《村人が世界最強だと嫌われるらしい》理不盡な戦爭 13
「それで、私をどうする気だ?」
「どうもしねぇよ……まぁ、名前くらいは教えてもらおうかな」
「名前か、まぁいいだろう。俺の名はヴィレード=クルルだ。ちなみに、ジョブは超上級の勇者。レベルは三百五十。この聖剣の名はデュランダルだ」
「デュランダル……」
聖剣デュランダルは、ナーシェが持つエクスカリバーと同じぐらいに強力な聖剣であり、効果もかなり似たり寄ったりなところがある。偽っているような雰囲気も無いし、何より烈毅の服を切り裂いた事がそれを証明している。
「それで、他に聞きたいことはあるのか?」
「お前は、俺の事をどう思う?」
「……正直、魔王の使いと呼ばれ指名手配されているお前を倒したい。だが、お前は魔族なんてそんな下等種族と同じではないと知った。だから、今はし混している」
「そうか。でもまぁ、お前だけでも俺のことを理解してくれるのなら嬉しいよ。それだけでも救いになる」
「……私はまだ信用はしていない」
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「それでもいいよ。それで、次はこっちが質問するけど、お前はどうするの?」
「そうだな……私はとりあえず戻る。ベルム國の勇者として、敗走というのはし屈辱だが、これも仕方ない。それと、お前の事もなるべく黙っておく」
「まじで? お前めっちゃいいやつやん。俺好きになりそう」
「気持ち悪いからやめてくれ!」
「冗談だよ。じゃあ、俺は仲間が心配だから先行くわ。くれぐれも、変なやつに引っかかんなよ!」
烈毅はそう言い、その場を音の速さで去る。その後ろ姿を見て、ヴィレードは「仲間が心配か……」と呟く。そして、薄く笑って見せてから、立ち上がり、その場をゆっくりと立ち去るのだった。
それから、烈毅は山を駆け上がり、ファイアの巣へ到著すると、もうそこは戦場とかしていた。
ファイアがいく百もの冒険者に囲まれ、無意味とも思える理攻撃をけ、それに反撃するようにファイアが爪で薙ぎ払う。上手く加減し、殺さない程度にしている。
「ファイア大丈夫か!?」
烈毅が大聲でそう尋ねると、ファイアは軽く頷き、目線を下に下ろす。そこには、ルノ達もおり、悪戦苦闘しながらもなんとか生き抜いていた。
「人村烈毅だ! こっちを最優先に殺せぇ!」
その言葉に従い、ファイアを取り囲んでいた冒険者が全員、烈毅の方へと方向転換し、勢い良く飛び出して行く。
烈毅は、ハエが飛んでいるくらいのスピードにしか見えない冒険者達を軽々と躱し、ファイアの元へ辿り著く。それを目視できなかった冒険者達は、突然目の前から消えた烈毅を探すのに、數秒かかる。
「烈毅! 無事だったのね!」
一目散に駆けつけてきたのはルノ。その次に、ナーシェ、ミーシュ、レーナの順で飛びついてくる。
「おいおい、お前らまだ戦闘中だよ? 俺こんな事されたら流石にけないんだけど」
「大丈夫よ! ……って、服が破れてるじゃない!? あんたの方こそ大丈夫なの!?」
「ああ、これはベルム國の勇者にやられた。中々強かったぞ? 多分、ナーシェといい戦いをするだろうな」
「ああ、ヴィレードさんね。私、あの人嫌いなんだよねぇ……なんか上から目線が頭に來る」
「なんだ、知り合いなの?」
「いや、年に一回勇者集會ってのがあってね、そこでしだけ話したくらいよ。他の國の勇者はみんな自分の力を過信しすぎてるところがあって嫌い」
「そんなのがあったのか……っと、それより構えろ。來るぞ」
その言葉に、一同は一瞬で戦闘態勢にる。ルノは、まだ戦えないため、烈毅の後ろに隠れる。烈毅も、ルノから離れないようにギュッと手を握る。
「ちょっと、何手を繋いでるのよ?」
それを見ていたのか、ナーシェが突然ムスッとした顔で烈毅に言う。
「なんでって、そりゃルノ守るためだろ? 大切な弟子なんだから、死んでもらっちゃ困る」
「ふーん……」
目を細め、何故かニヤリと嫌な笑みを浮かべたナーシェが、ズカズカ烈毅の元へ來て、背中に隠れてしまう。
「あのー、何してるのナーシェちゃん? あなた戦えるでしょ?」
「わたし、こわくなっちやったの」
「そうか……なら」
烈毅は、ナーシェの襟元を摑み、ニヤリと嫌な笑みを浮かべる。
「あの……烈毅? 摑むところ間違ってない? ほら、私の手も握ってよ?」
「いやいや、間違ってなんかないさ! ほら、行ってこーい!」
そう言って、ナーシェを冒険者集団の塊の真ん中に投げ込む。
ナーシェは、空中で泣きながら「後で覚えときなさいよ烈毅ぃぃぃぃい!!」と言いながら、冒険者の波の中へと消えていった。
「さぁ、みんな。ここからはスタミナ勝負だ! 気張ってけよ!」
「「「うん!」」」
それから、その戦いは數時間もしないうちに決著が付き、冒険者達は撤退して行った。だが、これで終わりな訳がない。第二波第三波と來るだろう。
なんとかここから逃げる、もしくは和解をさせるのどちらかの方法を取らなければならない。烈毅は、その手段を考えるべく、必死に頭を働かせるのだった。
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