《村人が世界最強だと嫌われるらしい》理不盡な戦爭 10

その後も、國王の長ったらしい容の薄い演説が終わると、フードを被った付き添い人が、何やら耳打ちをしている。王はそれを聞き、一度咳払いをした後、烈毅に気づいたのか、目が合う。

バレた? ……いや、流石にここまで隠してるんだぞ? それに、本の顔を見たこと無いはず……。

そんな考えは甘い。甘すぎる。烈毅は何も理解していなかった。バレずにいていけると思っていた。その慢心が、次の自を巻き起こす。

『さて、今った報なんだが、どうやらこの町に不純が混ざりこんだらしい。詳しくは彼から聞くといい。じゃあミルテス君、よろしく頼むよ』

ミルテス……って言ったか? まさかな……。

そして、その呼ばれた付き添い人は、ゆっくりとフードを外し、烈毅の方を見てニッコリと微笑みかける。その瞬間、烈毅の背筋に雷が落ちたかのような衝撃が走り、額からは大量の汗が吹き出す。

「お久しぶりですね〜? 人村烈毅さん?」

その名前が出た途端、そこに集まった全冒険者がざわつき始める。剣を握る者がいれば、恐怖で足が震えている者もいる。中には、自分が倒して金を稼がんとばかりに言いたげな冒険者が、「自分と戦え!」などと言って威勢を張っている。

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「私は、この町にってきた時から気づいていたんですけど、どうやら自分から死にに來てくれたみたいなので、私は謝でいっぱいです!」

ミルテスは、満面の笑みを浮かべる。その笑の中に、とてつもない殺気を包み込み、何を考えているのかを全くじさせない。烈毅は、黙々と彼の話を聞く。

「なぜ、私がわざわざバレるような真似をしてまで尾行したと思います? なぜ、貴方では無く、貴方の仲間のを盜んだかわかります?」

烈毅は、その質問の答えを瞬時に理解出來なかった。全くと言っていい。本當に何も考えられなかった。頭の中は真っ白だ。質問など、右からって左へと抜けていく。ほぼ放心狀態と言ってもいい。

「貴方は知ってますか? 魔法にも多くの種類があって、その中でも私は捜索系魔法を得意としてましてね? とある魔法を使えば、好きなものにマーキングを付けられるんですよ。そのマーキングは、何時でも何処でも知する事が出來るんです!」

烈毅はその事を聞いてゾッとする。あの日、あの時、あのを盜んだのにはこんな理由があったのかと。

あの日、素直に渡したと思ったら、そんな小細工をしていたのかと。烈毅は、手の平の上でコロコロと弄ばれていたのだ。あのに。

「あらあら? 顔が真っ青ですよ? 大丈夫ですか? あぁ! もしかしてー、が抜けすぎちゃったよかなぁ? そんな顔を包帯でぐるぐる巻にしても〜、は止まりませんよォ?」

その発言の後、その場の全員が一斉に烈毅に振り向く。そして、微弱な殺気を烈毅に向ける。こんなに多くの殺意を向けられるのは初めてだ。もうどうにでもなってしい。

「あぁ、そーれーとー、ベルム國の方にですね? し依頼をしましてぇ〜、その依頼とはですね?」

烈毅は、「まさか……」と呟く。それを見ていたのか、ニヤリと嫌な笑を浮かべたミルテスが、大聲でぶ。

「マーキングした所に魔族がいるので、全員抹殺してくださいって頼んだんですよォ!! それに加えて、の方はどのように扱っても構いませんとも言っておきました!!」

甲高い笑い聲を上げ、ざまぁみろと言いたげな顔をし、蔑むような目で烈毅を見下す。

いつもなら、ここで我関せず、後先考えずキレて暴れていたところだろう。だが、今は何故か冷靜でいられた。頭が真っ白になっていたからだろうか。

――否。

何かが烈毅を抑制してくれたのかもしれない。それは頭の中の記憶ではなく、心に刻まれたによるものだ。

烈毅は一度深呼吸をし、もうバレているのなら仕方がないと、顔に巻いた包帯を荒くちぎり、姿を見せる。

「やぁ、こんにちわ諸君。さて、たらたら話すのも面倒なので、ここでおさらば……と言いたいところだけど、ちょっとミルテスちゃんに一言申してからにするよ」

そう言い、烈毅はミルテスの背後へ音の速さよりも早くく。そのきに、その場の誰もが反応出來ず、どこへ行ったと辺りをキョロキョロとしている。

「あっれれぇ〜? 俺のきについてこれなかったのぉ〜? そんなんだと、俺は愚か、俺の弟子ですら一億年経っても勝てませんよぉ〜?」

たっぷりに烈毅は言い返す。心がものすごくスッキリするのと同時に、自分の格がクソ悪いことを認識し、し悲しくなる。

それから、ミルテスにしか聞こえない聲で、ぼそぼそと呟く。

「お前さ、やってやった、とか思った? 確かにしてやられたよ。でも、お前は大きな間違いをしている事に気づいていない」

ミルテスは、振り向かず、烈毅に聞こえる程度の聲で訊く。

「な、何よ間違いって……」

「それは簡単だよ」

烈毅は自信たっぷり、それと殺意をたっぷり込めて発言する。

「お前は俺らの実力を甘く見すぎてる。かかってくるならかかってこいよ?」

それだけを言い、烈毅はその場を音もなく去る。

その言葉を間近で聞いたミルテスは、恐怖のあまり腰を抜かしてしまい、真っ白で揃えた防を黃く濡らしてしまった。

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