《ガチャで死したら異世界転移しました》冒険者學校 ⑰ レインvsダルダ

「ありがとうございました」

控え室に戻ったアリサは、喜ぶよりも先にレインに向かい頭を下げた。

「指の事なら禮はいりませんよ。前も言いましたが、ここにいる全員の指にはめてもまだ余るくらいあるので」

サラッと弾発言──この世界では──をするレインだが、アリサは首を振る。

「その事ではありません。いえ、その事もなんですが。兎に角、グレスティアさんの助言・・がなければ私は絶対に負けていました。それに、最後の大発の後、レヴィアさんが無傷で眠っていたのも、グレスティアさんが何かしてくれたんでしょう?」

「さて、僕は指を差し上げただけです、助言だのなんだのと言われても、覚えがありませんね」

心當たりしか無いレインだが、敢えて知らないふりをする。

「・・・それにしても、あれは本當に上級魔法なんですか?発時の効果自は上級のそれと言えなくもないですが、最後の発…あれは・・・」

レインをガン見しながらレイが言う。

(やめて、そんな目で僕を見ないで)

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「・・・それに、あのリエナ・レヴィアをも戦闘不能にする程の魔法で、何故観客の皆さんへの被害が皆無なのでしょうか?」

続いて、アリサがワザとではないかという程純粋な目でレインを見る。

「ふむ、グレスティアよ。先のあの魔法は私が以前使用したものと同級なのであろう?効果が違うので正確かは分からんが、なくとも私のあれは最上級魔法として分類されるぞ」

イグラッドが不意に放った言葉で、室は靜まり返る。

「「・・・・・・」」

「ま、まぁ…バレなきゃ・・・ね?」

『────え、えぇっと・・・し…勝者、イグラッド・ルインツァーレ!!』

「はぁ…有名な冒険者チームと言うから期待してみれば・・・とんだ期待はずれだ」

「「・・・・・・」」

「容赦ないな…」

捨てるように言い、文字通り秒・でボコボコにし昏倒した相手を背に悠然と控え室へ戻るイグラッドに、一同はまたもや靜まり返った。

『さぁ、気を取り直して・・・いよいよ本日のメインイベントも大詰めであります!ハウルド家からはスラグディアきっての豪傑ダルダ・デリドォ!!』

歓聲と共にハウルド家側の控え室から一人の男が出てきた。

『続いて、レクウェル家からは…英雄と名高い、レイン・グレスティアァァ!!!』

続くアナウンスにレインも場する。

二名は中央で歩く。

(・・・でかくね?)

レインがまず思ったことはそれである。

レイン・グレスティア自長があまり高くないのもあるが、それを差し引いても目の前の男とレインの長差は驚愕に値する程だ。

(僕が150センチだから・・・3メートル強・・・めてない時の【憤怒】くらいあるな)

「え、人間?」

地球では有り得ないだろう景に、レインは思わず口にする。

「・・・うむ、ご名答、であるな。我はダルダ・デリド、小巨人族スモールジャイアントである」

「お、おう」

(小巨人族スモールジャイアント・・・そんな種族はEOWにはいなかったな。てか、小なのか巨人なのかどっちなんだよ・・・)

「案ずるな、多長差など我は気にせん。加減遠慮一切無し、ということであろう?」

(え、なに?なんも言ってないんだけど。それに多って…倍以上の差って多って言うんだっけ?)

「えっと・・・うん。そうだね…」

そうしてダルダは黙って己の拳を構える。

レインもそれに倣い、控え室から持ってきた木刀を何となく構えてみる。

『さぁ、両者準備が整ったようです!───ここまでは雙方2勝2敗。この戦いを制した者が本當の勝者となります・・・それでは、始めっ!!』

何時しか完もピタリと止み、閑靜な場を一人テンションが高いアナウンスのびが響いた。

先の宣言通り、ダルダはその獅子迅と讃えられたその実力を余すことなく発揮する。

瞬き一つ許さず間近まで接近し振りかぶるダルダ、そしてそれを何をするでもなくただ木刀をだらんと下げ見る・・レイン。

(アリサの時ほど手加減はしないとはいえ、さっきのイグラッドのように一瞬で終わらせても面白くないからな)

ダルダが振るった剛腕が屆く直前、レインはいた───誰よりも速く。

「ッ!?」

気付いた時、ダルダは何故か空を眺めていた。それもただ上を向くのではなく、地面に仰向けに倒れてである。

「・・・何が・・・?」

驚愕するダルダだが、今は戦闘中だと思い出し直ぐに起き上がる。

「へぇ、全然平気そうだね。結構思い切り投げたのにな・・・これは  し解除・・してもいいかもな」

そう呟くレインに向き直ったダルダは、右手に痛みをじ視線を向ける。そこには何かに摑まれたように赤く跡が付いていた。

「まさか、片手で・・・こんなが、であるか?」

ダルダにとって自分の初撃が躱される事はあっても、その反撃で文字の通り投げられるなど初めてであった。

じゃない、男だ」

「っぐぅ!?」

いつの間にか目前で木刀を振ろうとしているレインに、ダルダはギリギリのところで左手を使ってガードした。

全力で踏ん張るダルダだが、遂には防ぎ切れず、レインが木刀を振り抜くと同時に後ろへ押し飛ばされる。

(何故であるか・・・あんな小さなの何処からあんな力が? 加えて・・・これは、折れているであるな。暫くは使いにならないのである)

小スモールとはいえ巨人族ジャイアントである自分がたった一撃で骨を折られる訳が無い、とは思うダルダだが、修行の最中度々験した痛みが本當だと報せてくる。

「これはまずいであるな・・・やむを得ん、本來は対魔でしか使わぬスキルであるが───我に巨なる力を【豪腕剛力】【四肢激】!!」

ダルダがスキルを使用すると、元々丸太のようであった手足が更に膨張する。どうやら左腕の骨折さえも完治しているようであった。

「おぉ、つまるところ第二形態ってところかな。いいね、そういうの」

敵が強化されたのにも関わらず、レインは笑い、喜ぶ。

「あまり甘く見るべきではないのである、これよりは、先とは全く別の戦闘と思うべきであるっ!」

「っ!」

 

全力を出したダルダの疾風の如き踏み込みは、レインの目ですら見えなかった・・・・・・。既のところでダルダの繰り出した正拳突きの直撃は免れたが、無理な防で木刀が砕される。

レインは一度は飛び退き距離をとり、柄だけ殘った木刀を投げ捨て、「・・・ボロいな」と呟く。

「どうするであるか、武を再び取りに行くと言うのなら待つであるが?」

敢えて追撃せずそう問うダルダ。

「・・・いや、いい」

「そうであるか。では、行くであ──」

「武なら、もうある」

靜かな、笑みなど微塵もじられないその聲を聞く相手は、もうそこにはいない。

今のレインの全力の一振りによって既に吹き飛ばされ、一瞬で観客席の壁に激突しているのだから。

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