《村人が世界最強だと嫌われるらしい》最善策 7
「それで、何をすればいい?」
「まずは、相手の陣地に囚われてる人を助ける。その後に、相手のリーダーを毆り込みに行く」
「やっぱり……あのなぁ、さっきも言っただろ!? 相手はかなり強いんだぞ!? やめとけって聲は聞こえてなかったの!?」
「その作戦は面白い。賛だ」
「二人揃って馬鹿だ」
途方に暮れたような顔になるカゲロウの気持ちもわかる。強いとわかっている相手に毆り込みに行こうとしているのだ。負けるかもしれない相手に向かうなど、馬鹿のすることだ。
「だろ? 二対一で賛票多數、この作戦で決定!」
そのバカが烈毅とシェルドだ。
「はぁ……もういいや。取り敢えず、俺が道案するから、しっかり付いてこいよ」
「俺は大丈夫だ。おっさんは?」
「おっさんじゃない、まだピチピチの四十歳だ。お兄さんと呼びたまえ」
「いや、充分おっさんだろ……」
「行くぞ、二人とも」
それから、三人はひたすら走り続け、なん全キロという道のりを半日で走りきり、目的地手前まで辿り著く。
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大きな倉庫のような建が幾つも並んでおり、その一つ一つの大きさは図りしえないほどにデカい。その中でも、特に目立つのは、倉庫に囲まれるようにして建てられた立派な塔。レンガ造りで高さは二十階建てのビル程の大きさがあり、烈毅だけはその最上階から溢れ出る殺気に気づいていた。
ここまで來る途中、いくつかの障害があったが、走り抜けたら案外大丈夫だったようで、特に傷つくことなくここまで來れた。
「いいか? 人質はこの先にいる」
一番手前の倉庫の前に、ポツンとあるし大きめの一軒家を、カゲロウは指差す。
その周りには、見張りが十人程おり、どの方角から來られても大丈夫なように、全方位をしっかりと見張っている。
そして何より、一目見ただけで強いというのが分かるくらいに、彼らは鍛え上げられている。
今は、に隠れながら見ているからいいものの、視線が合えばチビってしまうような、そんな目付きをした者がいる。カゲロウは顔をし顰め、シェルドはただ黙って彼らを見つめ、烈毅は彼ら以外に誰かいないのか、周りを見渡す。
「俺は二人までが限度だ。お前らは何人行ける?」
「俺は五人までならいける。まだ現役バリバリのおにいさんだからな」
「まださっきの引きずってたのかよ……烈毅は?」
「俺は……中にいるやつを全員片付ける」
その発言に、シェルドは烈毅に目を向け、小さな聲で「面白い奴だ」と呟く。
「中? 何言ってるんだ。中は絶対に過激派はいないぞ? あの中は汗や排泄の異臭で充満してるからな。誰もりたがらないんだぞ?」
「あいわかった。なら、俺が殘りを引きけよう。まだ現役ピッチピチのおにいさんだからな」
「もういいよそれは!」
「よし、作戦開始」
そして、から一斉に飛び出した三人は、距離にして五百メートルの間を一瞬で詰め寄り、相手が反応する前に攻撃を開始する。
烈毅は、周りの奴らはカゲロウとシェルドに任せ、中へと一目散に飛び込む。そして、その中の異臭と空気の悪さに一瞬「うっ……」と聲をらすが、それは腕で鼻を抑えて我慢する。
そして、目に飛び込んできた景は酷いもので、皆披しきった顔をしており、中には確実に病気にかかっている表をしている者もおり、皆フラフラと今にも倒れそうな足取りだった。
まずは、カゲロウとシェルド。二人は、それぞれ襲いかかってくる相手をなぎ払い、次々に見張り番を倒していく。カゲロウは、し苦戦をするものの、キッチリと役目を果たす。
対するシェルドは、瞬く間に目の前の見張り番を無力化していき、カゲロウが三人を倒し終わる頃にはもう、殘りの人數を倒しきっていた。
「さすがシェルド。前よりも強くなったんじゃないか?」
「當たり前だ。現役だぞ? そういうお前も、昔一度戦った時よりも強くなったように見える。長したな」
「負けて悔しかったからな。特訓したよ。ここで」
カゲロウは、その思い出はあまり好ましくないのか、いい顔はしていない。
かつて、敵同士で戦った相手が、今は味方だ。拳をえたからこそ、わかるものもあるのだ。二人は、その見張り番を影に隠し、烈毅の後を追う。
一方烈毅は、派手に登場したせいか、中にいた見張り番達にあっさり気づかれ、五人の敵に囲まれてしまう。
敵は全員、臭い対策をしており、顔下半分を布で巻き付け、両手が空いている狀態で飛びかかってくるのに対し、烈毅は鼻を抑えているため片手だ。
他にも、まだ周りに気配を隠しながら隠れている者がちらほらいるが、察知能力に優れている烈毅にとっては、その行は意味無い。
「かかれ」
その合図と共に、五人が一斉に短剣を烈毅に向け地面を蹴り、目の前から橫から死角から、あらゆる角度から攻撃を仕掛けられる。
烈毅は、片手では流石に対処しきれるとは確信出來なかったため、その場で高速で回し蹴りをし、突風を巻き起こす。
五人はその突風に抗うこと無く吹き飛ばされ、壁に酷くぶつかり気を失う。
ふぅとため息をつく暇もなく、次に構えていた集団が烈毅に飛びかかってくる。油斷しきっていると思ったのか、先程よりもし攻撃に鋭さをじない。
「お前ら、暗殺者失格だな」
烈毅はそういい、全ての攻撃を華麗に躱した後、片手で高速で落に毆打を決め、第二の集団を撃沈させる。
すると、さらにまた置くからぞろぞろと、短剣を立てた集団が現れる。烈毅は、その狀況の中で、腕で口を隠しながらしニヤリとする。
「さぁ、かかってこいよ」
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