《ひねくれ魔師が天才魔法使いよりも強い件について》第14話 舞
満「神系を絡ませた水?」
塡「難しい話は俺に任せておけ。お前は魔法だけに集中しておけばいい。」
その言葉の後、記憶の格納庫にある魔法をひたすらに探し始める。
塡(神系の魔法・・・・・・・・・・・・大口叩いたはいいが中々に見つからないか。神系の魔法はない上に、扱いが難しいから初等教育や中等教育じゃ教わらない。知ってるものはあるにはあるが、難易度が上がると満が失敗する可能が高い。)
 
頭に浮かぶ候補が潰れていき、選択肢が狹められていく中、満から言葉が発せられる。
満「なんで神系じゃないといけないんだ?」
塡「神系じゃないといけないわけじゃない。ただ、神系が俺らが使用出來る手段の中で有効なだけだ。」
満「だったら、蒸発させられない水を作れば良くないか?」
塡「お前な、あいつらは煉獄蝶だぞ。煉獄の炎に対抗出來る水があるわけないだろ。」
満「でも、森に火がついた時消えてたぞ?」
塡「それは熱波でついただけ・・・」
その言葉は大きなヒントとなり、同時に勝利の道に一歩近づくための架け橋ともなる。
塡「・・・ほんとに火が消えたのか?」
満「そう言ってるだろ。」
何度も聞き直しているのは、塡の知識の中では煉獄の炎は天界の水と呼ばれる仮想の質でしか消火できないというものが固定観念としてあったため、満の話がいまいち信じられなかったためである。
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そんな中、塡の反応を気にすることも無く満はいつも通り話を続ける。
満「それに、まだ火が消えていないならフィールド上の木が殘っているのは不自然だろ。黒い火も消えていたし。」
塡「黒い火?」
満「塊吐いてたじゃねーか。あれだよ。あれから火が出てたんだけど、普通に消えてたぞ?」
その言葉が本當だとしたら、まず前提條件から崩れることになる。
先程から満と會話している塡だけでなく、ここにはいないが舞と呼ばれるもその違和をじていた。
三匹の蝶が攻撃手段として使用していた、黒い塊。
その攻撃方法を知らなかった塡と舞は、自分達の知識不足としてタカをくくっていたのだが、もしそれが間違いだったとしたら。
一番最初に舞がじた違和が正しかったとしたら。
もしそうだとするならば、三匹の蝶を倒す事は造作もないということになってしまう。
塡「黒い・・・塊・・・煉獄の炎の自然消火・・・熱波・・・」
いまいちピンと來ていない満を気にすることなく、勝利への糸を全力で手繰り寄せる塡の思考はただ一つの結論を導き出し、満が理解出來る言葉へと変換していく。
塡「本來、あいつらの炎は消えない。特別なものを使わない限りはな。それが易々と消火されているということはあいつらは煉獄蝶じゃないってことになる。つまりはこの世界であいつらの炎を再現出來ていないわけだ。」
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満「?」
塡「要するにあいつらはお前が言った通り、蒸発しない水を作ればあいつらは余裕で倒せるって訳だ。」
満「なるほど、なら最初っからそういえばいいのに。回りくどいな。」
塡「お前が馬鹿なだけだろ。」
的な目的を見つけた二人の行は早く、満はとりあえず水力アクアを発させ、塡の指示を待つ。
その間、塡の頭では蒸発させない為の方法をいくつもの候補を立てながら有効か、そうではないかで報の処理をこなしていく。
塡(水力アクアの重ね掛けは蒸発はしないだろうが、一度の隙がデカすぎる。一撃で倒せなかった時に下手に時間がかかる。魔點の皮コーティングは有効かも知れないが、連発するにはコストが高いことに加え、威力の底上げが効かない。水屬の上級魔法を使うにも満にはハードルが高すぎる。)
不安要素が強いものは候補から消していくと、ある程度の方法が絞られてくる。
塡(・・・『水力アクア』を一度使用した後に、水屬の中級魔法である『屬弾丸生エレメンタルバレット』で水屬の弾丸を生し、弾幕として使うことによって避けられないようにする。弾丸は生じに加工されるし、蒸発することは無いはずだ。)
考えている間も黒い塊は飛來し続け、塡と満に回避行を余儀なくされた。
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塡「満!」
満「おう。」
し離れたところから瞬時に移してきた満を前にし、塡の言葉が詰まる。
塡(・・・)
張だとか、そういうじでは斷じて違う。
その理由はたった一つで、満馬鹿にもわかるように説明できるかどうかということである。
塡(こいつに、どう説明すれば伝わるんだ・・・)
満「?」
靜止した二人に降り注ぐ黒い塊は年達のに傷を付けることなく、地面に激突する。
満「作戦は?」
塡「・・・・・・『屬弾丸生エレメンタルバレット』って魔法は知っているか。」
満「なんだそれ?」
予想通りではあるのだが、知らないとなってくると作戦の全てが破綻してしまう。
この場で教えるにしては時間が足りないし、この年が理解出來るように説明しろと言われるなら、一人で煉獄蝶と戦えと言われた方がなんとかやれそうなじがしてくる。
塡「・・・・・・弾丸の生は出來るのか。」
満「ん?あぁそれくらいならできるぞ。」
塡「その弾丸に屬の付與は出來るのか。」
満「屬の付與?」
塡「水そのもので弾丸を生するんじゃく、通常の弾丸に屬を與えるって事だ。」
絶えず降り注ぐ黒い塊を避けながら話を続ける満は、なるほど!という顔をした後に、「それならそうと言えよ。」と何故か上から目線で言葉を放ってきた。
塡「・・・弾丸を生し、『水力アクア』発後に水屬を付與することは出來るか。」
満「あぁ、やったことは無いけど、多分。」
怒りをじるのもめんどくさくなったところで、上空からの聲が二人の年の意識を引っ張る。
?「何囮にしてんのよ!」
?「どしたの?疲れた?」
聞き覚えのある聲に顔を上げる作が必要かどうかの選択が鈍るが、魔法で作り出した聲という可能もあるため、念の為塊を避けてから顔を上げる。
塡「お前らか。」
承「あたしら以外誰だって言うのよ!」
塡「『変トランス』じゃないだろうな!」
承「とーぜんよ!」
確かにこの上から目線を再現出來る人間はそうそう居ないだろうと、煉獄蝶へと再び顔を向ける。
塡「満!」
満「なんだ?」
呑気な様子で塡の元まで寄ってきた満への説明を考えながら、とりあえず黒い塊を避けておく。
塡「・・・あいつら二人が居る以上、魔法作が下手な俺達は用済みだ。別の作戦に移るぞ。」
満「魔法作くらい出來るぞ?」
塡「余計なことを言って俺をイラつかせるくらいなら、まずは話の聞き方から覚えろ。」
何も響いてない表で更に塡の怒りを増幅させている事を知ることの出來ない年は、とりあえず「こいつなんか分かんないけど怒ってるし、とりあえず黙るか。」と口を堅く閉じる。
塡「いいか、俺たちがやるのはトドメ役だ。煉獄蝶の炎はにある、魔法鉱石が作り出してる。それをぶち壊す事が俺たちの役目だ。」
無言で首を縦にかす年にこれ以上の説明は不要であることを察し、二人の元へと駆ける。
塡「お前ら二人には煉獄蝶の炎を弱らせる役をやってもらう。やり方は分かるな?」
舞「水単じゃ蒸発させられるから異を混ぜる?」
塡「それだと作や威力が格段に落ちる。『水力アクア』の使用後に『屬弾丸生エレメンタルバレット』で水屬の弾丸を生する。それらの高速連により奴らの炎を弱らせる。」
早口で説明を終わらせた塡は、橫目で満と煉獄蝶の様子を確認しながら「質問はあるか?」と、
舞「それはいいんだけど、二人はどうするの?」
塡「俺たちはトドメ役だ。お前たちが炎を弱らせたタイミングであいつらの核を破壊する。」
承「そんなに簡単に破壊できるの?」
塡「あいつらの核は魔素の塊の魔法鉱石だ。破壊方法はいくつかあるが、俺なら魔法鉱石の支配権を奪うことが出來る。そうすれば、煉獄蝶へのエネルギー供給源が無くなり、あいつらは炎だけでなくの再生すら困難になる。」
舞「あとは火力である満が砕するだけ?」
塡「そういう事だ。著弾を合図にき始める。弾は外すなよ。」
そう言い殘した満の元へと駆ける塡を視界から外し、二人のは自の手へと意識を集中させる。
舞「『水力アクア』」
承「『水力アクア』」
一人のに続き、隣に立つが同じ魔法を発していく景を確認した塡は、出來るだけ短く分かりやすい言葉を脳検索し、し前方で黒い塊を一にけている年に投げかける。
塡「満!俺が合図したら煉獄蝶に攻撃しろ!」
満「了解!」
作戦はだいぶ整ってきたのだが、現実的に見れば結構な綱渡りになってしまうことに気が付かないのは、やはり若さ故の慢心なのだろうか。
そもそも、舞や承が弾の生と著弾に失敗した場合どのようにして炎を弱めるのか、塡が魔法鉱石の支配権を奪えない場合はどうするのか、満の火力で核の破壊は可能なのか等の心配が殘る。
このだらけの作戦を実行するには大きく四つの壁を乗り越える必要がある。
中級魔法である『屬弾丸生エレメンタルバレット』の発を失敗せずに大量の弾を作り出すこと。
それらを高速回転させながら、正確な高速連をこなすこと。
魔法鉱石の支配権という不確定なものを奪い、さらに暴走させないように抑えること。
そして、き回る煉獄蝶のそれらをピンポイントで破壊すること。
しかし、一概に馬鹿げているとは言えず高速飛行が可能である煉獄蝶に追い回されるよりも、ここらで一か八かに出た方が敗退のリスクが大幅に下がる。
塡「功させてみせる。」
満「まだか?」
塡「もうし待て。」
し後方で魔法を発している達は、持ち前の魔點と繊細さを用いて數えるだけで眠ってしまいそうなほどの數の弾丸を生し、高速回転させるほどまでに準備が完了していた。
舞(あとは回転速度を落とさずに弾丸の後方部に噴出口を設置、魔點同士が常に起こしている剝離や分裂、反発のエネルギーを発させて、最大限のエネルギーで全弾を発する。)
言葉にしても満が聞けば頭のパンクを引き起こしてしまうほどの作をフローチャートのように単純化して並べ、細かな作を順番通りにこなしていく。
舞(噴出口の設置は完了したけど、報量が多すぎて頭が痛くなってきた。)
頭痛を引き起こすのは當然の反応である。
決してなくない細かな作を維持して次の作、維持して次の作といくつもの処理を同時にこなしているわけで、それは右手でピアノ、左手で料理、それぞれの足はバスドラムと洗濯、口ではハーモニカという様な作業を同時にこなしている事になる。
だが、舞の頭痛は直ぐに引くことになった。
冷靜に考えてしまえばすぐに弾き出せる答えだった。
そもそも二人で五つの作業をこなせばいいわけだ。
右手でピアノ、口でハーモニカ、足でバスドラム、そしてもう一人が洗濯と料理をこなせば良い。
そこまで至らなかったのはやはり単純な経験不足だろう。
だが、短時間の対応を可能にしたのは天才ゆえの所業ということでもある。
承が噴出口の設置と発を擔當し、舞が弾丸の生と作を擔當する。
それにより、弾數は増加し回転速度は上昇することに加え、発に使用するエネルギーは格段に増えた。
舞「・・・これで限界かも。」
承「いつでも発出來るよ。」
アイコンタクトで行われた合図により、高速回転する弾丸は音を響かせながら音速を超える速さでソニックウェーブを起こし、ヒラヒラと舞い続ける三びきの蝶に著弾した。
次々と弾丸が煉獄蝶を抜き、炎に加えしのを抉りとっていく。
徐々に弱々しくなる炎を確認し、全を雑に魔點で覆った塡は全弾が著弾したタイミングで一匹の煉獄蝶に飛び移る。
塡「」
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