《村人が世界最強だと嫌われるらしい》この世界は、何もかもがおかしすぎる 7

來た道を全力で戻る烈毅。途中でレーナを拾い、今は抱えながら走っている。

レーナはじたばたしながら、「離せ!」とずっと言っている。

「お前暴れるな! 走りにくいだろ!」

「こんな馬鹿みたいなスピードで走れる村人がいてたまるか!」

「新幹線より早いぞ?」

「そんなもの聞いたこともないわ!」

「ああ、そうか。それはすまん」

「くっそ……解けない……なんだこの馬鹿力は!」

「おい、見えてきたぞ」

その言葉に、レーナは前を見る。すると、そこには煙を上げ、大きな悲鳴が門の外にまで聞こえてくる。

「一足遅かったか……仕方ない。今は何も話してはやれん。だが、この騒を片付けたら話してやる」

「……わかった」

聞分けは良くて助かるよ。素直な子はびしろがあるからな。

レーナを下ろし、一直線にルノの所へ向かう。レベルは多あるが、それでも數で押されたらすぐに殺られる。

「ルノ、頑張って逃げてくれよ……」

門を勢いよく蹴破り、辺り見回す。

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その景は、地獄絵図のようだった。

村人は首をもがれ、レベルの低い冒険者は一方的に殺られ、は人形のように扱われている。

だがそんなことは烈毅にとってはどうでもいい。今はルノの事しか頭に無い。

「ルノどこだー!!」

その聲に、反応はない。振り向いたのは近くにいた変異種達だ。

數は三匹。どれも冒険者の首を片手に持っている。そいつらは、首を投げ捨て、三匹同時に烈毅に襲いかかる。

だが……。

「邪魔だ」

誰も見るどころか、認識する事も不可能な速さで変異種を毆り、宙に鮮が飛び散る。

烈毅は町の中を走り出そうとした瞬間、目の前に、ゴブリン達に引きずられているルノを見つける。

「変異種だけじゃなかったのか!」

烈毅がルノの元へ向かおうとする。だが、それはほかの変異種達に邪魔される。

「邪魔なんだよぉ!!」

十はいた変異種は一瞬で塵となる。視界が開け、目に映ったのは首元に剣を添えられたルノ。

ルノはこちらに気づき、聞き取れもしない聲でこう呟く。

「助けて……」

それは烈毅には聞こえない。剣を振り上げるゴブリン。それを阻止したい烈毅。だが、烈毅を阻む変異種達。

変異種がいくつも沸いて出て、行く手を阻まれる。それにイライラし、烈毅は荒く変異種を葬っていく。

もう変異種もいなくなり、再びルノが見えた時だった。

剣はルノの首元數ミリの所まで下ろされていた。

「あっ……」

その瞬間、頭の中にルノとの思い出が星の速さで駆け巡る。

最初に出會ってから、今までの全ての思い出が。

そして烈毅の頬に、一滴の雫が流れ落ちる。

その瞬間だった。烈毅から黒いオーラが溢れ出す。殺気に満ち溢れた黒いオーラだ。

烈毅から溢れ出す殺気は、町どころか世界中に恐怖を齎した。

ゴブリンはその殺気に耐えかね気絶し、剣がカランと音を立て、地面に落ちる。それはゴブリンだけでは無い。変異種、他にその場にいたモンスターは全て泡を吹いて倒れていく。

烈毅のその殺気に、危険信號を発したのはモンスターだけでは無い。世界中のだれもが、そのとてつもない殺気に、全を震わせたのだ。

ルノはその場に力なく倒れる。

ルノの安全は保証された。だが、その殺気は収まらない。

何が起きたのか、気になった全ての住人が烈毅の元へ駆け寄ってくる。

そしてその姿を見て、人は皆、烈毅を恐怖し嫌悪する。

そこへレーナも駆け寄り、聲をらす。

「ば、化け……」

その一言が耳に屆き、烈毅は深呼吸をしてから、オーラを解く。

無言のままルノの所へ歩いていき、しゃがみ込む。

「すまない。本當にすまない。もう、俺はお前から離れない」

そのままルノをお姫様抱っこをして持ち上げる。そこへ、レーナが走ってくる。

「お前……さっきのは何だ?」

「…………」

「答えろ! 全てを話すのではなかったのか!」

町の人はざわざわとし始める。

「すまない。今はそういう気分じゃない。また今度でいいか?」

「何を自分勝手な事を! たかがが一人殺されそうになったくらいで……」

その一言に、烈毅のスイッチがる。

「今……何つった?」

「たかが一人殺されそうになったくらいで、そんなに態度を変えるのかと言っているのだ! 殺されなかったのだから別にいいだろ!」

「ふざけるなぁぁぁぁあ!!」

その怒號は、町を揺らし、建の窓を破壊する。町の人は、思わず耳を塞いでしまう。

烈毅はそれで我に返り、再び深呼吸をして気持ちを落ち著かせる。

「明日、全部話すから……」

烈毅はそれだけ言い殘し、その場を後にした。

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