《村人が世界最強だと嫌われるらしい》一難去ってまた一難 1

「キュウ!!」

烈毅とミーシュは二人でキュウの元へ行き、烈毅は倒れたキュウを優しくお姫様抱っこする。その後ろから、元の姿へ戻ったネキツも心配そうな顔でキュウをのぞき込む。

そして―

「うぅぅ〜……何か、気分が悪いのじゃ……」

「キュウゥゥゥゥ!!!!」

「う、うわ何じゃ!?」

「良かった〜! 無事でほんと良かったよ!」

烈毅とミーシュは大袈裟に喜ぶ。ネキツも、顔には出さないが、こっそりで下ろす。

「わ、は今までどうなってたのじゃ?」

「死んでた!」

「なんじゃと!?」

烈毅が思わずボロっと吐いてしまった言葉に、ミーシュが後ろから毆ってフォローをれる。

「違うのよ、キュウちゃん。死んだように眠ってただけなのよ!」

「ああ、そういう事なんじゃな」

「えぇ、そうです。さぁ、キュウ、しばかり話があるさかい、帰りましょかぁ?」

「はいなのじゃ……なのじゃ!?」

何故ここに母上が、といった表でネキツを見たキュウは、見たことないくらいにガクガクブルブルと震えていた。

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おっとりと話すネキツの目は、笑ってはいなかった。烈毅とミーシュは、聲を揃えて「可哀想」と呟く。

「や、やめてくれなのじゃ〜!」と何度もび、烈毅から離れようとしなかったキュウは、ネキツに引き剝がされた。

「じゃ、俺達も帰るとするか。元の世界に」

「そうね。皆も待ってるだろうし、何よりちょっと休みたいわ〜!」

「俺もだ」

「ほんなら、自分らも送ってやる」

そう言って、ネキツは何やら見覚えのある"ゲート"を開く。そして、その"ゲート"に手を突っ込み、綺麗な水をした水晶玉を取り出す。

「それ、もしかしてアイテムボックスですか? キュウから前に聞いたんですけど」

「あら、キュウがそんな事を? そうやぁ、これはアイテムボックスやぁ。ただ、數に限りはあるんやけどなぁ」

「僕も使えるんですよ、それ」

それを言った途端、ネキツは驚きの表を見せる。烈毅は、何故ネキツが驚いたのか分からず、その後も、ネキツは一言も喋ることはなかった。

「ほな、飛ぶから気ぃつけやぁ」

「飛ぶ?」

その次の瞬間、視界がぐにゃりと歪み始め、その覚に烈毅とミーシュは思わず目を瞑ってしまう。には何の変化もないが、視覚だけが歪んだのだ。

そして、數秒後「もう目をあけても大丈夫じゃぞ?」とキュウが言い、烈毅とミーシュはゆっくりと目を開く。すると、目の前には、キュウ達が住んでいる城があった。

「すげぇ……これが瞬間移か……」

「正しくは転移じゃな。ここを転移地點に設定してあるのじゃ。あの水晶は、設定した場所なら何処へでも行ける優れものじゃ!」

ネキツに抱えられながら、自慢げに話すキュウに、思わず二人はほっこりした。そして、キュウを助けられて良かったと、ここから思った。

それから一週間後―

シェルド達が無事帰還し、全員の無事を確認した後、過激派が降參したことを知る。どうやら、リーダーのファンウが殺されて、一気に戦意喪失したそうだ。

もちろん、その記憶は烈毅には無い。"憤怒"の後癥とも言うべきか、反と言うべきか。その時の記憶は綺麗に抜け落ちている。

烈毅とミーシュは、避難した人達の無事を目で見て確認した後帰ると言うと、快くネキツは了承した。部屋まで貸してもらい、贅沢な一週間だった。

戦爭は無事終了し、過激派ももう戦わないと誓いを立て、これから仲良くして行くそうだ。もし、他の國が領土拡大の為に攻めてきた時、反省の意を込めて戦うとも言っていた。それなら安心できそうだ。

そしてその翌日。『門』の前で。

「もう帰っちまうのか」

「ああ、俺らにも待ってる奴らがいるからな」

「そうか……本當に、キュウを救ってくれてありがとう」

「良いって。當たり前のことをしただけだよ」

「ウチからも、ほんまおおきに」

「ありがとうなのじゃ!」

シェルド、ネキツが深々と頭を下げ、キュウはニッコリ笑顔で烈毅とミーシュにお禮を言う。その笑顔を見て、烈毅はしうるっときた。ミーシュは顔面を崩壊させながら泣いていた。

「キュウ、最後頼めるか?」

「任せろなのじゃ! しっかり送るのじゃ!」

「さんきゅー。じゃあ帰ります。お二人共お元気で」

シェルドとネキツはこくりと頷き、軽く手を振ってくれた。烈毅とミーシュも、それに応えて手を振る。

「じゃ、行くのじゃ!」

そして、キュウの力を借りながら『門』を潛り、元の世界へ戻った。

地上に著き、懐かしいこの世界の空気を大量に吸い込み、烈毅は「ただいま」と呟く。

「じゃ、はここまでなのじゃ」

キュウは、下をうつむきながら言う。

「おう。ほんとありがとな。キュウに會えて良かったよ」

「わだじもよぉ〜! げんぎでねギュウヂャン〜!」

ミーシュは、キュウをギュッと抱きしめながらそう言う。キュウは、それでも、下を向いている。

「いつまで泣いてんだよ……ほら、離してやれよ」

ミーシュの肩に手を置き、烈毅はキュウとミーシュを離れさせる。し心苦しいが、いつまでもこうしている訳にはいかない。

「じゃあ、本當にお別れだな」

「うんなのじゃ……」

「じゃあな、キュウ。ネキツさんとシェルドを守ってやれよ」

「うん……」

キュウのその聲は震えており、拳にはギュッと力を込めていた。ポタポタとこぼれ落ちる雫は、地面に當たってすぐに乾く。

そして、キュウは何も言わず振り返り、リバースワールドへ帰って行った。

「また、會えるといいな」

そう呟き、烈毅とミーシュはその場を後にした。

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