《村人が世界最強だと嫌われるらしい》舊友に會いに行こうと思います 9

「…………何だって?」

「先日な、フードを被った変な奴が俺のところに來てな、そう言ったんだ。魔王がきだしたって」

「またか……またフードの奴か」

「なんだ知り合いか?」

「いや、敵だよ」

「まじかよ!? 俺敵から報貰ったのか!?」

「知らないなら仕方ない。その報を聞けただけでも嬉しいよ」

「……お前、し優しくなったか?」

「なんだよ急に……」

「いやだってよぉ? 前は嬉しいなんか言葉にしなかったし、そんな聲も明るくなかったと思ったがな?」

「気のせいだろ。まぁとりあえずサンキューな!」

「いいってことよ! またこの町に來いよ。一杯奢るからよ」

「わかった。じゃあな」

「おう」

そう言って、烈毅は念話を終わらせる。確かに、し前とは変わったのかもしれない。あいつらのおかげで。

烈毅は、川ではしゃぐレーナ達を見つめる。

「久しぶりに、俺も遊ぼうかな……」

そう思った直後、烈毅は背中に殺気をじる。

確認するためにすぐさま後ろを振り向く。だが、誰もいない。気のせいなのだろうか。

そのまま何事もなく、誰も現れることはなかった。何だったのかは、烈毅もわからない。

「まぁいっか」

それだけ言い、烈毅は川の方へととぼとぼ歩いていく。その日は、そのままそこで過ごした。

その日の夜。

「みんな寢たか」

川で遊び疲れたのか、みんなはぐっすり眠ってしまっている。烈毅の膝にはルノの頭があり、烈毅はルノの頭を優しくでる。

「俺は、どうするべきかな……」

今悩んでいるのは、以前ナーシェの口から出た名前の、フィルレという人のことだ。

「なんであんたが変異種にされなきゃいけねぇんだよ……」

もしその報が正しくて、命の恩人のフィルレが目の前に敵として現れた時、烈毅はそれを見過ごす訳にはいかない。だが、そう簡単に手にかけられるようなものでもない。

烈毅はひたすら悩んだ。

他に手は無いのか。本當にフィルレなのか。

その夜は一睡もせず、烈毅はひたすらにその事を悩み続けた。

が登り、みんなが目を覚まして起き上がった頃、烈毅は朝食の準備をしていた。

「ふわぁ〜〜……おはよう烈毅。早いのね」

「おはよーさんルノ。もうすぐ出來るから、そこに座ってろ」

「ふぁーい」

川で取った魚の塩焼きだ。十匹ほどあるため、これならみんなに分けられそうだ。

それから続々と起き上がり、ぼーっとした顔をしながら、魚を焼いていた火の周りに四人は集まる。

「さて、そろそろいいだろ。さぁ食え!」

「「「「いただきま〜す」」」」

寢ぼけながら、烈毅以外の四人は魚を口にする。

その途端、みんなは目をこれでもかというくらい見開き、その魚に貪りつく。

「まぁそう慌てるな。これは俺の料理スキルのおかげなのだ。味わって食いたまえ」

「さ、魚の塩焼きってこんなに味しかったの!? こんな簡単な料理がどうしてこんなに味しいの!?」

「私、勇者としていままで多くの高級料理を出せれて食べてきたけど、こんなに味しい魚は初めてよ!」

「こ、これは認めざるをえない……私の師匠も言っていた。『俺に剣を教えてくれた人の料理はやばいぞ』と……」

ルノは、何も言わずひたすら食べ続ける。

「みんなしっかり噛んで食えよ? 骨が刺さったら痛いからな?」

その後、また一本ずつ食べた四人は、烈毅が食べなった二本が殘り、どうするかを決めていた。

烈毅はそれを見ながら、一晩悩み続けたことの、決心を決める。

これは、やらなくてはならないことで、俺がやらなければ皆が殺される。それに、多分フィルレも人を殺すのは嫌だろう。

せめて自分がこの手で終わらせようと、終わらせてあげようと、烈毅は拳を強く握りしめる。

「そんな怖い顔してどうしたのよ。ほら、これあげるから」

すると、下から顔を覗き込んできたレーナがそこにはいた。魚の塩焼きを右手に持ち、それを差し出す。

「いや、これ俺が作ったからあげるなんて言われても……」

「何を悩んでるのかは聞かないけど、そんな顔をしてたら、信用できるものもできないじゃない」

「レーナ……」

「ま、まだ認めたわけじゃないんだかね!? す、しは信用してあげるって言ってるの! わかったらさっさと食えこのバカ!」

そう言って魚の塩焼きを強引に押し付け、レーナは皆の元へ帰っていく。

烈毅は「ありがとう」と小聲で言い、その魚の塩焼きを一口食べる。

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