《村人が世界最強だと嫌われるらしい》最善策 15

"獣化"したネキツは、キュウと同じサイズの狐の姿になり、大きな雄びを上げる。その雄びに反応し、暴れ回っていたキュウがネキツの方を向く。

『ここからはウチらの事やぁ、自分らはそこで見ててくれると嬉しいなぁ』

「念話……わかりました!」

『よろしゅうなぁ』

突然頭の中に直接聞こえてくるようなじは、前にあった念話によく似ていた、というよりは念話そのものだった。

そう告げたネキツは、巨大なの全を包むくらいの大きさのオーラを纏って、九本の尾で威嚇する。近くにいる事で、凄い圧力をじ、ミーシュは息を呑む。

ネキツとキュウが睨み合う。ネキツは、今どんな気持ちでキュウを睨んでいるのだろうか。ミーシュには到底わかり得ない。ただ、獣化する前のネキツの顔は、何処か辛そうな顔をしていた。

「うっ……俺は……」

「ハッ! れ、烈毅大丈夫!?」

「ミーシュか……お前こそ大丈夫なのか?」

「私はいいから、しは自分の心配をしなさい! 死んだのかと思ったんだからね!」

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抱きかかえていた烈毅が目を覚まし、フラフラしながらも烈毅は立ち上がる。ミーシュは肩を貸し、ここは危ないとしその場から離れる。

ミーシュは、倉庫の壁に烈毅を寄りかからせ、その場に座らせる。まだ意識は朦朧としてとり、荒い息をしながら、烈毅は"異次元アイテムボックス"から、パーフェクトケアポーションを取り出す。

それを一口で飲み干し、その瞬間烈毅のからは傷が消え、荒かった息もしは落ち著く。が、完治とまでは行かなかったようだ。

「はぁ、まじで死ぬかと思った。つか実際五秒くらい死んでたかも」

ぐーっとびをして、目の前の巨大な二匹の狐を見て、烈毅は目を見開く。

「あ、あれはなんだ!?」

「キュウちゃんとネキツさんよ」

「えぇ!? あれがネキツさんとキュウ!? デカすぎだろ!!」

がぶっ飛んでいた烈毅には全く記憶には無く、どういった経緯でこうなったのか、まるで覚えていない。

「って言うか烈毅、あんた何でキュウちゃんを毆ったりなんかしたの!?」

「は? ……待て待て、俺がキュウを毆った? 俺は待なんてしてないぞ?」

「違う! あの姿になったキュウちゃんに、突然烈毅が毆りかかったのよ! 覚えてないの?」

ミーシュは、思わず怒り口調になる。その時の烈毅の狀態を知らなかったミーシュからしたら、それは仕方の無いことだ。

「あぁ……そういう事か。すまん、その時の記憶は無い。というより、その時は理も何もかもなかった」

「えっ……? それはなんで……」

その時だった。突然近くで発音が鳴り響き、激しい突風が烈毅とミーシュを襲う。

「何!?」

それは、ネキツとキュウが魔法を同時に放ち、二人の中間でぶつかり合い発した時のだ。魔法の規模が違いすぎて、ミーシュと烈毅は口を開けてただ見ていた。

その戦いは、さらに激しさを増す。

次の攻撃はキュウからだ。キュウがび聲をあげると共に、キュウの周りに幾つもの魔力で形された球が出現する。その魔法が、ネキツを囲みこみ、再びキュウのび聲と共に、一斉にネキツに向かっていく。

その攻撃の逃げ道は無い。が、ネキツはその狀況に一ミリたりともじてなどいない。強さからの余裕なのか、將また親としての威厳なのか。

その魔法が直撃する瞬間、ネキツの姿が突然その場から消え、気づいた時にはキュウの背後にネキツが構えていた。

「おいおい、あれって……」

「瞬間移よ。そう言ってた」

「あの速さでかれたら俺でも後ろ取られるな……」

「あれ、キュウがいる所にしか行けないらしいわよ?」

「あら、そうなの。ちょっとがっかり」

「何でよ……」

復帰早々、期待の目を輝かせていた烈毅を見て、ミーシュは思わず額を抑えてため息を吐く。頭がぶっ壊れたんじゃないだろうかと、し心配してしまった。

キュウの後ろに回り込んだネキツは、キュウが振り向くよりも早く急接近し、九本の尾から繰り出される攻撃を全て同じく尾で防ぎ、そしてキュウの首元に噛み付いた。

「噛み付いた!? どうして!?」

「多分、あれは"ドレイン"だな。正しくは"魔力作"だったかな?」

「ドレイン?」

「ああ。見てみ、あの噛んでるところ。魔力の流れが見えるでしょ?」

「うん、見えるわ」

「あれは、相手の中にある魔力を吸収して、自分のにする技だよ。ほら、ここに來る時キュウが似たようなの使ってたろ? あれと一緒」

「あぁ、あれね」

ミーシュは実際に験したから、すぐに思い出せた。それと共に、疑問を抱く。

「でも何で魔力を吸い取るの?」

「そうだなぁ……これは俺の勝手な妄想で喋るんだけど、今のキュウは『暴走』してるだろ? それに対してネキツさんは『制』してあの力を使ってる。つまり、暴走狀態にあるキュウの力を限界まで吸い取ったら、もうあの力は使えなくなって元に戻る。だからじゃないかな」

「でも、制してる時でも魔力吸収されれば一緒じゃないの?」

「いや、制出來ている狀態なら、ある程度吸収に抗えるだろ? だから、たとえ出來ても時間がかかるんだよ」

「なるほどねぇ。つまり、あれが今この狀況で一番の最善策って事ね」

「そうゆうこと」

そして數分後、力を吸われたキュウはかなくなり、その場に巨を橫たわらせ、小さな姿に戻る。

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