《職に恵まれた年は世界を無雙する》対抗戦、開幕なり
今日は、対抗戦だ。出場する人は今日まで死ぬほどの努力をしてきたのだろう。だが、ここには例外がいた。なんの努力もせず、戦闘回數2回...。努力のない人ほど優勝からは遠ざかっていく。もしそいつが、天才型出ない限りの話だが。
館には、黒龍としいに異世界では珍しい黒髪の年がいた。正確には寢ていた。対抗戦は、9時から始まる。そして、いまの時刻は8時だ。本來ならば龍央が起こしてくるはずだった。では、なぜ起こしに來ないのか。それは、龍央は世界でも1000人程しかいないSランク保持者で、対抗戦を行う會場に一番近い保持者であること、ゲストとして呼ばれていたからである。準備を手伝いに、龍央は7時に館を出発していた。このままでは対抗戦に出られず、棄権になってしまう。そんなことはあってはならぬと、俺は夢の中で自分を殺そうとしていた。そのおかげかようやく目を覚ますことができた。
「自殺ってもんは怖いもんだな…。」
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海希は、死の恐怖を夢の中ではあるもののしっかりと覚えていて、対抗戦に怖じをしてしまいそうになった。
「やべぇ、もう8時過ぎてんじゃねぇか!優勝逃しちまう!」
廻とクロエは既に起きていたらしく、カイの寢顔をずっと見ていたらしい。
「案外、可らしく寢るのだな」
クロエからそんな言葉が発せられて、俺はし吐き気を催した。
「気持ち悪いこと言うなよ…。それより、準備だ!」
「もう準備終わってるよ?」
廻が俺の分までやってくれていた。
「準備するなら、俺も起こしてくれるとありがたかったんだけどな…。」
そんなことを言っていると、廻とクロエはもう外に出ていたらしく、「早く早く。」と窓の外から言っていた。
8︰30
クロエに乗り、ようやくギルドまでは著いた。そこでオルナが駆け寄ってくる。
「どうしたんですか?もうすぐ始まっちゃいますよ!急いでください!」
そう言われて、俺と廻は闘技場へ向かった。
「遅かったじゃねぇか!なんだ、やっぱり寢過ごしたのか?とりあえずこれをけ取れ。」
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聲の主は、龍央だ。
「なんだ、これは。」
「それはナンバープレートだ。そこに書かれている番號が呼ばれたら、大気室へ行ってくれ。」
「わかった。それまでは自由でいいんだな?」
「あぁ、だが1番だからもう次だぞ。」
は!?
聲を出さずに、口だけで言った。
「いくら何でも早すぎだろ!なんで1番なんだよ!」
「それはカイが悪い。遅かったのが悪い。てなわけで、頑張れよー!」
適當かよ!、思わずそうツッコミそうになる。
-ピーンポーンパーンポーン-
ナンバー1番、ナンバー100番は待機室に來てください。
俺は急いで、廻と一緒に待機室へ走って向かった。
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ…………グギュルルルル
「腹減ったなぁ……。」
走っている間、そんなことを言っていると、廻がパンを渡してきた。
「これ、あげる。」
「いや、もっと早くから渡せよなw」
「ごめん、忘れてたの。」
人は誰しも忘れるからいいか。
あれ、廻は人じゃねぇな。
1番と書かれたプレートを持っている俺を見つけた、待機室の人たちが、俺に駆け寄ってきて、何も言わず、俺の手を引いて待機室に駆け込んだ。
待機室の外からは、審判と司會者の紹介が聞こえてきた。
「これより、第34回バトル大會をトーナメントで行いたいと思います!待機している出場社は私の合図でそれぞれ出てきてください!」
バン!バン!バババン!
音だけの花火が上がる。
「番號1番!神谷海希!」
言われた瞬間、部屋人達に背中を押され、正面から見て右側に登場する。
「海希様は、三日ほど前にギルドに冒険者登録をした、出來立てホヤホヤのルーキー!それに対し、ランクは……………………えっ?えー、ランクはとのことです!さて、そんなルーキーさんの対戦相手は!」
バァァン!
相手の待機室の前が発し、煙で見えなくなった。そこから現れたのは、いかにも強そうなガタイの良い男だ。
「番號100番!レオルド=ウォルクス!」
名前が言われた瞬間、観客席から凄い歓聲が聞こえてきた。
「レオルド様は、前大會、ベスト3にっています!ランクは、數ないS!もうしでSSにあがるとか上がらないとか!」
「どおりで周りが五月蝿いうるさい訳だ。だが、俺よりランク低いじゃねぇか。勝てるな。つか、ルーキーにどんな奴と相手させてんだよ。」
俺は誰にも聞こえないように、呟く。戦闘回數がない俺にとっては、相手の行など予測できるわけもなく、もしかしたら負けるかもしれないという考えがよぎる。
「レオルド様は理職、海希様は、バランス型ですが、今回は魔法職です!ジョブとしては魔法職の方が有利ですが、相手が相手ですので、激しく興させる戦いが見られるかも知れません!さぁ、お互いに契約獣がいるようですので、お呼びください。まずは、レオルド様から!」
観客は、一斉に靜かになった。どうやら、完全で呼び出すには集中しなければいけないらしい。
「…………我が家系を繋ぐ者、我がに従い、顕現せよ!」
レオルドの橫に大きく、蒼い球が現れたかと思うと、すぐに消え去り、そこから現れたのは、フェンリルのような狼だった。
わあぁぁぁぁぁ!!!!
またもや、歓聲が會場を包む。
「さぁ、次は海希様の番です!」
俺は、ぶのもありだと思ったが、事前に教えられていた方法でクロエを呼ぶことにした。
俺は、紋章のある右手を空へ掲げる。すると、紋章は目が痛くなるほど、紅く輝き、おさまったと思うと、會場に黒い影が一瞬覆う。また、黒い影が會場を覆う。何事かと、皆が上を見上げると、フェンリルの4倍ほどの黒龍が翼を広げ、こちらを見ていた。
しばらくして、俺の橫に黒龍、クロエが、ドスンっ!と音を立てて降りてくる。
レオルドとは違い、會場全が靜まり返っていて、妙な空気に包まれていた。
「…………えーっと、それでは1回目の試合を始めます。お互いに握手してください。」
その際に、レオルドに力一杯握られたので、俺はその倍やり返した。すると、レオルドは痛かったのか、バッと手を引いた。そして、最初の位置へ戻る。
「それではスタート。」
司會者も観客もさっきとは打って変わってとても靜かだ。
最初に仕掛けてきたのはレオルドだった。
「ファル!攪かくらんだ!」
「了解、レオルド。」
き通ったしい聲が響く。
俺も仕掛けるか!
「クロエ、廻、俺の代わりにあいつらと戦ってくれないか?俺は、レオルドとフェンリルの特徴をノートに書き殘しておきたい。」
「「了解。」」
クロエは、黒く大きな翼で俺を包む。相手が見えるように僅かな隙間ではあるが、開けてくれているのがクロエのいいところだ。クロエが守り、廻が攻撃する。廻は面倒くさくなってきたのか、魔法を発する。
「神機魔法、絶対零度永遠に眠れ」
瞬間、フェンリルとレオルドは凍りついた。一瞬の出來事で會場中が疑問の聲に溢れた。俺は勝利を確信したと思ったが、安易だった。
フェンリルの表が蒼から紅に変わった。そして、氷が徐々に溶けていく。
「え?僕の絶対零度が負けるなんて……。凄い…………。」
「なんだっ!?水だけじゃないのか?!」
俺は屬が変わることについて、とても驚いた。油斷した隙に、フェンリル(?)が俺に攻撃してきたので、思わずバリアを唱えた。司會者がやっと喋る。
「ここで本領を発揮しました!レオルド様のファルはとてもかっこいいです!」
ファルってあだ名じゃなかったんだ…………。
「廻、今の事書いたら、あとは俺がやる。」
カキカキ…………。よし!
「クロエも廻もありがとう。下がっていてくれ。」
司會者が突然の俺の行に実況する。
「おっと!海希様が、き出しました!廻様と黒龍様を下がらせます!」
俺に行をさせないように、相手が突っ込んでくる。だが、もう遅い。
「絶壁封印!」
相手の周りを、赤黒いのような土の壁が包む。いくら攻撃しても壊れない。
俺は司會者に、あることを聞いた。
「この中って、観客の皆さんに見せた方がいいですか?」
「そりゃもちろんそうですよ!」
「マジックミラー!」
これで、こちらから見えても、相手には見えない。最高だな。
相手が、必死に攻撃している。それをクロエに乗って眺めている俺。とても稽だ。
「増繁蝕んで死ね」
壁の中に、數百ものコカトリス毒鳥が現れる。そいつらは、レオルドとフェンリルを襲う。この魔法は、対戦相手が戦闘不能となれば、自的に解除される仕組みになっている。
フォンッ
という音がし、魔法の全てが消える。相手は、もうかない。毒が回って気絶したのだろう。
「勝者、神谷海希!見たことのない魔法で相手を沈黙させました!これはもうルーキーの域ではありません!」
観客席から、なんだ、あの高校生…………強すぎだろ!、あんな魔法見たことない…………、やり方がエグい…など様々な聲が発せられていた。
「クロエ、元に戻っていいぞ。」
クロエは翼をバサッと広げ、飛んでいった。
よし、勝利を龍央に伝えに行こう。
「龍央、勝ったぞ。」
「おお、そうだな!だが、魔をあれだけ召喚するなんてどんだけMP有り余ってんだよ!」
MPってマジックポイントだよな。この世界でもMPいるんだ。
「俺疲れたから次の試合まで寢てくる。」
「そうだな、俺の泊まってる部屋を使うといい。闘技場を出て、すぐ右にある建だ。売店もあるからちゃんと食ってけよ。」
俺は、足早にホテルへと向かう。そして、龍央の部屋にたどり著くや否や、ベッドに橫になり、よぐに眠りについた。
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