《職に恵まれた年は世界を無雙する》もう1人の主人公

これは、剣盃秀義の話である。

海希と別れた秀義こと僕は館を出て、北へ北へ進んでいた。そんなある日、僕はさっそく危機に陥っていた。別れも告げずに旅立った僕はそれを後悔している。なぜなら、眼前にアイツが現れたからだ。それは、今人類に最も恐れられていて、未だなお姿を現さなかった古代より生きし魔。金に輝く曲がりくねった2本の角。背中から生える2対の赤黒い翼。赤と黒で形された魔のものと思わせる瞳。いかにもな魔王裝備。僕は、柄にもなくその姿を目の當たりにして腰を抜かしてしまったのだが。

もちをつく直前、魔王と思わしき奴に腕を引っ張られ、なんとかを打たずにすんだ。

「安心しろ。我は、我に危害を加えぬ限り、殺すような外道な事はせぬ。急で悪いのだが、貴殿に頼み事を申す。」

僕は今までに培ってきた経験を思い出し、冷靜に対処する。

「魔王様が僕に何のようだ。」

「ほう、我が魔王だとよく分かったな。」

いや、その容姿で魔王じゃなかったら妖怪だよ!というツッコミをれようとしたら攻撃されるかもしれないので慌てての奧に沈める。

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「我は、魔王ヴァルガリア!人々に恐れられし、世界の秩序を守るものである。貴殿に頼みたいことは、我と存在を変わってほしいことである。」

は?何言ってんだ。僕が魔王になる?そんなことが可能なのか?そもそもなぜ?次々と疑問が湧き出てくる。

「それはなぜですか?魔王という立場はとてもとても偉大で困り事など無いように思えるのですが。」

魔王は々目に涙を浮かべ、意外な答えを出した。

「我は、強さ故に孤獨、今まで友と呼べる者がいなかったのだ。我は、一からやり直して友を作りたい。それだけだ。」

マジか、こいつ。と心では思う。決して口にはしないのだが。

「そんな事のために魔王を捨てるのですか?」

「いや、捨てるのではなく、移すのである。貴殿のにな。我は、元々これほど強大な力は持っていなかった。だから、この姿になってからというもの、人の姿に化けることが出來なかった。だが、貴殿なら容易に出來ることだろう。貴殿の現在の魔力量は我を超えている。」

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僕が魔王に勝ってる?それってすごい事じゃないか。

「それはきっと、そのスキルのおかげだと思うがな。」

スキルという言葉を聞き、ギルドウォッチをひらく。そのスキル欄には、『魔力吸収・増』というものがあった。これは、自分の周りの魔力や相手の魔力を奪って、自に蓄え続けることが出來、さらによりレベルが上がれば、魔力を持てる限界値が上がり、増やすことも可能なんだそうだ。

「こんなスキルあったっけ…。習得した覚えがない。」

「あぁ、それはエルバの仕業であろう。貴殿らは異世界転移してきたのであったな。そのせいで、この世の理ことわりが崩壊しそうになったぞ。エルバには困ったものだ。」

エルバという見知った言葉が魔王から発せられて僕は驚いた。

「エルバさんとお知り合いなんですね。」

「あぁ、あやつはこの大陸…いや、この世の重鎮でな、どんなことも可能にしてみせるのだ。そこがなんとも憎らしい。我が魔王の役割を唯一知っている人だ。」

引っかかることがある。エルバは魔王討伐に僕達を呼んだはずだ。そして、エルバは魔王の役割を理解している……。なぜ、僕達を呼んだ?そもそも魔王を討伐する必要がないじゃないか。魔王を討伐してしまったら、この世界の均衡は崩れ、この世界を破滅まで追い込んでしまうのではないのか?エルバはこの世界を壊そうとしているのか?この世界やエルバは未だに謎に包まれている。突然僕らの元にやって來て魔王討伐を依頼してきた、あのエルバ。僕は奇妙に笑って、魔王に聞こえない程度の聲で呟いた。

「これは調べる価値がありそうだ…。」

しばしの沈黙。

「まぁ、よい。貴殿は魔王という存在になっても良いというのだな?」

ヴァルガリアは僕に確認をする。よほど魔王を捨てたいのだろう。僕は無言でうなづき返す。

「それでは、継承の儀を行う。我、汝の力に命じる。されど、世界を救い、世界を滅びへ導く耀ひかり。我を孤獨から解放し、貴殿を導く矛となれ!」

瞬間、黒い魔法陣が魔王と僕の下に現れる。その魔法陣からは赤い靄が出現し、僕の周りに絡みつく。すると、その靄は僕を宙に浮かせた。靄は僕と魔王を結び、僕を中心にり輝く。

何もかもが終わったとき、魔王は普通の人間の姿に変わった。だが、僕にはなんの変化もなかった。……いや、それは間違いだろう。ステータスを見ると、ジョブが魔王になっているし、稱號に、均衡を保つ者と表示されている。やはり、この世界には謎が多すぎる。

々と思い悩んでいると、中がとてもくなってきた。

「我が言うのもなんだが、その……は痛くないのか?普通は激痛が走り、最悪の場合、ショック死するのだが。」

「あぁ、なんだかいようなじがしたと思ったら、そういう事か。激痛は無いけどな。」

普通の事だと思い言ったのだが…そんなにおかしいのだろうか。魔王とエルバはし顔がひきつっているようにも見える。

「ほう。エルバの目に狂いは無かったようだな。あの激痛をこんな軽々と乗り越えてみせるとは………。魔王に適しただったのだろうな。」

エルバが誰にでもわかるような何かを企んでそうな笑顔を見せて、魔王にある提案をした。

「ヴァルガリアぁ、お前まだみ程度のことだって信じて無いように見えるぞ。どうだ、試しに『覚共有』でまた味わってみるか?」

「いや、疑ってないが…あっ、ちょっ、ちょっとまて!やめろ!」

エルバが僕と魔王に手をかざす。エルバが魔法を使ったのだろう。さっきまでのみがじない。その代わり…………僕の隣にはのたうち回る元魔王がいた。それを見ていると、聲をかけずにはいられない。

「大丈夫ですか?元魔王様。」

聲をかけると、僕に不思議なみがまた戻ってきた。

はぁはぁと息を切らした魔王がすっと立ち上がって、僕に近づくと肩に手を置いて、

「それでこそ魔王だ!これからよろしく頼むぞ!さぁ、魔王城へ転送してやろう。頑張りたまえ…。ははは!!」

僕は、この先の王都へ行きたいので、元魔王が魔法を唱える前に増えた魔力を使って軽く魔法を唱えた。その魔法は、基礎中の基礎っぽい『麻痺吐息』。功した。元魔王が膝から崩れ落ち、痙攣している。

「すみません、偉大なる元魔王様にこんなことをして。」

「あっあぁ、別によっよいっぞ。」

麻痺吐息の効果は抜群だ。

「それでは俺はここで。魔王になったからにはこの世界の為に頑張れよ。」

僕達に背を向け、転移魔法『瞬間移』でどこかへ行ってしまった。元魔王を置いて。僕にはどうすることもできないので、別れを告げてこの先の町へ行こうと決めた。ギルドウォッチには、ギルドが掲載するニュースが出てくることがある。僕はあるニュースに目を付けた。[対抗戦開幕!つい先日、ギルド登録したばかりのルーキーがまさかの優勝候補に。新種の魔法を扱い、勇者の再來とも呼ばれています。……………………]この記事の一番下に寫真がってあった。

「海希?海希か?……勇者の再來。いつも學校で競い合ってはギリギリの所で僕に負けてたけど、今回ばかりは負けるかなぁ。そうだ、海希の所に行って手合わせ願おうかな。」

これが僕が町に行こうとした理由。

早く會いたいため、出発しようとしたら、右足に元魔王がくっついて離れないことに気がついた。

「すみません、僕もう行きたいので離して頂けますか?」

しばしの沈黙。鼻水をすする音が聞こえる。目に涙を浮かべ、鼻水を垂らして、顔を思いっきり上げる。

「わ、我も連れて行け…ズズッ。」

元魔王とは思えない行にビックリされつつも、ここで置いていったら死にそうなので、肩に擔いで一緒に行くことにした。

僕は今、すごく楽しい。勇者と魔王ねぇ。運命とは時に、のこと以外も指し示す。これがこういうことなのかもしれない。僕は期待をに乗せて、町に向かった。

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