《ガチャで死したら異世界転移しました》人竜戦爭 ⑪ 己が主の為に

【嫉妬の鉤爪クロウ・オブ・レヴィアタン】によって左翼、レインの出現によって中央の進軍が停止した。右翼における司令である、スメア・グリーストはこれに困し、また喜びをじていた。

「グリースト様、今進軍ができるのは我々だけです。我々だけで功績をあげれば、王からの評価も上がり、より高い地位も得られましょう。このまま突っ切るべきです!」

グリーストの左後ろにいる副から、そう言葉が飛ぶ。グリーストはそんな言葉にいい気になり、飛ぶ速さを上昇させる。しかし、

「・・・いえ、司令様。恐れながら、ここは一時撤退すべきかと」

今度は右後ろ側を飛んでいたもう一人の副から、先程とは反対の言が飛んだ。

「・・・貴様、名は?」

グリーストは首だけ後ろを向く。

「名、ですか。ナイギル、で座いますが」

「そうだな、そんな名前だったな。・・・で?先程はなんと言っていたかな、平民・・?」

ナイギルはかけられた言葉に含まれた意味もわからず、また繰り返す。

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「・・・ですから、ここは一旦・・・」

「だから黙れ平民。し力が強い、し優秀だからと副にしてやったのにも関わらず、この私に逆らうのか?」

竜族における階級も、人間同様名前の數で決まる。これは竜族と人族が共存していた時代の名殘である。平民階級が一つ名、貴族階級が二つ名、そして王は、平民、貴族に関わらず自分のいまの名に一つ足すことになっている。人族では権力であるが、竜族にとって、階級は自の力を示唆するものであり、証明するものであるのだ。

しかし、何においても、例外というものはあり、ナイギルのように平民でも司令補佐という高い地位に著ける・・・事もあるのだ。

しかしながらナイギルの心は、そんな比較的恵まれた環境にいるのにも関わらず、不服と心配に埋まっていた。

「はぁ。わっからないかなぁナイギル君よぉ。謎の魔法で左翼、なんでか分からないけど中央の進軍が止まってるんだぜ?敵は薄っぺらい壁一枚の先、今功績を挙げなけりゃ、一いつ挙げるってんだ?」

そのうちの一つが、これだった。馬鹿なのに、上司の機嫌取りはできる。タチの悪いことこの上ない。大、謎の魔法、なんでか分からないけど、とか言っている時點で副としては失格であり、原因を見つけようともしないのは論外である。

「そうだ平民。・・・平民とはいえ、もうし優秀なやつだと思っていたのだが、こんなことも分からないのでは、私の失敗だったかな?」

目の前の功績に目がくらんでいるのか、グリーストはもはや嫌味を隠そうともしない。

「いえいえグリースト様の失敗ではありませんよ。すべて悪いのはナイギルですよ。こいつがもっと考える頭を持っていれば・・・」

「ふん。それもそうだな。安心せよナイギル。後、報告の際には、貴様は上に逆らってでも、立ち往生している方々を見守っていました。とでも言っておいてやろう!ハッハッハッハッハッ!」

「そーりゃいいや!アッヒャヒャヒャ!!」

2匹の竜は、何が面白いのか、未來の自分たちを夢見て酔っているのか、狂おしいほどの笑い聲を上げ、更に速度を上げていく。

「・・・」

ナイギルは呆れ果て、戦意も失せ、地上に降りた。そんな時だった、突然聞き覚えのない聲が響く。

「紅蓮ノ型・焔太刀ホムラノオオタチ」

ナイギルはハッとし、周りを見渡す。

「・・・気のせいか・・・?」

空耳かと思い正面に視線を戻した瞬間、ナイギルは、自の前に何か巨大(あくまで人間から見れば)な黒いものが落ちてきたことに気づく。

ナイギルは慌てて飛び退き、落ちてきたものを確認する。

「・・・っ!」

薄々づいてはいたが、やはりそれ・・は、先程自分を笑い蔑んだ、2匹の竜のれの果てであった。いや、それだけでは無い、今もまだ空から同志達がバラバラになって墜落している。

(対空撃か?しかし、弓なんてどこにも飛んでないぞ・・・?)

そしてナイギルは更に、その四散した死の奧に人影を見る。

「・・・お前は誰だ?人間か、名乗れ」

ナイギルは、夕刻といえども近くにいるはずの人影が、竜の目をもってしてもぼんやりとしか見えないのを不思議に思いながら、問う。

「・・・人に名を尋ねるのならまず自分から、と言いたいところだが。生憎、名乗る暇も名乗らせる暇も、今は持ち合わせていないのだ。すべては主殿にほめ・・・いや、主殿の為に。私はこれで十分。今は戦い集中すべきだ。さぁ、始めよう。今は正にと影が重なる時、つまり・・・私の時間だ」

ナイギルの視線の先、黒い人影の雙眸が、妖しくに開かれた────

紅華が竜族右翼を接敵した頃、メア、サラそして【憤怒】は、右翼のし後方にある大きめの林で待機していた。

「サラ、紅華達が戦闘を開始したみたい。本格的な戦闘になったら、直ぐに範囲系魔法を使うつもりだから、補助詠唱ができるようにしておいてね」

「は、はい!」

と言っても、事前にレインから、あまり數を減らしすぎるなと言われているので、そこまで強力な魔法を使うつもりは無い。

「・・・・・・・・・」

「・・・ちょっと【憤怒】…さん?さっきから黙ってますけど、私達は同じ主を持った仲間ですよ?いつまで黙りこくっているんですか!」

【憤怒】の寡黙さに流石のメアもしびれを切らし、正面から【憤怒】と目を合わせる。

「・・・・・・ぃぃ・・・」

【憤怒】は顔を逸らし、ぼそぼそと何かを呟いた。

「え?聞こえませんでした。もう1回言ってもらえますか?」

「・・・戦えればそれでいい、そう言ったのだ。主にもそう言われたしな」

しムッとした【憤怒】が、ドスの効いた低い聲でうなる。

「・・・あら、そうですか」

「そうだ」

それだけ言うと【憤怒】は、また黙り、腕を組んで瞑想を始めた。

「・・・ふむふむ。よく分かっているじゃないですか。いいですよ、思う存分、戦わせてあげますよ」

メアのこの言葉に、【憤怒】は反応する。

「・・・いつだ?」

「ふふっ。今、直ぐにでもいいですよ?」

【憤怒】は立ち上がり、竜族達の方へ林を抜けていく。

「あぁちょっと!分かっているとは思いますが、あまり數を減らしすぎないようにしてくださいねー!」

右の2本の腕で答える【憤怒】をし不安に思いながらも、サラとメアも移を開始する。

魔法専門職であるメアと、サポートキャラでありながら、スキルではプレイヤーの【詠唱者】にも引けを取らないサラでもってしても、何も見えないところから味方を巻き込まず広範囲魔法を発揮することは、ほぼ出來ないと言っていいからだ。

(そんなことが出來るのは、この世で主様だけでしょう)

そんなことを考えるメアとサラに、音と衝撃波が伝わってきた。

「さぁ、始まりますよ、サラ。私達も行きましょう!」

全ては、己が主(様(殿)に褒めてもらう)の為に────

いやはや、お待たせ致しました。・・・いえ、すみません。

お壽司を食べていたら、「・・・あれ?今日って・・・はっ!もう1週間すぎてるぅ!?」となり、慌てて書き始めた次第です・・・最近は暇になってきたので、次は安定して書けるかと思います。

待っていてくれた方(居ればですが・・・)本當に申し訳ありませんでした・・・

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