《村人が世界最強だと嫌われるらしい》好きだからこそ 3

「さて、烈毅の部屋に早速るわよ?」

「わかった」

コンコン、と優しくノックをする。それから二秒ほど遅れて「いいよ、っても」という烈毅の力のない返答が帰ってきた。恐る恐るった二人は、目の前の景に絶句する。

は壊れ、部屋は散らかり、壁には無數のの跡とがある。その部屋の真ん中に、一人ポツンと座っていた烈毅の顔は、復讐というだけを見つめているような顔をしていた。

「何の用だ?」

「あ、あのね、実は……」

目の前の烈毅を見てしまっては、ミーシュはとても聲が出せなかった。好きな人が暗い表で、一人寂しそうにしている姿を見れば、きっと誰もがそうなるだろう。

そこで口を閉じてしまったミーシュの代わりに、クルルが一歩前に出て話し始める。

「烈毅は、エルフという種族を知っているか?」

「エルフ……? あぁ、知ってるよ。それが何だ?」

「私は、以前王宮にいた時に一冊の本を読んだことがあって、その本にはエルフという種族が持つとされる薬を飲めば、どんな怪我、病気、狀態でも治せると書かれていたのだ」

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「…………」

無反応、では無い。その話をした途端、烈毅の纏っていた雰囲気が、絶からを見出したかのような、そんな雰囲気に変わっていた。

「だが、そのエルフという種族が我々には分からない。どこを探せばいいのだかさっぱりだ」

「そ、それは私には心當たりがあるわ」

それまで口を閉じていたミーシュが、何とか正気に戻り、口を開く。

「ああ、俺にも心當たりがある……リバースワールドだな」

「り、リバースワールド? それは何かの魔法かアイテムか?」

「いや、違う。こことは全く違った種族の人間が暮らしている世界だ。広さも、人口も、建の作りも何もかも違う場所なんだ」

「そんな場所が……だが、そのような未知の世界にどう行こうと言うのだ?」

「行く方法はある。が、行けるかは分からない」

「行く方法を知っているのか? 因みに聞かせてもらうが、それはどういう方法だ?」

「あっちの世界に俺の知り合いがいる。そいつに俺の"念話"でコンタクトを取ってこっちに來てもらって、それから一緒に行くって方法だよ」

「ほうほう……」

「烈毅、その事なんだけどね……」

「ん?」

手を挙げながら発言したミーシュは、どこか自信があるような表をして、はっきりと発言する。

「私、空間制の魔法覚えたの」

それを聞いた烈毅は、ゆっくりと立ち上がって、ミーシュの元へ歩いて近づいていく。

し怖かったミーシュは、一歩手前で止まった烈毅の顔を見ることが出來ず、下を向く。が、次の瞬間。頭に優しくれられたを突然じ、そして微かに烈毅の呟きが聞こえた。

「お前は、本當に頑張ってるんだな……きっとあいつらも……」

それ以上は口にはせず、烈毅はミーシュの頭から手を離す。

ミーシュは、ファイアの持つ魔法の一種、『赤龍の図書館』というものを使わせて貰い、様々な魔法の研究をしている。その中で、一番初めに覚えたのが空間制魔法だ。もしも、この先にまたリバースワールドに行く機會があるとした、と考えミーシュは真っ先にその魔法を覚えたのだ。

「それでミーシュ、何人までなら連れてける?」

「全員連れて行けるわ。私の魔法力なら余裕よ!」

エッヘンとを張ったミーシュは、どこか嬉しそうでもあった。

「わかった。なら……行くか、リバースワールド」

「本當!?」

「うん。ほんのしだけしか殘されていない俺の理を完全に取り戻す為にな……」

「烈毅……」

復讐に燃えていたはずの烈毅が、今こうして何とか踏ん張って行こうと言ってくれているのだ。これは、何がなんといても、エルフが持つとされる薬を手にれるしかない。ミーシュは、心の中で強く決意する。

「なら烈毅、殘りの者らも呼んで來た方がいいのではないか?」

「そうだな、クルル頼む」

「わかった」

そう言ったクルルは、足早にその場を去り、皆を呼びに行った。その場に二人きりとなった烈毅とミーシュは、部屋の真ん中へと移し、壊れかけの椅子に腰掛けた。

「なぁ、ミーシュ」

「な、何?」

「ありがとう」

「…………どういたしまして」

初めて烈毅が笑顔を見せた。苦難を共にしてきたミーシュには分かる。それが心からの笑顔であり、今は復讐に囚われない純粋な気持ちを持った烈毅だということを。

「皆を呼んで來たぞ、烈毅」

「よし、なら話し合いを始めようか」

それから、先程ミーシュとクルルと烈毅で話し合っていた事を、殘りのメンバーに伝え、作戦やらリバースワールドの事やらを話した。

最初は驚いてばかりで、どこか信用してはいないような顔つきだったが、時間が経つにつれてその表は確信的なものに変り、そしてその作戦を呑み込んだ。

烈毅のこの壊れた理を取り戻せるのなら、何でもしてやるぞといった強い気持ちが一つになった。あまり信用されていなかったクルルも、今では仲良くなり溶け込んでいる。

皆、烈毅が好きだからこそ出來るものであり、烈毅が好きだからこそ信用出來る。

そして、その話し合いは終わり、実行は明後日となった。もうすっかり日が落ち、空に月が浮かぶ夜空の中、ミーシュは一人、キュウの事を思い出していた。

「また、會えるといいな」

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