《村人が世界最強だと嫌われるらしい》崩壊 9
「…………はっ! ここは……そうか、王宮の中か。あいつらは……いないか」
目が覚めた烈毅は、まだのきが鈍いながらも、ゆっくりと立ち上がる。痛みは無い。が、斬られた場所にしだけ違和が殘る。だが、それもすぐに消えていった。
橫を見ると、ライ、シデルの首が転がっており、見るも無殘な形となっている。だが、烈毅にはその死に向ける慈悲がなければ思いもない。ただ、そこに死が転がっているという認識だけが、烈毅の頭の中にはあった。
「なぜ、生きている……?」
突然聞こえた聲の方向を向くと、そこには信じられないを見ているかのような顔をして立っていたクルルがいた。
なぜここにいるのかというのは、彼が持つユニークスキル"潛伏"の効果で、姿と気配を完全に消していたのだ。この効果は複數人にも使え、自分がれた対処が、一定距離にいる間同じ効果を発揮出來る、超優れたユニークスキルだ。
「ああ、ベルム國の勇者か……なんでかって説明すると、し長くなるけどいいか?」
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「いや……だが……なぜだ?」
「おーい、聞こえてますかー?」
クルルは、ブツブツと獨り言をするだけで、烈毅の質問には答えない。目の前に近寄って手を振ってみるも、瞬きすらせず、固まった狀態でいる。
「ひ、人村烈毅。お前は死んだのではないのか?」
「だから、それを説明すると長くなるよって言ってるじゃん?」
「そ、そうなのか……長くなるのならここではない場所がいいのだが……」
「なら、俺が拠點にしてる場所があるから、そこに行くか」
「わかった」
死んだと思われている烈毅と、逃げたと思われているクルル。この二人が、萬が一あの二人と接した場合、再び面倒臭い事になる。そのため、ここは慎重にきたいと、烈毅は思っていた。
「とは言っても、もしここから出たらあいつらに見つかりかねない。何かないか?」
「なら、私のユニークスキルが役に立つ。効果は―」
「ほうほう。超便利じゃんそれ。よし、早速使ってくれ」
「わかった」
そうして、烈毅とクルルは町の外へ出て、拠點へと全力で走って戻った。道中、見慣れないモンスターが多く見えたが、今の烈毅には調べる余裕も無く、拠點に戻ることで一杯だった。
「著いた、ここだ」
「ここ? 地割れたところ以外、特に目立った建は無いが……」
「この地割れの中にあんだよ。ほら、行くぞ」
「中?」
そう言って、烈毅は軽快なジャンプで降りていき、クルルもそれに続いて降りていく。
まだ日も落ちていないし、この時間なら彼らが特訓をしているはず。烈毅のその予想は正しく、ルノ、レーナ、ナーシェ、ミーシュ、そしてファイアは特訓をしていた。そして、り口に降り立った烈毅の姿を一瞬で確認し、一目散に駆け寄ってきた。
「「「「烈毅ぃぃ〜!!」」」」
がっしりと抱きつく四人は、お構い無しに「どこにいたの?」「何してたの?」と質問攻めにする。だが、烈毅はそれに答えることはせず、「特訓は?」と、一言掛けるだけであった。
『烈毅……まさかまた……』
「なんだよ、ファイア。俺は特に何も無いぜ? それに、今日は新しい仲間を紹介しようと思ってな」
「ゲッ……お前は……」
「いつぶりだろうな、メルクリア國の勇者」
「クルル……あんた、ベルム國に生涯を捧げるんじゃなかったの?」
「そんな事も言っていた時期があったな。だが、今はもう違う。俺は仲間になったんだ。よろしくな」
「えーっと……烈毅、その人は?」
「こいつは、ベルム國の勇者。名前は……何だっけ?」
「ヴィレード=クルル。クルルと呼んでくれ」
「クルルね、よろしく〜。私はナーシェ」
「私はルノ。クルルさん、よろしくお願いします!」
「私はレーナです。よ、よろしく……」
『我はファイア。訳あって人間の姿でいるが、我は赤龍だ』
「赤龍!? そ、そんな者までいるのか……ま、まぁよろしく頼む。それで、烈毅、説明してもらってもいいか?」
「ああ、そうだったな」
それから、烈毅はクルルになぜ生きているのかや、自分の素などを説明する。全てがありえない事で、クルルは理解に時間が掛かったが、今更噓をつくはずがないし、そもそも烈毅の目は噓いつのない目をしていて、それを確信した。
「にしても、まさか異世界の者だったとはな……確かに、他のものと比べて名前がし違うからな」
「大凡は理解出來たと思うけど、他に聞きたいことは?」
「特には……あ、いや、一つだけ。ステータスを見せてくれないか? もしそれが本當なら、ステータスを見れば完全に理解出來ると思う」
「ああ、良いよ」
烈毅は、ステータス畫面を表示し、クルルに見せる。
「本當なのだな……この、バッドステータスって欄の"完全崩壊"とは何なのだ?」
その言葉を聞いて、クルルと烈毅以外の全員の表が直し、言葉を失う。
「まさか……烈毅、いや、でも、そんな……」
『何と戦ってそうなった?』
「王だよ。ベルム國とメルクリア國の王」
それを聞いて、さらに一同は驚愕する。
「王って……本當なの、烈毅? なんで王と戦ったの……」
「何でか? そんなの決まってるじゃん。『復讐』のためにだよ」
その一言は、烈毅からは絶対に出るはずのない言葉であり、そして、それを言った時の烈毅の顔は、完全に笑顔が消え、それだけに執著した顔をしていた。それを見て、一同は再び言葉を失った。
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