《村人が世界最強だと嫌われるらしい》 10

「まぁ、取り敢えず渡り切った訳なんだけど、し休憩とするか?」

「いや、先へ進もう。俺ももうけるしな。それに、先を急がないとならない」

「それでいいのなら構わない。皆もそれでいい?」

「いいわよ〜」

代表してナーシェが返事をする。皆もコクコクと頷き、賛の意を示している。

「よし。じゃあ行くか、エルフの國へ」

エルフの國が襲われてからもうかなりの時が経っている。みは限りなく薄いが、一人でも生き殘っていてくれることを願いたい。

しかし、烈毅はこの時こうもじていた。先ほどの不自然な力の湧き方に疑問を抱き、そして何より自分の理が以前の烈毅同様に戻っている。一時的なものかもしれないが、治っているのだとしたら話は早い。

ステータスを表示して確認したいが、今はエルフの國へ向けて走っている。どこから敵が襲ってくるかも分からない狀況で、一方向だけを確認するのは危険だと判斷し、それはしなかった。

エルフの國はどの國のものも狙っていると言っていた。なら、鉢合わせしたって可笑しくはない。依然として、気は抜けないのだ。

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そうこう考えながら走っていると、森林地帯が見えてくる。気の高さは二十メートル以上はあり、そして広い。この世界の広さから考えたら、これは普通なのかもしれない。だが、表の世界しか知らない烈毅達からすると、目の前には恐怖すらもじるほどに広かったのだ。

「森林地帯にはいる。この森はとてつもなく長い。何日間は抜けるのにかかるが、そこを超えればエルフの國にれる。気を引き締めていけ」

「わかった」

『我が空を飛んだ方が早いのではないか?』

「いや、それはやめた方がいいだろう。ここは他の國のヤツらも通るはずだ。それに、森の中から攻撃されたんじゃ、敵も確認できなくてキツイ」

『うむ、その通りだ。無意味なことを聞いた。すまぬ』

「いや、いいって事よ。急いで抜けちまおう」

「ちょっと待って、あそこに子供倒れてない?」

「なに?」

シェルドがそう言った直後だ。森にる直前、周りを確認しながら走っていたナーシェが、木に寄りかかって寢ている子供を発見した。

大きな荷は見當たらないが、ピクリともこちらを見ようともしない。烈毅は、一旦その子の様子を見ようと、近寄っていき、その彼に希の眼差しを向ける。

「エルフだ」

「えっ?」

烈毅がポロッと吐き出した言葉に、一同は騒然とする。

「全滅はしてなかった。彼は生き殘りなんだ!」

シェルドの表も明るくなり、皆は急いでエルフの子供の元へ駆け寄る。やせ細った腕を見ると、どうやらここ一週間からそれ以上の間、ろくな食事をしてこなかったのだろう。

烈毅は、異次元アイテムボックスから食料と水を取り出し、聲をかける。

「おい、大丈夫か!? 意識はある……。だが弱ってる」

「う、うぅ…………。お腹……すいた……」

「わかった。これを食えばいい。と水だ。口を開けて」

橫からミーシュが回復魔法をかけ始め、烈毅はエルフの子供にゆっくりと食事をさせる。顔は回復魔法のおかげか綺麗になり、閉じられていた瞳もゆっくりと開かれる。

「見えるか? 大丈夫か?」

「うん……大丈夫。その……お、もっと貰っても……いい?」

「ああ、いいとも。存分に食いな」

それから烈毅はそのエルフの様子を伺いながら食事をさせ、一時間後には立てるくらいには力が回復していた。

「今日はここで休もう。寢床を頼む」

「わかった。烈毅、もしその子が変な様子になったら私に教えてね。魔法で治療するから」

「助かる」

烈毅以外の者は皆夜営の準備を始める。エルフの子は、キョトンとした顔で、未だ狀況が理解出來ていない様子だ。

「名前は?」

「ルーフって呼ばれてた。ルーフ=エンデーク。お兄さんは?」

「俺は人村烈毅。ここの世界の住人では無いけれど、俺は君の仲間だ」

長は百四十センチ程度。エルフの特徴である長く尖った耳はピクピクといている。髪はサラサラで、瞳は青い。顔は小さく、の子の様な容姿をしているが、男だ。貧弱そうなは、まだ子供であるために、叩いたら直ぐに折れてしまいそうだ。

「ルーフか。どうしてここに倒れてた?」

「エルフの國が襲われて、それで逃げろって言われて、逃げてきた」

「やっぱりか……君は一人で?」

「うん。家族は……多分死んじゃった。他のみんなも」

「そうか……辛いな」

「うん……あのね、お兄さんに聞きたいんだけど、お兄さんは人間でいいの?」

「ん? そうだけど、知ってるの? 人間」

ルーフは、頷く。その後、背中に背負っていたカバンから何かを取り出し、烈毅に渡す。

「これは?」

「人間に渡せって言われたから。それは、エルフの國に伝わる薬ってババ様が言ってた」

それを聞いた瞬間、烈毅の中で小さく輝いていた希が、全を覆うくらいにだし、自然とが熱くなる。

「そのババ様ってのは?」

「それはね、エルフの國の中で一番のお婆ちゃんでね、もう何千年は生きてるんだよ」

「それは凄いおばあちゃんだ……そういや、ルーフは何歳なんだ?」

「僕? 僕はまだ九十歳くらいだよ?」

「流石エルフ、年上だ……」

「渡す事はしたけど、それを何に使うの?」

純粋な疑問を投げてくるのは當たり前だ。突然知らない奴にこの薬を渡せと言われれば気になる。

「俺は心の病でさ、これを飲まないと治らないんだよ」

「そーなんだ。それじゃあ、それを飲み干さないとね」

「ああ、本當にありがとう。謝するよ」

「うん!」

謝を伝えると、ルーフは心の底からの笑顔を見せてくれた。そして、烈毅はその薬のった瓶の蓋を開け、一気に飲み干した。

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