《村人が世界最強だと嫌われるらしい》最善策 6

何の作戦もなかった烈毅は、とりあえず相手の報を手にれておくために、カゲロウから聞き出すことにした。相手の報があるのなら、それだけで有利に事を進められる。

「はじめに聞いときたいけど、過激派の戦力を知りたい」

「わかった。まず、絶対に注意しとかなければいけない人は二人いる。まず一人はべーテルって奴だ。アイツはシェルドと互角の戦いをする化けだ」

「シェルドの強さがわからん」

「わかりやすくいうと、一人で五千の軍隊と戦えるって事だ」

「おー怖い怖い」

「そして二人目は、過激派のリーダー、ファンウだ。こいつは周りのヤツらとは格が違う」

「と言うと?」

「シェルドなんて相手にならんくらいだ。だが、幸いな事に前線には絶対に出てこない。リーダーだからな、死んだらそこでグループは崩壊だ」

「ほぅ……」

「馬鹿なことは考えるな? いくら烈毅でも、あんなのとは互角以上に戦えるはずがない。そこまで辿り著くのにも大変だってのに、そこでファンウも相手にするとなると絶対負ける」

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「わかってるわかってる。だけどな、俺のいた世界にはこんな言葉がある。『私の辭書に不可能なんて文字は無い』ってな」

「それがどうした?」

「つまりな、俺に不可能なんて無いんだよ」

ドヤ顔でそれを言い放つ烈毅に、カゲロウは呆れてため息を吐く。額に手を當て、首を橫に振りながら烈毅に言う。

「お前に言ってもわからないか。もういいや、とにかくそいつらには気をつけろって話だ。他にも強いやつはいるが、俺とお前なら安心だろ。これで話は終わりだ」

「いや、まだ大事な話が殘ってる」

「なんだそれは?」

「お前の家族の事だ」

それを言うと、カゲロウの目付きが穏やかなものから、一瞬で鋭いものに変わる。

「それは……無事を祈るしかない」

「いや違う。この戦爭を止めることよりも、お前の家族を救う事を最優先にする。だから、祈るしかないなんて言わせない」

「無理だ! もし救うのに失敗したら、俺の家族どころか、他に囚われてる奴らまで皆殺しにされてしまう!」

聲を荒らげて言うカゲロウの意見は最もだ。カゲロウは、過激派を裏切ったって事だけでも不味いのに、そこで烈毅とグルになって過激派を潰そうってなると、更に狀況は悪化する。

「先にリーダーを潰す方が得策だ! 大事な友人やその妻や子供が居るんだぞ!?」

「いや、絶対に先に救出をする。だって考えてみろよ。人質を取られた狀態でくのと、人質を解放して、何も恐れないで戦うのとどっちがやりやすい?」

「それは…………」

烈毅の言い返しに、カゲロウは押し黙る。どちらの意見も正しい事を言っている。ただ、この作戦にはリスクを負う必要がある。じゃなければ救えやしない。

「わかる。わかるよその気持ちも。でもさ、リスクを負ってでも助けなきゃいけないんだよ」

「…………絶対やれるのか?」

「絶対にやる」

烈毅の目には、闘志が宿っている。絶対に消えることの無い、赤い魂の火が。

「よし。俺はお前に従う」

「頼もしいよ」

二人は和解の意も込めて、握手をわす。そして、いざ行こうと足を一歩踏み出した時、急速にこちらに接近する者を、烈毅とカゲロウはじ取る。

「構えろ!」

そして、その存在は空から降ってきて、二人の目の前に派手に現れる。著地の勢いでクレーターが出來、辺りには突風が巻き起こる。砂煙が宙を舞い、視界が悪い中、二人はその存在をじっと見つめる。

「お前らか、キュウを助けたって二人は?」

「あんたは……!」

「カゲロウ、知ってるのか?」

「お、お前キュウを助けたのにあの人を知らないのか!? あの人がシェルドだよ! キュウの父だよ!」

「へぇ、あれが」

カゲロウの様子から見ると、多分相當強い奴なのだろうと、烈毅はじ取る。そして、ギロりと向けられた視線に目が會い、烈毅は全立つ。

「カゲロウか。久しいな」

「あ、ああ。何でここに?」

「中々待ってても、誰も攻めに來なかったから、俺から攻めに行ってやろうと思ったんだ」

「そ、そんな理由でここまで來たのかよ……」

「それで、ここに來る途中ににあった。キュウを抱えたな。連れて逃げた奴だと思って聞いてみたら、助けたって言ってた。名前は……ミーシュとか言ったか?」

「ミーシュにあったのか。なら、キュウが安心だってことは分かってもらえたかな」

「ああ。その子が言っていた。『もし行くのなら、人村烈毅を手伝ってあげて』とな。それがお前か?」

「ああ、よろしくな〜」

手を振って挨拶すると、突然シェルドが超高速で烈毅の目の前まで移し、その勢いのまま烈毅の顔面に毆り掛かる。

烈毅は、それに咄嗟に判斷し、それを片手でけ止める。その時、無意識に"負け知らずの最弱"を発させていた事に、烈毅は一瞬冷や汗をかく。

「今のは全力だったんだけどな。俺より強いなら安心だな」

握り拳がそっと解け、握り拳から握手を要求する手へと変わる。

「シェルドだ。よろしくな烈毅」

「ああ、よろしく」

烈毅は、熱く握手をわす。ほんのり痛みが殘る右手で。

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