《村人が世界最強だと嫌われるらしい》崩壊 5
階段を上がり、再び広い部屋に來た烈毅は、その場の異様な殺気を瞬時に察知し立ち止まる。
「ここまで濃い殺気を出せる奴は中々いない……となると勇者か?」
「また會ったな、人村烈毅」
「お前は何時ぞやの……ベルム國の勇者か! で、その怖そうな顔したお隣の方は?」
「此奴は……」
「俺は、同じくベルム國の勇者、マーク=シデルだ。お前があの魔王の子供と言われる人村烈毅か……見た目普通の奴だがな……」
「やめときなさいって、シデル。この人間は私達が殺すべき、いや、殺さなくてはならない対象なの。変な気を持つのはやめなさい」
「勇者……じゃないな。これ程までに複雑な結界を張れるやつはそういない。お前、もしかして賢者か?」
「流石は魔王の子供ね、この結界に気づくなんて。だけど、貴方の悪事もここで終わりよ」
「ライ、何で他の國の勇者を待たずに結界を張った?」
「だって、私他の國の人嫌いなんだもん。信用ならないし」
「チッ……勝手にやりやがって……」
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マーク=シデル。短髪で黒髪、顔から滲み出ているワンパクはあるが、その顔の見た目とは裏腹に型はガッチリとしている。それに、今はニコニコとした面をしているが、そのに抑えている殺気はかなり濃い。流石は勇者になるだけの事はある。
そして、ライと呼ばれた賢者。全を真っ黒なローブで覆い、誰もが一度は被ってみたいと憧れるであろうドデカいハットを被っている。ロングヘアで高長。しふっくらした郭でいて、目はスっとした細目。右手には、一メートル五十はありそうな大杖を持ち、烈毅を睨んでいる。
「ライ、何故お前は仲良くするというのが出來ないんだ?」
「何? 私に説教するつもり? やめてしいんだけど、気持ち悪い」
「はぁ!? 確実にこいつを殺すために何十人もの勇者や猛者達を編したのに、これで殺せなかったらお前のせいだぞ!?」
「はぁ? 負ける訳ないでしょ? 三対一よ? それに、私達は仮にもベルム國の最強冒険者とも呼ばれてるのよ? こんな雑魚一人で、どうこう出來るわけないわ。それとも何? ビビってるわけ、シデル? だっさ! うわ、だっさ!」
「はぁ! ビビってなんか―」
「二人とも落ち著け! 敵前だぞ! 今の間に殺されててもおかしくは無かったぞ!」
「そうだぞー? 俺がま・だ・抑・え・ら・れ・て・る・か・ら・良いものの、そうじゃなかったら死んでたぞ?」
シデルとライは、し自分こ行を反省しつつも、目の前の標的である烈毅からは視線を外さない。二人共、余裕を見せてはいるが、かなりの殺気で烈毅を睨んでいる。さすがの烈毅でも、この狀況は本気で戦わないといけないと直した。
だが一人だけ、目の前で直立しているヴィレード=クルルだけは、殺気を放たず、落ち著いた口調で烈毅に語りかける。
「お前はあの時言ったな。『仲間が大事だ』と。私はその時じた。お前はただの村人で、魔王の使いでもなんでもないと」
「ちょっ、クルル何言い出すの?」
「お前は黙っていろ、ライ。これは私とこいつの話し合いだ」
「は、はぁ……?」
「人村烈毅…………私をお前の傘下にれてくれ」
「「はぁぁぁ!?」」
突然のクルルの発言に、シデルとライは驚きの聲を上げる。烈毅は、その申し出に返答はせず、「なぜ?」と聞き返す。
「あの時、私は王の命令でお前を殺せと命ぜられた。その時、お前の事を魔王の使いだと聞き、そう思い込んでいた時の私はその命令を確実に功させてみせると意気込み、そして挑んだ。だが現実はどうだ? し変わってはいるが、仲間思いのただの村人ではないか。私は分からなくなった」
烈毅は、殺気を向け続ける二人を余所に、その話を聞き続けた。それと同時に、烈毅も考えた。これからの事を。
「私は一度王の元へ戻り、邪魔がって逃げられたと噓の申告をした。だが、その噓が続けられる訳もなく、王に気づかれた。そして、本當の事を話した時、王はなんと言ったと思う?」
クルルは拳をギュッと握りしめ、大きな聲でんだ。
「『そんな事は知っている。それがどうして殺さない理由になる?』と言ったんだ!」
その発言で、烈毅は一つの疑問を生じる。『そんな事は知っている』この言葉が、ように気にかかった。
「私は更に混した。訳が分からなくなった。だから私は尋ねた。人村烈毅をどれ程知っているのかと。だが王は何も答えず、ただ頬杖を付き、一言『下がれ』と言ったのだ。その時だ、もう一度お前に會いたいと思ったのは」
話し終えたクルルは、拳の力をゆっくりと抜き、烈毅の數メートル前まで歩み寄って行く。その行がありえなと思った二人は、その間に割ってり、クルルの肩を摑み、揺さぶる。
「おいクルル! どうしちまったんだよ!? たしかにココ最近浮ついていると思ったが、それがまさかこの事を考えてたからじゃねぇよな!?」
「…………」
「おいクルル!」
「そうよ、クルル。あんたそんなしょぼい理由で相手に寢返ったなんて知れたら、國中がアンタの事を敵に回すわよ? それでいいの?」
「じゃあお前らは、こいつがただの村人で、魔王の子供だの使いだのなんて確証もないのに、ただその噂だけでこいつを殺すのか?」
「可能があるのなら、その可能を排除するのが今の國民にとって最も重要な事でしょ?」
「可能があるだけで人を殺す事が許されるわけがない。なら、もしお前が同じ立場だとしたら、お前はどうする?」
「言って聞かす。それがダメなら何度も試す」
「ならなんでこいつはしない?」
「そんなの知らないわよ。やる気の問題でしょ?」
「國民が聞く耳を持たない。あるいは持つわけが無いと知っているからじゃないのか?」
「はぁ!? そんな訳―」
クルルとライの言い爭いが激昴するなか、その話し合いを無理矢理中斷し、クルル先程まで立っていた背後にあった、王がいる部屋であろう扉の方を向く。
「誰だ!」
そして、その気配に気づいた烈毅が聲をかけると、その扉の向こうから現れた人に、烈毅以外の三人は驚愕の表を浮かべる。
「やれやれ。クルル、君は吾輩の命令を聞けないと言うのかね?」
「何故ここに貴方が……!」
そこに立っていたのは、メルクリアにいるはずのない、ベルム國の王だった。
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