《村人が世界最強だと嫌われるらしい》崩壊 1

あれから一週間が過ぎた。

デルノゼの襲來で、怪我をした二人もすっかり元気に戻り、今ではものすごい勢いで特訓に勵んでいる。自分の弱さを知ったのか、前よりもやる気が満ち溢れている。

それに比べ、烈毅のやる気はし下がっていた。普通の時もある。いつものように笑顔を浮かべ、冗談を言ったり、ドジだったり。ただ、違う場面も見られた。

それは、ナーシェとの組手の時だ。

一週間前にも怒られた事と、全く同じ選択をしてしまった時だ。

「やべっ、怒られ―」

「ナーシェ、違うぞそれは。はい次」

「あ、あれ? 怒らないの?」

「ん? あー、まぁ、いいよ」

それから、組手は続行された。それを見ていた周りの者も、首を傾げながらも特訓を続けた。ただ、ファイアだけは何も言わず、烈毅を見つめていた。

そういうのは、他にも何度かあった。時々ぼーっとしていたり、怒らなければならない場面で怒らない。正直、以前との烈毅との差に、混し始めていた。

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その日の夜。

烈毅が寢靜まった頃、寢ているファイアを叩き起し、ナーシェ、ミーシュ、レーナ、ルノの四人で質問攻めを始めた。

「ファイア、知ってる事を洗いざらい話なさい」

『…………』

「ファイア。これは、これからの私達に関わる重大な事なの。黙しようってなら、私は無理矢理にでも口を割らせるわよ?」

『…………』

そう問い詰めるナーシェだが、ファイアは、どこか悲しそうな目をして、烈毅の部屋の方を見つめるだけだった。

「それでも話さないの?」

『…………』

「なら―」

『お前に、何人の知り合いがいる?』

ナーシェが、用意していた聖剣を振り下ろそうとした時、ファイアは下を俯きながらそう問いかけた。

「そんなの、今関係ないでしょ?」

『お前に、何人の知り合いがいる?』

「だから、それは今は―」

『関係ない話をする訳がないだろ!』

ファイアの怒號は、その場の四人を震え上がらせた。殺気の篭った、とてつもなく重い一言だった。

『我には、さほど知り合いは多くない、が、烈毅よりは多くの知り合いというか友人がいる。お前らはどうだ?』

その質問とこれからの質問になんの関係があるのか分からなかったが、ナーシェは渋々答える。

「ま、まぁこの國になら何千人って知り合いはいるけど……」

『そうか。その中で、とても大切にしてる存在は何人いる?』

「大切に? そうねぇ……百人くらいはいるわ〜」

『そうか。多くいていいな、友人が』

「それが何? 話を反らせたかったわけ?」

「ちょっとナーシェ。最後まで話を聞いてみなければ分からないでしょ? そう急かされたら、ファイアだって話したくも無くなるわよ」

「でも……!」

『それじゃあ、烈毅には何人の友人がいると思う?』

「はぁ? そんなの知るわけないじゃん」

『お前らを含めて十五人だ』

「へぇ。で、その人數が何? 十五人もいれば上等でしょ?」

『その、十人が死んだとしたらどうする?』

「それは……辛いけど」

その問で、ミーシュとルノは察した。その瞬間、口を両手で抑えて、その場に膝をつく。

「うそ……でしょ?」

『その通りだミーシュ。その最悪が起きたんだ』

「そんな……」

「ちょっと、どういう事なの?」

「……烈毅の友人は、私達以外殺されたのよ」

いまいちピンとこなかった。確かにそれは辛いことであり、悲しい事だ。だが、ナーシェからしたらそれまでだ。

「私だって、多くの友人を魔族やモンスターに倒された。だけど、それだからって今の烈毅のようにはならなかった」

『それは、お前にまだ他の友人がいるからであり、そこまでその友人の事を良くは知らないからだ』

「何それ、嫌味?」

『違う、なぜ分からない? 烈毅の格を考えろ、そうすればすぐに分かるだろ?』

「優しくて、強くて、カッコよくて、仲間思いで……あぁ……」

それを言葉にして、初めて理解した。烈毅の気持ちになって考えてみれば、それはとても辛い事であり、言葉では言い表せないくらいに悲しい事だった。

『あいつは、心の底から友を大事にし、仲間を大事にした。自分よりも仲間のことを先に考える様なやつだぞ? それを考えただけでも……』

ファイアは口篭る。

さらに、そこに異世界から來た者、という事がプラスされるとなると、その殺された十人の存在は、自分の家族のようなになるのだ。

「…………私、最低ね」

『無理もない。これからは、しでも烈毅の為に何かしてやれ』

「その、烈毅の友達の死因ってわかる……?」

『…………』

再び、ファイアは口篭る。

「いや、これは私が無神経だった。ごめん」

『いや、ここまで來たらもう話そう』

「えっ?」

『彼らの死因は、魔族による変異種の実験。それと……』

「それと?」

『……國民の前での公開処刑だ』

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