《村人が世界最強だと嫌われるらしい》崩壊 7

ヘキレウスは、烈毅との間合いを一瞬よりも早いスピードで詰め、二本の剣を左右から振り下ろす。それを烈毅はそれぞれ左右の剣を、左右の手でけ止め、ヘキレウスの腹に蹴りをれる。が、ヘキレウスはその攻撃を読み、魔法を放つ。

烈毅は、この魔法が自分には効かないタイプの魔法と言うことを先程攻撃をけて分かっている。その為、なんの避ける素振りも見せずそのまま蹴り上げる。

強烈な一撃はヘキレウスの腹に的中するが、ヘキレウスは微塵もダメージを負った様子を見せず、さらに追い打ちで魔法を放ち続ける。

全ての魔法が烈毅の顔面に當たり、このままでは視界が悪くなり、次の攻撃が分からない。その為、烈毅は一度剣を離し、大きく後ろに下がって距離を取る。

再び、お互いが睨み合う狀況になる。この十秒にも満たない激しい戦いを、目では追いきれない三人は、ただ愕然とした表で、目を開けているだけと言っていい狀態で突っ立っていた。

烈毅は、戦うに連れて段々と顔の表が変わっていく。ニヤけたような笑いから本気の笑顔。本気の笑顔から狂気じみた笑顔。それは、ヘキレウスも同じものであった。

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「流石だ、人村烈毅……吾輩……いや、もう取り繕うのは終わりだ。聞いていた通りの強さだ」

「聞いていた通り? それはどういうことだ」

「教えるつもりは無かったが、こんなにも楽しい時間を過ごせるのは久しぶりだからな。お前に一つだけ教えてやる」

「一つだけ? 他にもあるって事か?」

「さぁ? ただ、一つだけ教えられる事は、お前の存在はある特定の者達には知られていた、という事だ」

「ある特定の者? それは誰だ?」

「それもついでだ、教えてやる。……王と神だ」

「なっ……」

その事実を喋るや、ヘキレウスは先程よりも何倍も早いスピードで烈毅に斬りかかる。烈毅も、自分が目で追える限界のスピードで迫ってきたヘキレウスに、揺を隠せなかった。何とかそのスピードに反応したものの、二本の剣は烈毅の肩を掠めた。

烈毅の両肩に切れあとが付き、が吹き出る。

「いっ……その剣……その剣は何だ?」

その質問に解答はなく、ヘキレウスは先程と同じスピードで烈毅に詰め寄る。次は、そのスピードに反応し、剣をけ止める。

「このスピードに……」

そんな呟きをヘキレウスはするが、必死の烈毅の耳には屆かない。烈毅は、一瞬だけ攻撃が緩んだヘキレウスを投げ飛ばし、自分が持てる最高のスピードを載せてヘキレウスに毆り掛かる。

ヘキレウスは、スピードと攻撃が載った超重い一撃を諸に喰らい、王宮の壁をぶち破り外へ出てしまう。それを五秒後に気づいて反応したシデルとライは、王を追いかけに行った。

「おい、ベルム國の勇者! ここは引くぞ!」

「……はっ! わ、私を連れていくのか?」

「ああ! あいつには多分勝てない! だから今のに……」

そう言い、烈毅が手をばした時だった。クルルにばしていた筈の烈毅の左腕がポトリと床に落ち、し経ってから痛みとが沸き上がってきた。

「烈毅! 後ろだ!」

そのクルルのびに本能的に反応した烈毅は後ろを振り向き、そこにいたのは剣を頭上に構える一人の老人が目に映った。

「死ねぃ、人村烈毅」

その聲と同時に振り下ろされた剣は、烈毅の首の右五センチの所から斜めに振り下ろされる、はずだった。

剣先が烈毅の首に當たった瞬間、烈毅のユニークスキル"憤怒"が自する。その攻撃は空振りに終わり、目の前から消えた烈毅の姿に、二人は困の表を見せる。

そして、音もなく消えた烈毅の気配にいち早く気づいたのは、その老人だった。

「後ろか」

その老人は、後ろに振り向くスピードを剣に載せ、後ろにいるはずの烈毅に斬りかかる。が、その攻撃も空振りに終わる。そして、その五メートル先の壁には、今の斬撃で出來た切り傷が出來上がっていた。

「なっ!? 斬撃が飛ぶ!?」

その呟きの後、烈毅がクルルの目の前に現れる。何も喋らず、聲をかけても何も反応はしない。クルルは、突然の烈毅の変化に戸いを隠せなかった。

「何がどうなってるんだ……」

今起きている事が夢であってしい。現実では無く、ライが勝手な行で発させた幻魔法であってしい。クルルはひたすらにそう願った。

ライがってあった筈の結界など意味はヘキレウスが烈毅に毆り飛ばされた時に破壊されている。この狀況がバレるのも時間の問題だ。

烈毅は、今は憤怒の狀況でいる為、逃げる事など考えてられない。自分で止める事が出來ない烈毅は、目の前の老人に無言で飛びかかる。

今の烈毅は先程ヘキレウスと戦った時よりも數段強くなっている。が、その速さと攻撃の重さを耐え凌ぐその老人は―

現メルクリア國の王にして、初代勇者、メルクリア=アトラ=エルネイアだ。

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