《ひねくれ魔師が天才魔法使いよりも強い件について》第78話 不変
風呂敷を持った年は、常に監視されている上に、外出止命令まで出された可哀想な年のためにお見舞いに來ていた。
ただ、お見舞いと言っても本當にただのお見舞いのため、見舞いの品などはなく、ただただ、元気か?と聞きに來るぐらいのお見舞いである。
何度も見たことがある道を歩き、大した時間も立たない頃に可哀想な年の家に著いた。
特徴もないこじんまりとした家だが、これも立派な家である。
いつもならチャイムなど鳴らさずに侵するところだが、監視の目にっているため一応チャイムを鳴らして自分の訪問を知らせる。
秋「見舞いに來たぞ。早く開けろ。」
戦「・・・・・・・・・頼んでないよ。」
秋「いいから開けろ。」
戦「強引だなぁ。」
家の中からドタドタと足音が聞こえ、玄関前で止まったことを音が知らせる。
戦「・・・・・・一応スキャンを」
秋「いらないだろ。」
戦「念の為だよ。」
秋「いいから開けろって。」
魔法が蔓延っている世界では、もちろん犯罪に魔法が使用される事がある。
というか、魔法使用しないという選択肢はないだろう。
だが、それでも、和群國がある程度の平和を保っていられるのは、一重に魔警のおということもあるだろうが、セキュリティも魔法の発達に連れて上がってからということもあるだろう。
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変トランスなどで親族のフリをして、家に侵したり、創造クリエイト系の魔法でカードキーや舊式の鍵を作ったり、はたまた、力ずくで玄関の扉を破壊したりなど、犯罪のやり方は無限にある。
それを踏まえた上でセキュリティを上昇させるということは、対魔法のセキュリティを電子制で再現する必要があった。
今となっては珍しくもない事だが、ざっと十數年前までは畫期的な発明として世に注目されていたのである。
そして、可哀想な年が秋にかけようとしていたスキャンは秋が魔法を使用していないかを調べるためのものである。
知っての通り秋が使える魔法は自の『自己的式オリジナルマジック』のみであり、人類の九割が発達している魔點を司るでの作ではなく、五をフル活させ、手足を振り回ることによって発させるものである。
故に、スキャンの必要は無いと秋は主張するが、そもそも秋に化けている可能があるからスキャンの必要があるのだが、それを理解出來るほど、秋の頭は優秀では無かった。
秋「・・・まだか?」
戦「・・・・・・いいよ。」
玄関での攻防が數十秒続いたところで、やっと扉が開く。
秋「遅い。」
戦「うるさいなぁ、防犯意識は大事だよ。」
秋「お前は心配すぎる。」
戦「秋が大雑把過ぎるんだよ。」
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まるで自分の家のように歩いていく秋を気にも止めない戦は、慣れた手つきでお茶とお菓子のようなものを自室に持っていく。
秋「今日はいらないぞ。」
戦「珍しいね、予定があるの?」
秋「あぁ、叔父さんの家に行かなくては行けないからな。」
戦「ここから近かったっけ?」
秋「真反対の方向だな。」
戦「じゃあ何で來たんだよ。」
秋「可哀想な友人のためと、これだ。」
風呂敷から取り出した四つ折りにしてある紙をヒラヒラさせながら秋は話を続ける。
秋「お前宛てだ、ラブレターではないが間違いなく後回しにしない方がいいだろうな。」
戦「余計なお世話だよ。」
し面倒くさそうに紙をけ取った戦は、今の時代に舊式の紙を使うなんて、と疑問に思いながらも紙を開く。
戦「これって・・・」
秋「やるなら早々に済ませた方がいいだろうな。なんせ、舊式の紙をお前が持っているという事実が危うい。」
戦「・・・秋ってそんなに事に注意深い人だっけ?」
秋「俺だってそれくらい分かる。俺の頭はしだけ、事を知らないらしいがな。」
何カッコつけてんだかとでも言いたそうに舊式の紙を機の上に置いた戦は、々の疑いを隠しきれない中、ミスをすることなく見た事もない魔法陣をゆっくりと発させる。
戦「・・・秋」
秋「あぁ、そろそろ俺はお暇しようか。また寂しくなったら呼べ。」
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友人からの返事を待つことなく部屋を出た秋は、手が空いた狀態で友人の家を出る。
秋「さてと、軽になったし走るとするか。」
軽くその場で跳ねた後、ゆっくりと腰を落とし地面と上半が平行になりかけた途端、秋の下半が発し、全が前進した。
戦「これでいいのかな。」
紙に書かれた手順通りに進めた戦は、何が起こっているのかも分からない狀態で魔法陣に描かれた魔を発させる。
紙に書かれていることが正しければ、発は済んでいるはずだが、見知らぬ魔法というのは結構疑わしいもので、イマイチ逃げられるという実がわかなかった。
戦「ほんとにいいのかなぁ。」
などと言いつつ玄関のドアまで來てしまっている戦なのだが、手にかけたドアのロックを外す勇気が出ずに十數秒、固まってしまっていた。
塡が渡した式はそう長い時間続くものではなく、殘りの制限時間ももって3分というところだろう。
戦「・・・・・・」
ただ、手をかざすという簡単な様式のドアにもかかわらず、その作を行う勇気が戦には無かった。
だからこそだったのだろう、▓▓▓▓▓▓▓▓のは。
?「お前は何にも変わらねぇなぁ。」
戦「?!」
?「全くもって変わらない。お前はいつまでもお前のままだ。」
戦「・・・なんで、▓▓▓▓▓▓▓▓が。」
?「黙れ。」
直後、ドアのロックが解除され、戦のは指定されている地下街口へと走り去っていった。
もちろん、塡の式が発しているため、見張りの人間にはバレていない。
予め仕掛けておいたアラーム式トラップが鳴り響いているというのに、全くの見向きもせずに、ただただ、何かを包んだ風呂敷だけが殘った部屋を眺めているだけだった。
路地裏にて
舊式の紙に指示されている地下街への口は意外にも整備されており、ジメジメした空気が漂っていたりなんかはしなかった。
?「ここか。」
戦「ホントに行くのかよ。」
?「何だ喋れたのか。」
戦「まだ使ってないから。」
?「ま、どうでもいい。罠だったら罠で返り討ちにしてやればいいだろう。」
戦「どうだか。」
文句を言いながらも、ゆっくりと階段を降りていく戦の背中はどこか得の知れない気持ち悪さがあり、同時に不気味さすらじさせてきた。
地下街にて
?「よう。」
通路にって、間もなく見知らぬ長の男が聲をかけてきた。
戦「貴方は、」
?「それは後々話す、著いてこい。」
しっかりと整備がされ、地上とそう変わらないであろう明るさの通路をゆっくりと進んでいく。
戦「・・・」
?「・・・ここら辺でいいだろう。」
幾度か角を曲がった後に、長の男の姿がみるみる変わっていった。
簡潔に言うと小さくなっていったのだ。
戦「お前・・・」
塡「ふぅ、結構疲れるんだな。」
しっかりと変が解け、元のサイズに戻った塡は移用電子機の前には行かずに非常階段の方へと向かう。
通常、地下街とは、階段を降りた後に決まった區畫に行くための移用電子機に乗り、街へと降りる。
無論、移用電子機が何らかの理由で故障、または使えない時に地下と地上を昇り降りするために非常用の移手段が必要になる。
魔法技が発展した現代では『飛行する大盤フライ・リフト』と呼ばれるが主に使用されているのだが、都市から離れた場合、高い技を求められる『飛行する大盤フライ・リフト』を使用するよりも、舊式の移用電子機やさらに舊式の階段を使う方が効率もよく、大した費用もかからない。
詰まるところ田舎には『飛行する大盤フライ・リフト』は無いということである。
それがないから何なんだと言う話なのだが、それが大ありなのである。
『飛行する大盤フライ・リフト』には顔認証、魔點認証、指紋認証、靴裏認証などなど様々な認証裝置が設置されており、言うなれば乗った犯罪者は絶対に逃げられないようになっているものである。
もちろん、移用電子機や非常階段にもそのような裝置はあるのだが、移用電子機や非常階段で使われているのはあくまでも舊式の裝置である。
つまり、泥を被れば顔認証には引っかからないし、手袋をはめれば指紋は認証されない、削れた靴裏を算出する裝置も無いため、予め削っておけば靴裏で特定されることはない。
塡(ただまぁ、魔點認証はどう頑張っても誤魔化せない。から魔點を無くしてしまえば空気中に気化した魔點、通稱魔素が元で特定される。かと言ってそのまま通れば魔點認証で特定されるか、このままここに居てもいいが、生スキャンなんかかけられれば一瞬で見つかってしまう。)
戦「それで、なんの用?」
認証を躱すために思考を巡らせていたところで、橫槍を刺してきた戦は狀況の理解が追いつかない中で必死に現狀を整理しようとしていた。
塡「・・・まぁここでもいいだろう。単刀直に言うぞ、同萬時徳はどこだ。」
戦「・・・徳探してどうするの?」
塡「お前には関係ない。さっさと話せ。徳はどこだ。」
戦「知らない。」
塡「・・・そうか、あくまで話すつもりはないんだな。」
ゆっくりと腰を落とした塡は空中に手をかざしナイフが現れたことを確認し、戦闘制にる。
戦「ほ、ほんとに知らないんだってば!」
塡「悪いな戦、俺はそこまでお人好しじゃないんだよ。」
直後、で発させたエネルギーを足へと流し、地面にぶつける事で一歩目から最高速度をたたき出すことが出來る技を使い、戦との短い距離を一気に詰めた塡は容赦なく左手のナイフを振る。
だが、ナイフが戦に刺さることも、空を斬ることもなく、あっさりと手首を摑まれて攻撃が失敗する。
?「仕方のねぇやつだ。」
塡「?!」
?「よぉはじめましてかな?」
塡「いや、一度だけ會ったことがある。」
そう、今回の事件の発端、人類と対等の位置に居たはずのゴブリン達が一斉に暴れだした事件。
塡「『ゴブリン騒』でお前は舞を連れてた。」
?「あぁ、あの時はブーストしてたからな。」
塡「影を纏っていた。」
?「あれはこいつの自己的式オリジナルマジックだ。ブーストは別だ。」
塡「で、戦はどこだ。」
戦「俺も戦なんだけどな。」
淡々と話す戦の雰囲気はいつもとは違い、塡の頭に一つの単語を思い浮かばせる。
塡「多重人格。」
戦「へぇ分かるのか。」
塡「勘だ。」
戦「で、聞きたいことがあるんだろ、答えてやる。」
余裕な調子で壁に持たれかかった戦は、し上から目線で塡に本題をぶつける。
塡「徳の場所は」
戦「知らない。というか、徳が何処にいるか知りたいのはこっちだしな。」
塡「じゃあ徳の目的は?」
戦「それも知らない。だが、ヒントなら渡せる。聞くか?」
塡「何でもいい、聞かせろ。」
戦「んじゃ話してやる。」
相変わらず上から目線の戦は、「まぁ話は下手だから自分で読み取れ」と言う始まりからヒントを話し始める。
戦「俺、というかこいつだな。こいつは自分の自己的式オリジナルマジックを妙に嫌っていてな。長くなるから簡潔に話すが、まぁ発すれば発中の記憶が無くなるらしい。詳しい事はこいつから聞け。んでもって、そんな所に同萬時徳が來た。奴が言うには自己的式オリジナルマジックを消す、というか書き換える方法があるらしくてな、手伝わないか?と言われた
。」
塡「怪しいとは思わなかったのか?」
単純な疑問に「もちろん疑ったがな」と話を続ける。
戦言うには、最初に自分が試した後で、実行するかしないかを決めていいということだった。
もちろん、偽裝工作はするし、もしそれが破られたとしても自分が罪を被るから心配要らないとまでも言われ、信用するというよりも、まぁ大丈夫だろうという安心が勝ってしまったらしい。
安易な選択だとは思うが戦がどれだけ自の自己的式オリジナルマジックに悩んでいたかなど、検討も付かないため、そこは責めないでおこうと塡は決斷を下した。
塡「で、その方法ってのは?」
戦「それも詳しくは知らないが、まぁ間違いなく藤原舞がキーだろうな。」
塡「・・・田中はどうやって容疑者側に引き込んだ?」
戦「知らない。俺にはあいつが手伝うなんて聞かされていなかったしな。」
大した進歩があるわけでもなく、手がかりが何も摑めない。
自己的式オリジナルマジックと舞になんの繋がりがあるかは分からないし、それ以上に、何故徳が自の自己的式オリジナルマジックを改変させようとしているのかさえも分からない。
塡「手がかり無しか。」
戦「・・・場所について知らないと言ったが、半分噓だ。」
塡「あ?」
戦「正確な場所は分からなくても、推理は出來る。前回のゴブリン騒、そして今回、同萬時徳が倉庫地帯で暴れることによって、俺達への警備が強まった。両事件には共通點があるはずだ。例えば場所、例えば人、例えば狀況、例えば時間帯。」
塡「・・・」
戦「じゃあ俺はそろそろお暇させてもらうぜ。見つかると面倒な事になっちまう。」
塡「待て」
足早に出口に向かう戦に一つの塊を投げる。
塡「使え、お前が見つかれば俺も見つかる可能がある。」
戦「・・・素直じゃねぇな。」
幻の魔法陣が描かれた紙は、その発時間を大幅に広げる為の魔道と共に、戦の手に渡された。
戦「じゃあな。」
塡「・・・」
長い通路を歩いていく戦の姿は、角を曲がることで塡の視界から消え去った。
塡「・・・・・・何やってんだろうな、俺。」
すぐに見つかるかもしれない場所で座り込んだ塡は、そのまま十數分かなかった。
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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