《ガチャで死したら異世界転移しました》人竜戦爭 ⑰ 至福の時

「ふぁ~」

こちらの世界に來てから最も忙しい日を終えたレインは、窓からのぞく眩しい朝日で目を覚ます。

「おはようございます主様」

そしてそんなレインの目の前には、朝日が霞んで見えるような輝かんばかりの笑顔のメアが立っていた。

「おはよう・・・?」

おかしい。昨晩のレインの目論見では、ルーナや紅華がメアをもう片方の部屋に留めておいてくれるはずだったのだが・・・

(なぜここにいる・・・)

「・・・いつから居たの?」

ベットの上で上半を起こしたレインがメアに言う。

「ずっとです」

メアの顔はさらに輝きを増す。

「ずっと・・・?」

「はい。ずっとです!」

「・・・朝ごはん抜きで」

「えっ?!」

レインは何かいたたまれない気持ちで判決を言い渡した。

「あら、ティア君。おはよう」

おばさんはいつもと変わらずの綺麗な・・・笑顔でレイン一行を迎えてくれた。

「おはようございます」

「昨日は疲れたでしょう?朝ごはんはもう作ってあるわ、今持ってくるから座って待って居てちょうだい」

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レインは近くにあったテーブルに著く。

「ごめんくださーい。ここにティア君がいるって聞いてきたんですけど・・・あ、いた」

レインが席に座ってすぐ店の扉を開いてやってきたのは、カイルであった。

「あれ、カイルどうしたの?」

気付いたレインは、座りながら尋ねる。

「ああ、実はね・・・昨日のあの後紅華さんが教えてくれた竜族の王の死のことなんだけど・・・どこにもなかったんだよね」

「・・・うーん・・・そうかぁ」

(そっちだったかぁ)

俗にいうフラグ回収をしてしまったレインであった。

「はいどうぞ、めしあがれーって・・・あれ!?なんでここに勇者様が!?」

そこへご飯を持ってきたおばさんが、カイルを見て驚き皿を落としそうになる。

「あ、この店のかたですね。すみません、ちょっとティア君に用事ありまして」

カイルは笑顔で答え、流石の青年っぷりを発揮する。

「い、いえいえ。き、気にしないでください勇者様、むしろ用事がなくても來てほしいくらいなんですけど・・・」

そういいながらもおばさんは一瞬で料理を置いて店の奧へと戻って行ってしまった。

「わーすごいねー人気者は大変だねー」

「全然心がこもってないんだけど・・・」

真顔のレインにカイルが苦笑いで答える。

(これがイケメンパワーというものなのか・・・)

慎也であった頃も決して悪い容姿ではなかったレインだが、こうも目の前で目せつけられしイラっとしていた。

「・・・で。死がなくなっていたっていうのは本當なの?」

「あぁ。俺やリーナを含めた調査隊を組織して捜索したけど、紅華さんに言われた場所とその周辺にはなかったんだ」

先ほどのさわやかカイルとは打って変わって、まじめカイルが言う。

「ん~~~」

めんどくさいことになりそうだな、と思いつつレインは腕を組む。

「まぁ、どうせこの後王様に會いに行こうと思ってるし、詳しい話はその時ってことで。いまはご飯が食べたい。あ、カイルも食べる?おばさんのご飯、ものすごくおいしいよ」

レインはすぐに料理に向きなおり、至福の時を開始していた。

「あ、ああ。うん、そうだね。じゃあいただくよ・・・!!??」

そしてカイルもまたしばしの休息を開始した。

カイルが目の前の見上げるほど大きな扉をたたく。

「國王様、カイル・フリデールです。レイン・グレスティア君を連れてきました」

部屋の主の許しを得て、一行は扉を開け中にる。

以前來た時とは違う、さらに広く荘厳な部屋であった。今回は結構大勢の衛兵もいた。

(・・・落ち著かない)

そんな部屋を見て出だしから気分ダダ下がりのレインは、せめてそれを顔に出さないよう努めていた。

朝ごはんを食べ終わったレイン達とカイルはまさに今、昨日の顛末の報告をするために國王に會いに來ていた。

「・・して、勇者カイル、レイン・グレスティア殿とその仲間たちよ。改めて昨日の話を聞かせてもらえるかな?」

國王は玉座であろう無駄に豪華な椅子に深く座り、その聲を響かせる。

「お待ちください陛下!その前に、グレスティアという者が本當に報告の通りの実力を持っているのかどうか、調べさせていただきたく!」

突然國王の隣で立っていた甲冑姿のが大聲で言う。

その聲に國王が驚き、ピクッといていた。

そしてさらに、聲で気づいたのか、レインの後ろに続く全員の纏う空気が途端に冷たくなる。

(多分昨日の・・・兵団長・・・だったかな?)

「う、うむ。確かに、私もグレスティア殿の実力をこの目で見たことはなかったからな。グレスティア殿が良しというのであれば、だが」

この場の全員の目がレインに向けられる。特に後ろからの視線が期待に満ち満ちていることが、意識せずともわかった。

「まぁ。別にいいですけど」

「・・・あんまりやりすぎないようにね?」

橫からカイルが甲冑のに聞こえないように小さな聲で話しかけてきた。

「昨日のあの後に君が本當のティア君だってことを言ってからずっとあの調子でさ。彼、自分の認めた人じゃないとああいうじになっちゃうんだよね」

「めんd・・・へぇー」

ぎりぎりのところで率直な想を抑えたレインは歩き出し、甲冑のの前に移する。

「カイル殿の言った通り、貴公がレイン・グレスティアであったのだな。昨日は人違いをした、そこは謝ろう。すまなかった。だが!私は貴公の実力を認めたわけではない。そうだな・・・ここは時間もあまり取るわけにはいかぬゆえ、一本勝負ということでいいだろうか?」

「うん。いいよ」

(また一本勝負なのか、この世界の人は一本勝負が好きなのかな?)

「得はこちらで用意するが、どういったものがいいだろうか?」

「普通に、木刀とかでいいよ」

「そうか。では、すぐに持ってこさせよう。國王様、々お待ちいただくことになりますが・・・」

「うむ、いいだろう」

甲冑のはすぐに部下に命じる。

暇になったレインは、なんとなく後ろを振り向く。

そこでは、メア達が期待と興で瞳を爛々と輝かせていた。

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