《村人が世界最強だと嫌われるらしい》 1

一日が経ち、いざ行かんとする彼らは、最終確認をしていた。

「よし、これでいいわね」

「なんか、張するね。この世界以外の場所に行くのって」

「それもそうね。でも、私は張ってよりはワクワクしてるわ!」

「ルノのそんな格を羨ましいと思うよ……張して夜眠れなかったのよ、私」

「ま、まあそれがレーナってじだし、ね?」

「どんなじよ……」

「ほら、二人共。もう出発するから來なさい」

「「はーい」」

そんな談笑はすぐに終わり、荷を持って地上へと上がっていく。そこにはもう烈毅が立っており、どこか考え事をしてきる様な顔だった。

「烈毅、みんな集まったよ」

「お、そうか。よし、じゃあ行こう!」

以前ルノが見た時よりも明るくなっていた烈毅の様子を見て、やはりこの作戦がとても大切な事だと再認識する。

手段は、ファイアが龍の姿になり、その姿をクルルの持つユニークスキル"潛伏"を使い、完全に姿をけした狀態で空を飛んでいく、というものだ。

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そして、いよいよ烈毅達はファイアに乗り、移を開始した。

ファイアの上では、相変わらずナーシェが気分を悪そうにしているが、そんなことは知らぬ顔して烈毅は前だけを見続けていた。

クルルは、し気になる事があり、烈毅に聲をかける。

「烈毅、どうして行くことを決めたのだ?」

「ん? それは……」

「皆の為、か?」

「それもある。だけど、それ以前にし気にかかっていてな。ついでにと思ってさ」

「ついでに?」

「まぁそれは全く関係ない話だから、気にすんな」

「まぁ、そう言うなら……」

烈毅がそう言ったのは、真っ二つにされ、夢の世界で謎の存在に出會った時に言われた、『まずはリバースワールドに行け』という言葉もあったからだ。

その言葉がもしなかったとしたら、烈毅は再びリバースワールドに行こうとはせず、復讐に専念していただろう。だが、リバースワールドに行けと言われた事。このタイミングでクルルの口から出たエルフの存在。この関係が無いわけがないと思った烈毅は、なんとか自分の理を繋ぎ止め、行くことを決心したのだ。

それに、もしこのまま自分の理が完全に戻り、何らかの変化が得られるのならば、それは一石二鳥だとも思っている。

その事を考えていると、目的地が真下に見えてくる。懐かしい場所に、烈毅と後ろでナーシェを介抱していたミーシュは、キュウ達のことを思い浮かべた。

「さぁ著いた。ファイア、降りてくれ」

『うむ』

そう言われ、ファイアはゆっくりと地上におり、皆が背中から降りたことを確認した後、人間の姿に戻る。

まだ潛伏の効果は続いているため、姿は見えてはいない。念の為に、リバースワールドに行くまではこの狀態をキープする。

「よし、ここだ。この場所から海にって、し行ったところに門がある。そこを潛れば……」

「リバースワールドって訳ね……正直、今でも不安がしあるわ」

「それもそうかもしれないけど、今は時間がない。なるべく急ごう」

「なら、もう早速空間制魔法使うから、なるべく集して。そうしてくれた方が魔力消費なくて済むし」

そう言われ皆は手を繋いで集し、空間制魔法がかかった事を確認した後、海の中へる。

深くに行くにつれて、日は當たらなくなり、辺りは段々と暗くなっていく。レーナやルノ達の手に、自然と力がる。二人の手を握っていた烈毅は、「大丈夫。安心しな」と聲をかける。

その聲で手の力はそっと抜け、二人から不安が掻き消える。完全に暗くなる前に、烈毅は一瞬だけ手を二人から離し、"異次元アイテムボックス"からランタンを取り出す。それにを燈してから手を握り直した。

それから暫く進むと、門らしき影が見え始め、烈毅とミーシュを除く一同は、唖然とした。

「本當にあったんだな……」

「あそこを潛れば著く」

そして、いよいよ門の前に到著し、ミーシュはなんの躊躇も無く進んで行く。それに続いて、他の者も一斉に足を踏みれる。その際、レーナとルノは目を瞑ったままる。

「著いた。ここがリバースワールドだ」

烈毅の聲を聞き、二人は恐る恐る目あける。そして、目の前の景に口を開き、愕然とする。

先程まで海にいたというのに、門を潛っただけでこんなにも違う世界が目の前に広がっている。ファイア、クルル、ナーシェも同じ表で辺りを見回している。

「よし、ここまで來たのはいいけど、次が肝心なんだよね」

「そうね。キュウ達に會えれば良いのだけど……」

「そこが重要だね。まぁ、うだうだ言ってても仕方ないし、取り敢えず歩くか」

そうして、一同はキュウ達のいる町、レデモン目指して、歩みを進めるのであった。

―その頃、とある場所では。

『…………ん? この気配は……』

「どうかされましたか、王?」

『いや、な……。気のせいかもしれない』

「そうですか……疲れているのかもしれません。早く次へ行きましょう」

『わかった』

そう言い、二人は次の目的地向けて歩き出す。無數に転がる、真新しいを背にしながら……。

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