《村人が世界最強だと嫌われるらしい》理不盡な戦爭 12

「俺の服が破れた……」

自慢するつもりは微塵もないが、烈毅の裝備は私服に見えてかなりの防力を誇るものであり、そこら辺の一般冒険者が何年もかけてようやく剣で傷を付けられるくらいのものなのだが、その裝備が髪を切るように簡単に切られる。

烈毅は、服を破られた焦りと同時に、ここ數年はじてこなかった戦いの高揚を同時に味わう。そして、烈毅はこの戦いのワクワクに耐えかね笑い出す。

「何を笑っている? お前はもう死ぬんだぞ? 頭でも可笑しくなったか?」

「いやいや、すまない……し楽しくなってきてさ」

「楽しく? 悲しくの間違いじゃないのか?」

「悲しい? そんなわけねぇじゃん。だって、こんなにも戦いにワクワクするのは久しぶりだからさ」

「……まぁすぐに痛みもじず死ねる。短い命は楽しんでおけ」

「言うねぇ? でも多分、ここから先お前は攻撃どころか一歩もくことすら出來ないかもよ?」

「なんだと?」

烈毅はニヤリと笑う。その行に、ベルム國の勇者は剣を構える。隙はどこにも無い、完璧な構えだ。だが、これは烈毅のハッタリ。こう言っておけば、大抵は相手は周囲に気を集中させる。その間、烈毅はファイアと連絡を取る。

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念話発

「おいファイア大丈夫か?」

『今のところは大丈夫だ!』

「今のところは……ね。多分、かなりの數がそっちに行くから、最悪の場合は飛んで逃げろ」

『お前はどうする?』

「後で追いつく。念話があるし、お前が生きてさえいれば連絡がとれる」

『わかった。で、お前は何してる?』

「ちょっと勇者とお手合わせ」

『そうか。程々にな』

そう言って、念話は終了する。

烈毅は、軽く上下に飛び跳ね、手足をブラブラさせる。その行に特に意味は無いが、ベルム國の勇者はその行から一切視線を外さない。注意深いのはいいけど、流石にそんなに見られると恥ずかしく……冗談だ。

烈毅は、もう先程程度の力ではもう通用しないと理解している。なら、しくらい力をれてやってみてもいいだろうと烈毅は思案する。簡単に言うなら、さっきは三割で次は五割というところだ。

聖剣をこちらに向け、未だに警戒心を高めるベルム國の勇者。その勇者を中心に、烈毅はゆっくりと周りを一定間隔で歩き始める。それに合わせて、勇者も一瞬で向きを変え、烈毅から視線を外さない。

そして、先ほどの一から百八十度回った時だった。烈毅の歩みが止まり、一瞬だけぼーっとした勢をする。それがチャンスだと思ってしまった勇者は、勢いよく飛び出し、烈毅に切りかかる。

烈毅にく気配がない。どういうことか分からなかったが、そんな考えは一瞬で振り切り、剣は烈毅を斜めに切り裂く。だが、そのは空を切るもののようだった。

そして次の瞬間、突然背中に痛みをじ、勇者はそのまま前方方向に吹っ飛ばされる。勢いのせいで、勢を立て直すことが出來ず、ただ飛ぶがままに飛んで行く。

さらに、次は前方方向から強烈な一蹴りが腹部にモロにる。につけていた超度で作られた防は完全に砕し、胃が破裂したのではないかというくらいの痛みが襲い、口からをぶちまける。

まだまだ攻撃は止まらない。

ベルム國の勇者は、必死の力で聖剣を握り、反撃しようとする。だが、その考えが浮かんだ瞬間に烈毅の強烈な一撃が襲いかかってくる。

何も出來ない。その言葉が相応しい程に、ベルム國の勇者はボコボコにやられる。そして、烈毅の力の前に、自分の無力さを心の中で嘆く。

気を失うんじゃないかと思った寸前、烈毅の攻撃は止んだ。ベルム國の勇者は、その場に力なく倒れ、息をするのも大変な程に、力が削られていた。

「はぁ……これだけやれば、この國には迂闊にも手を出さないかな。まぁ和解してるらしいから端からそんな気は無いかもしれんが」

その呟きが聞こえた瞬間、口の中に何かを無理矢理に突っ込まされ、得の知れない甘いが流れ込んできて、それを意図せずゴクリと飲み込んでしまう。

その瞬間、中の痛みが一瞬で消え去り、ぐちゃぐちゃになっていただろう胃が、完全に元道理になる覚があり、すぐに立ち上がれるようになった。

「ちょっとやりすぎたな、すまん。だが、これで分かってくれ。俺には人を殺す趣味なんてないし、そもそも魔王の使いなんかじゃないってことをさ」

「…………理解できない。このまま放っておこうとは思わなかったのか!?」

「はぁ? 思うわけねぇじゃん」

「はぁ……?」

その烈毅の答えに、ベルム國の勇者は思わず気の抜けた聲がれてしまう。

聞いていた話と違う。本當の報なら、こんなにも人の事を思う奴では無く、人を無殘に殺していく。さらに、ならば、やるだけやって使い捨てるといった下衆な事を平気な顔でする奴と聞いていた。

「何故だ……何故だぁ!?」

「何故って……そりゃ俺が人間だからだろ?」

その答えに、自分が今している事が本當に正しい事なのかと、一瞬だが迷ってしまう。が、そんな考えは頭を降って無理矢理切り離す。

「な、ならあの日の殺気はなんだと言うんだ!? 民を殺すために、世界を恐怖に陥れるために放ったのではないのか!?」

「ああ、あれね……いや、俺のしの弟子が殺されそうになったから、ついブチキレて殺気出しちゃっただけだけど……」

その答えが決め手となり、ベルム國の勇者は完全に力し、その場でもちをついてへたり込む。

「意味がわからん」

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