《村人が世界最強だと嫌われるらしい》最善策 5
「力? どんな力なんだ?」
「九尾には、先祖代々特別な力が備わるんだ。この世界では、尾の數で強さが決まるのは知ってると思うが、その尾の數は運で決まる。ただ、九尾だけは例外だ」
「例外?」
「ああ。尾は生まれてきた瞬間にわかる。俺みたいに、運が良くて八本の者もいれば、運が悪く一本しか生えてこない者もいる。だが、九尾は違う。九尾は、必ず九本の尾を持って生まれて來るんだ」
「それが力か?」
「それもある。だが、九尾にはもう一つの力がある。それは、自分の姿を本の"化け狐"に変化させる力だ」
「化け狐? 狐の姿になるのか?」
「ただの狐じゃない。大きく、強く、無類の強さを持つ化け狐になるんだ」
「規模でいうとどれくらいだ?」
「そうだなぁ……九尾のその力があれば、一人で國一つを半壊させる強さがある」
それを聞いた烈毅は、顔には出さなかったが、この世界の大きさと、國の大きさを考えた時に、ゾッとした。もしも、その力が"表の世界"で使われたなら―
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想像もしたくないが、そんな力を持っているのかと、改めてキュウの存在の大切さを理解する。
そして、疑問が一つ、烈毅の頭に浮かび上がる。
「なんでキュウなんだ? ネキツさんじゃダメなのか?」
「それはな……」
あまり言いたくないのか、カゲロウはその答えを渋る。烈毅は、急かすようにカゲロウに問いただす。
「なんだよ、教えろよ」
「……キュウが子供だからだ。小さくて、力がない。だから狙った」
「……まだ隠してることがあるな?」
烈毅は見逃さなかった。カゲロウのきに焦りが出たことを。
「はぁ……俺は言いたくないんだよ」
「ダメだ。これは約束だ。言え」
「…………キュウは子供だ。その力の制なんてまだできない。だから、無理にその力を発させ、勝手に暴れさせるためだよ」
その言葉に、烈毅は怒りを覚える。
「子供だぞ!? わかってるのか!? あんな小さくて何も知らない子供に、國を一つ壊させようとしたんだぞ!? それがどれ程の事かわかってるのか!?」
「わかっている!」
烈毅が怒鳴り聲を上げるが、それ以上にカゲロウも聲を荒らげて答える。そして、ゆっくりと口を開く。
「わかっている……でも仕方がなかった。……妻と子を人質に取られたんだ。そして言われた。『もしキュウを確保出來なかったら妻と子を殺す』ってな」
「なっ……!?」
「はは……もしこれが知れれば妻と子は殺される。速いとこ、俺も逝かないとな」
「……だから、お前が勝った時の條件が『一緒に戦ってくれ』だったのか?」
「…………」
カゲロウは、何も答えず下を向く。
「ちょっと烈毅、話が長いわよ」
そこに、烈毅をずっと待っていたミーシュがキュウを連れてやってくる。どこからが見ていたのか、もう戦いが終わった事は分かっていたような口ぶりだった。
「ああ、悪い。キュウは?」
「心配ないわ。この通り気絶してるだけ」
「そうか、なら良かった」
だが、そういう烈毅の顔は、決して嬉しそうにしている様には見えず、どこか迷っているような顔をしていた。
「烈毅?」
ミーシュも、早いとこ逃げたいのか、今にも走り出す気がある素振りを見せ、足を忙しそうにかしている。
「行け、人村烈毅。もうキュウは取り返したんだ。用は済んだんだろ? なら、早く逃げればいい。そろそろあいつらの魔法も解ける頃だろう」
「あら、知ってたのね」
「俺はしそういうのに敏でね。すぐに分かったよ」
乾いた笑いをしたカゲロウを見て、事の知らないミーシュは首を傾げる。
「ほら、逃げろって言われてるんだから、さっさと―」
「ごめん、無理だわ」
言葉を遮って発言した烈毅の言葉に、ミーシュは顔を顰める。
「……何かあるのね?」
「うん」
先程の乾いた笑いと、烈毅のその顔の様子を見て、ミーシュは短くため息を付き、烈毅に近寄る。そして、烈毅の頬に優しく手を添える。
「わかった。事は聞かない。だけど、これだけは約束して。……絶対に帰ってきて」
「わかった」
「俺は頼んでないぞ」
「頼まれたからやるんじゃない。俺がやりたいからやるんだ」
カゲロウは起き上がり、烈毅はカゲロウの方にを向け、視線を合わせる。
「俺とお前で救う。そして、このくだらない戦爭を終わらせる。いいな?」
「相手は何百萬もの強者揃いだぞ?」
「俺を本気にさせた男だ。俺は大丈夫だと思うけど?」
「ハッ……本當に面白い男だよ、お前は。……もし、もし俺に何かがあった時は…………お前が家族を連れて逃げてくれ」
「その何かは絶対に起こらない。というか起こさせない。神に誓ってだ」
「わかった」
カゲロウと烈毅は、握手をわす。ミーシュは、それを見屆け、キュウを連れて城へと全速力で戻る。ミーシュの足だと、一週間はかかるだろうが、何も無いだろう。
「……って事で、作戦だけど」
「何かあるのか?」
烈毅は、ニヤリと怪しい笑みを見せる。
「その顔は、何かある顔だな」
「いんや、何にも思いつかん!」
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