《村人が世界最強だと嫌われるらしい》一難去ってまた一難 3
「あひゃ? 確かに手応えはあったはず。なぜ生きてる?」
「いやぁ、俺も初めはビックリしたよ。まさか後ろからやられるなんてね!」
傷のあった所を軽く叩き、何事も無かったかのように立ち上がった烈毅。それを見て、安堵しきって気が抜けたのか、気を失ってしまった。
「キャンザル君だっけ? 君ね、背後を取るところまでは良かったよ? でも詰めが甘い。甘甘だよ。それでも超上級ジョブなの?」
「チッ……たかが村人如きがいい気になりやがって」
キャンザル。そう呼ばれる彼は、銀の短髪。そして黃い瞳をしており、口はいつも口角が上がった狂気じみた顔をしている。顔にいくつもの傷があり、それを見るだけでも異常さが伝わってくる。長は高く、格はし細すぎるくらいだが、右手に持っている格には見合わない大きさの大剣からは、ものすごい力をじる。
「それ、聖剣だな? って事は勇者か。最近よく見かけるなぁ、勇者」
「だったらなんだ? 別に、ここで殺されるのだから知る必要はないだろ?」
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クシャッとした笑い顔を見せるキャンザル。その聖剣をブンブンと荒く振り回し、烈毅の元へ近寄って行く。
「おいおい、やめてくれよ……そんな好戦的になるなって。王の前だぞ? な?」
「そんな余裕かましてて大丈夫か? 仲間置き去りにして死ぬ事になるぞ?」
「いやいや、ならないって。むしろ逆だよ逆」
「逆?」
「つまりは……」
烈毅はニヤリと薄く笑うと、その場から消える。そのきを捉えられなかったキャンザルは、振り回してた聖剣を即座に構え、後ろで座ってヘラヘラしていた冒険者は、すっとぼけた顔をする。
それから十數秒経ったのだが、まるで烈毅の気配がじられない。そう思った直後、烈毅は突然目の前に現れる。
「こういう事」
地面を見せるように手を広げると、そこにはルノ、レーナ、ナーシェが寢転がっていた。
「貴様ぁ!」
キャンザルは、それがこの狀況で、いかにやられてはならない行だということかをよく理解している。王の前で、殺し損ねた相手に、殺す予定だった仲間を取り返される。それがいかにまずい事かと。
それを見ている王は、焦りの表は見せず、ただ簡易的に作られただろう木の椅子に座り、頬杖をついて見ている。
ファイアは、こっそりとパーフェクトケアポーションを使用したため、ける狀態にある。が、今は寢た振りをしてもらっている。
キャンザルは、焦りのあまり猛突進して烈毅に向かう。だが、そのきは、烈毅には蟻がくよりも遅く見えた。
とても洗練された剣さばきで烈毅を切りつけようとするも、その攻撃は一掠りもしない。仲間を抱えた狀態の烈毅にだ。
「な、何故當たらん!? なぜなぜなぜ!?」
「おいおい、さっきのあひゃあひゃした笑い聲はどうした? あっれれぇ〜? もしかして焦ってるぅ〜?」
煽りを加え、さらにキャンザル怒り、攻撃速度は早くなる。が、やはり一度も當たらない。
「ほいっ!」
何度か攻撃を避けた時、隙を見つけて烈毅は聖剣を蹴っ飛ばし、その聖剣は宙で回転し、地面に刺さる。
「んじゃ、こいつらは返してもらうから! ファイア!」
『任せろぉ!』
その合図と共にファイアが中を飛び、近くにいた冒険者は皆風で吹き飛ばされる。
そして、ファイアが烈毅の元へ飛び、烈毅はジャンプして高く飛び上がり、ファイアの背中に乗って飛び去った。その間際、王が獨り言を喋っていたが、烈毅はその容を知る価値もないと判斷し、前を向いてその場を去った。
それから一時間後。
「うっ……ここは……」
「あ、ナーシェ起きた? 今はファイアの背中の上だよぉおぉっ!? 危ねぇ! 急に飛びついてくんな!」
「烈毅だぁぁぁあ!! おかえりぼぼぼぼぼぉ……」
「あ、お前高いとこダメなんだっけ? あーあ。また背中がゲロ臭くなる」
「んっ……ここは……はっ、烈毅は!?」
「お、レーナたん目、覚めた? 今はファイアの背中の上だよ。だから安心してぇぇぇえ!? ちょっと、お前も急に飛びつくなよ! 落ちるだろ!?」
「烈毅が、烈毅が生きてるぅ〜! うぇ〜ん!」
「おい泣くな! あーあーあー! 鼻水で肩がベチョベチョになっちまった!」
「はっ……! ここは……」
「まて。俺は次に起こることがわかる気がする。だからここは逃げ……」
「烈毅ぃぃいい!」
「遅れたぁぁぁあ!」
『お前ら元気だな……我は疲れてるのに……』
そんな呑気な會話が雲の上で行われた。烈毅は、"異次元アイテムボックス"からミーシュを呼び出し、二人のお帰りパーティーを、ファイアの背中の上で開いた。
リバースワールドのことは、口にはしなかった。これまで何をしていたかも聞かれなかったし、むしろ彼らは聞かなかった。
それは、烈毅を信じていたからではなく、ミーシュの目の下が赤く、し無理に笑っているのだと、見ただけで分かったからだ。
そして、ファイアはかなり離れたところで著陸し、皆は地面に降りる。もう日が暮れ、辺りは真っ暗だ。
「さて、今日はここに野宿だな」
その後、皆はテントをった後、死んだように眠った。
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