《村人が世界最強だと嫌われるらしい》 8

翌日。

「さぁ、今日にはもう著く。そして渡る事になる」

出発前の挨拶のようなじで放たれた一言に、皆の顔はキュッと引き締まる。と言っても、橋の上では烈毅の異次元アイテムボックスの中だが、それでも張はする。

「何も言わない。行くぞ」

そして一同はきだした。このあとの行やエルフの國の狀態によって全てが決まると言っても過言ではない。それを理解している烈毅達は、尚のこと張が高まる。

「怖い?」

「ん? いいや、全然」

走っている中、抱えているルノが烈毅に話しかける。烈毅の早すぎる速度の中、話しかけられるのはこのスピードに慣れたからだった。

し見慣れない顔の表をしていた烈毅だった為、ルノは気になり聲をかけた。そんな表を見せるのは中々ないからだ。

「そう?」

「うん。ルノは?」

「うーん。私は怖いかな」

「どうして?」

「……わかんない」

「そっか」

そこで會話は途切れた。そこからは何も話さなかった。ルノがなぜ怖がっていたのか、理由は本當は知っていた。橋を渡ることが怖いんじゃない。その先の事が怖かったのだ。

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多分、皆同じ事を考えているのだろう。ルノはそう思っていた。その通り。烈毅以外の者達は、皆この先の事が不安でたまらなかった。

目的地はもう目と鼻の先まで來た所で、一旦止まって念には念をれようということで、その時點で皆を異次元アイテムボックスの中へ移させた。

一応報告やらをしてしいと言われたため、烈毅は念話をファイアに繋げた。

「烈毅殿……無事に帰って來るのじゃぞ」

「ああ、任せろって」

不安になったキュウの顔は、今の心境を語っていた。そんな顔でさよならは嫌だ。烈毅はそう思い、キュウを優しくギュッと抱きしめた。

「大丈夫だって。俺は戻ってくる。シェルドを連れてな」

「…………絶対じゃ」

「おう。絶対だ」

「ウチからも頼むな、烈毅はん」

「わかりました」

「おいおい、俺はそんなに信用されてねぇのか……」

そして、その挨拶を最後に、烈毅とシェルドは道連れの渓谷へと向かった。その姿が見えなくなるまでずっと見つめ続けたネキツとキュウは、心でずっと祈っていた。

帰ってくる事を。笑顔で迎えられる事を。

ネキツとキュウと離れてから數分後、その橋は直ぐに見えてくる。

「あれが道連れの渓谷だ。そしてあの橋が……」

「問題の橋だな」

張が見て取れるシェルドに、烈毅は近寄って背中に一発平手打ちをいれる。バッチーンと豪快な音が鳴り響き、シェルドは涙目になりながらび聲を上げた。

「イッテェェェェエ!」

「おお、元気いいな?」

「テメェ本気でやりやがったな!?」

「いやいや、六割で毆っただけだって」

「噓つけ!」

「お前が気った面してるからだよ」

「そ、それは……」

「何も考えるな、とは言わないけど考えすぎるのはやめておけ。その時の判斷が鈍る」

「わかっている」

「それに、本気で渡りきらなきゃお前落ちるだろ?」

「う、うるさいっ!」

「その調子だ」

強ばっていた顔の張はいつの間にかとれ、目にはやる気が宿っていた。それを見てなんの心配もいらなくなった烈毅は、いよいよ橋の目の前に到著する。

「著いたな」

「ああ。ここから先は覚悟しろ」

幅五十メートル程の広さに、一キロはあろう距離の石でできた橋。人工とは思えないほど立派にできているその橋の上は、何もいない靜かな橋だ。

橫を見れば真っ暗な谷がある。落ちたら最後、戻ってくる事は不可能に近い。そして、意を決した二人は、何も言わず橋に一歩踏みれる。

その瞬間、橋の上に三人の人影が現れる。向こうがけて見えるくらいに明で、はゆらゆらと炎のように揺らいでいる。クッキリとまではいかないが、四は見える。

「あれだ、恐ろしいのは」

「見るからに幽霊ってじだな」

「死者だ。あの中に、俺の……」

「シェルド」

「ああ、しっかり保てているさ。それに、何だかやれる気しかない」

「……それは頼もしい」

「行くぞ!」

その合図がゴーサインとなり、二人はその場から一瞬で姿を消し、橋の三分の一の所までくる。すると、三人だった人影は一気に數を増し、三十もの數になる。

隙間はほとんど無い。ただ全力で避けて避けて避けまくることしかできない二人は、その事だけを頭にれて駆け抜けた。

「前よりも能力が上がったんだ。こんな所で……!」

その呟きは烈毅の耳に屆いていた。が、何も言わず遅い來る亡霊達を必死に避け続けた。そして、半分を過ぎた時だった。

突然今まで追っかけてきていた亡霊はそこからは追ってこなくなり、姿を消して行ったのだ。

「なんだ?」

これ以上行ったことのないシェルドも初めての事で、戸いを隠せなかった。

「どうした、シェルド?」

「いや、ここまで來たのはなんせ初めてだ。こんな事になるとは思っていなかった」

『どうした烈毅?』

「いや、なんて事は―」

その時だった。目の前に再び人影が現れ、その人影は先ほどよりも濃く、形もハッキリとしている。そして何より、ハッキリとしていたのが―

「なんで……どうして……」

「烈毅?」

「お前らがここに現れるんだ……」

そこに現れたのは、殺されてしまった烈毅の友人達であった。

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