力者であるレイン・グレスティアへと協力を求めた。結果、この國の戦力となってはくれなかったが、冒険者としてならば力を貸すこともできるという。これはとても喜ばしいことだ、しかし問題は・・・

「今日、依頼しちゃったじゃん・・・」

國王は椅子に座ったまま、目の前の機に突っ伏す。

そう、よりによって今日依頼をしてしまったのだ。普通なら、準備で2日3日かかるだろうが、すぐに出発してしまった、というギルドからの報告が上がっている。それが約3時間前の事だ。

竜族達はもうスラグディア南の平野まで來てしまっている、今から戻って來たとしても、間に合わないだろう。

「・・・あぁ、終わった・・・終わったよ・・・」

「何が終わったんですか?陛下」

「いや、竜族が大量に飛來してきて、こちらには戦力が足りないのだ。どう考えてもおわっ・・・て?」

不審に思った國王が顔を上げると、そこには正にこの國の希となるであろう、ギルド長、紅華がいた。

「えっ・・・・・・?」

「?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レインから依頼の報告を任せられた紅華は、ギルドの裏口から外に出、全速力で王城へと向かった。

(一刻も早く報告を終わらせ、主殿の元へと戻らなければ!)

紅華は、その場にいる誰もが反応できないほどの速度で駆け、國王の居る部屋の前へと到著する。そしてもう何度もして慣れたノックをし、し待っても返事がなかったので、勝手にドアを開ける。こういう場合は、部屋の主が自分の世界にり込んでしまっていると分かっているからだ。

「失禮します」

一応言っておきます的な口調で言い、早足で國王の元へと歩く。案の定、國王は機に突っ伏し、何やらブツブツ呟いている。すると、

「・・・あぁ、終わった・・・終わったよ・・・」

と、國王が口にする。このままではいつまで経っても戻ってこないと悟った紅華は、強制的に引き戻すことにした。

「何が終わったんですか?陛下」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

目の前の信じられない景に、國王はしばし唖然とする。絶対にいないだろうと思っていた人が、見間違うはずもない程の麗人が、自分を見つめ、可らしく首をかしげているのだ。

「何もないのなら、報告を済まさせていただきます。私は急がなくてはならないので」

「はっ!いや、すまない、し考え事を」

紅華の言葉に我に返った國王が慌てて繕う。

「しかし、報告?そなたは私からの依頼でしばらくこの街に居ないはずでは…?」

「その件を既に完了し、報告に來た次第ですが?」

「・・・・・・」

國王は、意味がわからないと言うふうに、固まる。

「・・・では、報告はこの紙にまとめておりますので、では」

紅華は持っていた紙を機に起き、踵を返し歩き出す。

「あっ!ちょちょちょっとまって、待ってしい!」

再び息を吹き返した國王は慌ててそれを呼び止め、振り返った紅華に一つ問う。

「そなたが戻ったということは、そなたの主殿もこの街に戻っている、ということかね?」

「はい、そうですね、既にお戻りになっています。今頃は街の南門にいるかと。私もそこに向かうので。では」

紅華はまた歩き出し、すぐに部屋を出ていった。

「・・・・・・い・・・」

今得た報を脳で整理し終わった國王は、機に置いてあった、既に冷めきってしまった紅茶でを潤し、小さくぶ。

「いよっしゃぁぁあ!!」

に満ちた聲で。

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