《村人が世界最強だと嫌われるらしい》二難去ると、次は災難が起こります 10

それから一時間、烈毅が々と見て回りながら指導をし、そして次の組手相手として、ファイアと猛特訓中だった、ナーシェが呼ばれた。

「次、ナーシェ!」

「わ、私!?」

「早く來い!」

「わ、わかった!」

走って烈毅の元へ行くと、そこにはオーラを纏った烈毅の姿があり、そして右手には聖剣を持っていた。

「それ……」

「これは後で使わせてやる。まずはその石の剣だ」

「うん」

「さぁ來い。それなりに本気は出してやる」

カチンと來た。舐められているのは分かっている。と言うより、実力があるから、手加減してもらっているのは分かっている。だが、勇者としてのプライドが、ナーシェをい立たせた。

「ちょっと頭に來るわね……」

そうボソリと呟いた瞬間、ナーシェも全にオーラを纏い、自分の持つユニークスキルを発させる。

その狀態でのステータスは、通常時のファイアと同等、もしくはそれ以上だ。そのありったけの力を込めて、ナーシェは地面を蹴る。

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烈毅は、一ミリもその場からはこうとはせず、ナーシェの行をじっくりと観察している。ただ、このまま攻撃したら、何かやばいと、的には分からないが、その危機だけが頭を過ぎった。

だが、そんなのはただの勘に過ぎないと、ナーシェは思い切って烈毅を斬りにかかった。が、その攻撃をした瞬間、烈毅は「はぁ……」とため息をついたのだ。

そして次の瞬間、目の前にいたはずの烈毅が突然姿を消し、剣は空を斬った。そして、「えっ……?」と聲をらしたと同時に、首筋に軽く何かが當たった。烈毅の手刀だ。

「一回死亡、だな」

「なんで……」

「お前、何かやばいとか思わなかったわけ?」

「思ったけど……」

「ならなぜ攻撃を中斷して距離を取らなかった?」

「そ、それは……」

「答えを教えてやろう。それは、『自信』のせいだ」

「自信?」

「そう。お前、攻撃するとき、聖剣を持っている気になっただろ?」

そう言われ気づく。今までの戦闘は、ずっと聖剣を使ってきた。正直、聖剣があれば何でも砕けるし必ず當たるから、先に攻撃してしまえば良いのだと、それだけを思って戦ってきた。

だが、今自分が持っているのは石の剣だ。ましてや、相手はそんな簡単な思い込みで倒せるほどの敵ではない。それを分かっていながら、その行に出てしまったのは、聖剣を頼りにしていた事の表れだって。

「これでよく分かったろ? お前はただ聖剣を振っていただけなんだ。その部分では、レーナと同じだ。聖剣に振られている」

「そ、そんなこと……!」

「いいや、ある。いいか? 確かに、全てが全てそうだとは言わん。でも、その聖剣を手にしてから、お前はどこか自惚れてたんだよ。勇者になった自分に」

「そんなこと一度も思ったこと……!」

言い返せなかった。悔しかった。心のどこかで認めてしまった自分がいた。そうわかった途端、ナーシェはオーラを解き、剣を床に落とした。

「勇者になるまで、お前は想像もつかない訓練や道程を歩んできたと思う。だけど、勇者になってからは違う。訓練を怠り、勇者になった事をゴールとしてしまっだんだよお前は」

「…………」

この會話は全員に聞こえている。それを聞かされた他のは、ただ黙って、訓練をしているフリを続けるだけであった。

「キツいことを言ってるのはわかってる。でも、お前はそれだけの指名を背負っている。任されている。違うか?」

ナーシェは、今までを振り返った。

勇者に選ばれた時、本當に嬉しかった。自分の努力が神様に認められたと思った。それだけの努力をした。辛い思いもした。だから、彼はそこで満足してしまった。

「ああ、やっと勇者になれたんだ―」

それからも、確かに努力はしていた。ただ、前の努力に比べると、努力とも言えない様なことばかりだった。

「この聖剣エクスカリバーは、何でも斬れるすごい剣なんだ! これがあれば私はどこえでも……」

その景が、ナーシェの頭にフラッシュバックし、鮮明にその日の事を思い出した。そして、苛立ちが募り、烈毅をギリッと睨んだ。

そして剣を拾い、ナーシェは烈毅に向かってその剣を投げつける。烈毅は、敢えてそれを避けず、真正面からけた。そして、その石の剣は烈毅に當たると同時に、々に砕け散った。

「何よ……強いからっていい気になって……」

何を言っているの、私は?

「強いだけでそんなに言いたいことを何でも言っていいと思ってるの?」

違う、そんな事は思ってなんか―

「烈毅なんて……烈毅なんて早く殺されればいいのに!」

言ってしまった。微塵も思って無いことを言ってしまって。そして、ナーシェは嫌になり外へ走り出す。それを追って、レーナ、ミーシュ、ルノも走って追いかける。

ファイアは、その場に一人殘り、烈毅の立ち盡くす姿を見ていた。表は見えなかったが、落ち込んでいるのは一目でわかった。

オーラが解かれていたからだ。

『烈毅。し言いすぎだ。まだ始まったばかりなのだぞ? あんなに言うことは無かったはずだ』

「…………俺、そんな風に思われてたのか」

『烈毅……?』

「わかってるよ。俺だって。でもさ、なんか分からないけど口に出ちゃうんだよ……何か可笑しいんだよ、俺……」

烈毅は、その場にしゃがみ込み、両手で顔を覆い、それからは何も言わなくなくなった。ファイアは、唯それを唖然として見続けた。

隠れ家から飛び出し、まだ太が登っている外をただ無闇に走るナーシェと、それを追いかける三人。

「ナーシェ! ちょっとナーシェったら!」

「來ないで! 一人にして!」

「ナーシェ!」

「あ、目標みーっけ!」

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