《村人が世界最強だと嫌われるらしい》次はお前の番だ 4

「…………ん、あぁ寢ちまってた」

一晩考え込んでいるうちに寢落ちしてしまい、気づけばもう次の日の朝になっていた。何も考えていないわけではないが、やはりこれと言って打開策が見つからない。

自分みたいに薬を飲んで助かるのならそれに越したことはない。ただ、その薬ももうない。あれが最後の薬だった。

となると、やはり実踐で戦うしかない。でもそれが出來ない。正直行き止まりだ。過去に飛べるのならまだしも、そんな事は絶対にない。

「はぁ……そろそろ支度するか」

ここに長居をするのも悪いと思い、次の行の為にそそくさと支度を済ませる。他の部屋からもバタバタと慌ただしい音が聞こえてくる。どうやら、同じく支度をしているらしい。

特に持っているものもないので、著替えを済ませるだけでいい。ユニークスキルの"異次元アイテムボックス"もあるため、常に両手は空いているのだ。

「誰かを手伝いにいくか」

部屋を出て、まず向かったのはレーナの部屋。二度軽くノックし、「どーぞ?」と何故か疑問形で部屋へるように促された。

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烈毅は「俺だけどいいのか?」と聞くと、急に中が慌ただしくなり、ドッタンバッタンと突然騒がしくなりだした。

そんな事は気にせず烈毅は部屋の扉を開け中にる。すると、そこには部屋全に散らかった下著や服、旅の支度などが散らばっており、足の踏み場などどこにもなかった。

「なんだこれは……」

「あ、いや、これはその……ね?」

「ね? じゃない。もう行くんだから、支度して」

「は、はーい」

半袖一枚と下著だけの姿のレーナは、ベットの上で正座をしながら反省の面を見せつつ、ゆっくりと行に移し始めた。

「ったく……手伝うから」

「ホント? お願い!」

「それで、どれがどこなんだ?」

そこから片付けが始まり、服などを閉まっていくうちに、使い古された防と、綺麗に研がれたレーナ用の剣に目が映る。

「裝備はしっかりしてるのな」

「當たり前でしょー。それは肩みたいななんだから」

「そうか……しっかり使ってるのが分かるし、綺麗に手れもされてる。偉いな」

し照れくさそうにしているが、心ではとても喜んでいる。烈毅に褒められるのは久しぶりというか初めてなのではないかと思うくらい言われた事がなかった。それ故に嬉しかったのだ。

「裝備を変えたいと思わないのか?」

「変えたいわ。でもあっちの世界はさ……」

「そうだったな……ここの世界でも作れるんじゃないか?」

「作れるんならいいけど、時間が……」

「うーん……どうしよう」

片付けのことなど忘れ、防をどうするか悩んでいるとコンコン、とドアの方から二度ノックが聞こえた。

「はーい」

レーナが反応すると、扉の向こうで「話は聞かしてもらった!」と野太い聲が聞こえてきた。

「シェルド!?」

「烈毅、レーナ! 裝備の事なら俺に任せろ! 良い鍛冶屋を知ってるから待っていろ!」

どうやって盜み聞きしていたのかは後にして、取り敢えず裝備を新調出來ることに、レーナは喜びを隠しきれない。

「良かったな、この世界の思い出だ」

「うん!」

その後、完璧に支度し終わった二人は、部屋を出て、玄関前の大広間に向かった。そこには、ミーシュ、ルノがもう立っており、キュウと仲良く話していた。

ナーシェが見當たらないのを見るとまだ支度が終わってないのかと、烈毅ため息をつき立ち止まる。

「レーナ、先行っててくれ。ナーシェんとこ見てくる」

「わかった」

大広間に降りる階段を前に踵を返し、烈毅はナーシェの部屋へと向かった。

廊下ですれ違うのが一番嬉しいなと思いながら廊下を歩くが、そんなことは無かった。部屋の前にたどり著き、深くため息を著いた後、ドアをノックする。

「おーい、起きろー」

聲をかけても反応がない。寢ているとしたら、更に面倒臭い。何も言わずドアを開けると、レーナの部屋よりもさらに散らかった部屋を見て、烈毅は絶した。

「こいつは……」

「んぁ……烈毅、おはよ〜」

呑気に欠をしながら起き上がり、にかかっていた布が落ちる。そこから現れたのは、服どころか下著も付けていない姿のナーシェだった。

「服は?」

「え? 著てないわよ?」

「はぁ……支度は?」

「え? してないわよ? 出るなんて言ったっけ?」

「はぁ……言ってはいないけどさ……昨日の話で大わからないかなぁ……」

すっとぼけた顔をしたナーシェに、烈毅は「だめだこりゃ」と呟き、額に手をつけため息をついた。

「どーせまだみんな寢てるでしょ? 私も寢る。お休み……すぅ……」

さすがに頭に來た烈毅は、大きく息を吸い込み、今までに出したことの無いような大きさでナーシェを怒る。

「いつまで寢てんだ! みんな待ってるからさっさと起きて支度しろ!」

その聲で城中が振し、寢ようとしていたナーシェが突然の大聲で飛び起き、何故か敬禮をしていた。

「も、申し訳ございません!!」

けぇ!」

「はい!」

その後、床びっしりにぎ捨てたり放置されていた服などを全速力でしまい、大広間に降りた。寢癖でボサボサの頭のナーシェは、そんな事は気にもせず綺麗な姿で直立をしていた。

その時、ほかの皆も烈毅を怒らせるのは辭めようと、心に誓ったのだった。

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