《神々に育てられた人の子は最強です》面白い出會い
ネルは、口元をひきつかせている。恐らくそれは、俺がネルと一緒に行う修行のことを考えて笑っていることがわかっているからだろう。
その前に、俺がどうやってここに來れたか、それは簡単だ。
俺は、ネル達が敵を次々と倒していくのを盤上の地図ボードマップで観戦していた。
そして、全員か倒れたのと同時に、菜や雫にやったのと同様、盤上の地図ボードマップでネル達に専用のピンを指しそれを【ロックオン】のスキルを使い、転移したのだ。
「し、シンヤ、どうやってここに?というか、けなかったんじゃないの?」
「あれぐらいの直は、すぐに適応できる。それよりネル、今回はあまりけなかったな」
「うっ……」
「修行、楽しみにしてろよ」
ああ、ネルの顔がどんどん俯いていく。
そんなに怖いのか。俺と一緒に行う修行が……。
「まあ、そんなことよりも」
俺はパチンッと指を鳴らす。すると、多くの人を閉じ込めていた鉄格子が一瞬で、全て綺麗に切斷された。
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それを見て、鉄格子の中にいた人達が大きく目を見開いた。
「ほら、ネルは異種族の人達に指を渡してやってくれ。ハクとルナはネルの手伝いだ」
「う、うん」
「わかった!」
「了解です!」
ハクとルナはやけに張り切っている。この場所を出たら、褒めてやらないとな。
俺はそう思い、捕まっていた人達を見回した。
全員にアリアの所にいた子供たちと同じ、奴隷に付ける首が付いている。
ネル達にお願いされ、警戒心MAXで俺たちのことを観察しながら、何度も暴力行為を働こうとしたり、恐怖に顔を染め発狂したりと々あった。しかし、こちらが必死にお願いしていることがわかったのか、渋々【隠隠の指】をけ取る異種族の人達。
そして、【隠隠の指】を指に嵌めた時、周りから、自分の容姿が人間になっていることがわかり驚いているようだ。
「さて、こんな場所からさっさと出よう」
俺は地魔法で天井の土を作し、口のように地上までを掘り進める。その際に落ちてくる土は、重力魔法を使い上へ飛ばしている。
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そして、進んで行くうちに、薄いが何本もの線となって、差し込んでくる。
ついに全ての土を掘り終わるが、空のであまり外が見えない。
俺は全員の足下に、巨大な風の渦を作り出し、みんなが乗れるようにして空へ飛んだ。
上へ登って行くにつれ、は増していく。なので、自然と目を閉じていく。そして、そんな俺たちを出迎えたのは、雲一つ無いしい青空だった。
地面に著地するやいなや、異種族達はすぐに俺たちから距離をとる。まだ、しっかりと信頼されていないみたいだ。
「さて、出完了。これから、あんた達はどうする?一応、いい宿を知っているんだけど。よかったら教えるよ?」
俺は異種族の人達に話しかける。すると、話を向けられた異種族の人達は、突然のことにビクッと反応した。
「ど、どういうつもりだ」
「ん?」
「どういうつもりで、俺たち異種族を助けた!」
聲を荒らげながら言ったその男は、顔を怒りに染め、赤くなっていた。そして、その男に付いている牛耳も、白から赤くなっている。
は大きく、筋が沢山ついている。恐らく、ここにいる異種族の中では、かなり強いほうだろう。
そんな男の怒鳴り聲に反応したハクとルナは、キッと男を睨みつけ、男はたじろいでしまう。
俺は、二人をなだめ男の質問に答えた。
「どういうつもりも何も、異種族の人達を守るって決めてるんだ」
「は?」
俺がそう言うと、男の他に、その場にいた殆どの人がそのような間抜けな顔をしていた。
「だからもう一度聞く。いい宿を知っているんだが、教えようか?」
俺はマフラー越しに、笑ってそう聞いた。
「し、信じられるか!!」
だが、男はそんな俺の言葉を斷った。
そして、その言葉からは先程以上の怒りをじた。
男の大きな聲に、今度はハクとルナがたじろいでしまう。
「俺たちはさっきそこの三人の子供が倒した奴らに、そう言われてついてきた!そして、あんなざまだ!」
男の怒りはどんどん増していき、白かったも赤に染まっていく。
「それに、一緒に捕まった達だって………。それなのに俺たちは、 俺たちは………。もう絶対に信じねぇ!!俺たちは優しすぎたんだ!」
その男の言葉に參加し、他にいる異種族の人達、いや、正確に言えば、獣人とエルフもび出す。
「そうだ!俺たちは優しすぎた!」「人間なんて信じられるか!」「俺たちはてめぇら人間の遊び道じゃねぇんだ!」
ますます増える憎しみと怒りの怒號。響き渡るその言葉には、今までや今回捕まった時にけ、自分や仲間達が味わった迫害や屈辱、侮辱などがじられた。
そして怒りは収まることはなく、一緒に捕まっていた人間に手をばそうとする。
人間たちは異種族の人達からハッキリと表れる、思いをじ取り、足を引きずりながら後ろへと下がっていく。
そして、その怒りはついに新しいスキルを獲得する『キー』となったようだ。
獣人たちの容姿が変わっていく。
獣人の特徴の耳と尾が巨大化し、からは獣のがもうもうと生えてくる。全は真っ赤に染まり、瞳には怒り以外何も宿っていない。
このスキルは、
『狂化バーサーカー』
それはただ怒りというにを任せ、己の全てを捧げて通常の三倍の力を得るというスキル。考えることができず、冷靜さを失わせるスキル。
獣人は元々人間よりも能力が高く、接近戦などに適しているをしている。それが、三倍の力となると、S、いやSSランク冒険者の実力に屆くだろう。
しかし、このスキルには欠點がある。
それは発開始から30分しか使えないこと。そして、発時にはが激痛に襲われ、終了時には発時の激痛が一日中襲いかかるのだ。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァァァァァァアア!!!」
激痛がの中を走り回っているようだ。俺はその痛みを味わったことはないが、どれだけのものか、このび聲が教えてくれる。
この聲の大きさは凄まじく、上空を飛んでいた鳥さえもいなくなっていしまった。
そんな中、獣人族の人達がんでいる間、エルフの人達の魔力が発的に膨れ上がった。
あれは、
『魔吸化』
獣人族の狂化バーサーカーとは違い、冷靜さを保ちながらエルフ族が得意とする魔法の源である魔力を、空気中から得る速さを數倍にするという技。
そう、これはスキルではなく技・・なのだ。
スキルでもなんでもない、ただの技。
しかし、それを習得するのにどれだけの時間を費やしたかはわからない。恐らく人間は一生かけても習得することはできないだろう。
すると、エルフたちが詠唱を唱え始める。
『自然を巡り旅ゆく風よ、今ここに集まりて、全てをなぎ倒す嵐となれ、嵐の弾ストームインパクト』
エルフたちの詠唱が終わると、上空に巨大な風が吹き荒れ、球の型となって集まっていく。
嵐の弾ストームインパクトは集まり続けた巨大な風が空から地面に墮ち、地面に當たった瞬間、集まっていた風が一気に散する魔法だ。
しかし、狂化バーサーカーに嵐の弾ストームインパクトか、こんな所で使うとかなりの被害が出るな。
その前に、この場を治めよう。そのためには、この人達にちゃんと見せないとな。まだ狂化バーサーカーと嵐の弾ストームインパクトはちゃんと発していないし、今しかないな。
俺はそう思い、まだ地下に居た人達を風魔法でこちらに運んだ。
その人達を見た異種族の人達は、魔法が消え、スキルが発しなくなり、徐々に元の狀態に戻った。
そして、目から涙が溢れ、地面に膝をつき、今度は泣きぶ。激痛でのびではなく、それは喜びから発せられるびなのだろう。
俺が運んできたのは、この人達と一緒に捕まっていた達だった。
妻、娘、姉、妹、人。
多くの人がこの類の人だった。
互いに喜びの涙を流し、互いのをれ合い抱きしめ合い、確かめ合って抑えきれないがれ出した。
「あ、あんた……これはどういうことなんだ……?」
「あんた達がいた階には、もう一つ隠された階があったんだ。そこでこの達を見つけて、傷などを全て癒した。ただそれだけだ」
男達は達にそれは本當か、という視線を向け、達は笑顔で涙を流しながら頷いた。
「あ、ありがとう……本當にありがとう……」
「いいよ、これぐらい」
先程までの怒り、憎しみといったはなく、ただただ謝というものがじ取れた。
「さて、さっきの続きだ。いい宿を知っているんだ、教えようか?」
俺はもう一度聞き直す。
手を前に出し、YESと答えた時にこの手を摑めというように。
「あ、あんたの言っていることが、本當なら聞かせてくれ」
「わかった」
そして異種族の人達は、俺の手を摑んだ。
それから、異種族の人達に近づき、耳を寄せてもらう。
そして、異種族の他に捕まっていた人間に聞こえないように、小さな聲で言う。
「いいか、ルミナ王國で『異種族の集い』という宿がある。その名前を思い浮かべ、そして願え。それが、その宿に行く方法だ」
「そ、それは本當なんだな」
「ああ、それと」
俺は無限収納インベントリから、金貨30枚を取り出し、その全てを牛男の手を取り渡す。
そのついでに、首を全員から外しておいた。
すると、いきなり金貨30枚を渡されたからか、それとも首がいきなり外れたからか、驚きの表を見せる。
「こ、これは……」
「いい、それらは全部あんた達にやる。今は一文無しみたいだしな」
「あ、ありがとう……」
「よし、じゃあ俺が教えた通りにしろよ」
俺は今いる場所から一歩下がる。
「ほ、本當に、ありがとう……」
ここにいる多くの異種族の人達がそう言う。
そして、その人達の足元に魔法陣が現れる。これは『異種族の集い』に繋がる転移魔法陣だろう。
異種族の人達は、最後まで涙を流しこちらに手を振っての中に消えていった。
さて、異種族の人達はちゃんと行けたようだし、次はこっちだな。
俺は先程までいた異種族の人達とは別の場所を見る。
そこには口と目を大きく開けて、驚きの表を見せる人間達だった。
「えーと皆さん、今見たこと聞いたこと緒にしてくれるか忘れてくれたら嬉しいな………?」
そう言いながらほんのし殺気を向けた。
その殺気に反応し、名も知らない人間達は後ずさる。
これは脅しだな。
まぁそんなことよりも、面白い人が捕まっているな。
俺はここに來た時、捕まっている人を鑑定しておいた。そこで、面白いのが二人いたのだ。
俺はその二人に近づいていく。
二人は、警戒を一切しないで、ニコッと無邪気な笑顔をしている。
俺は片膝をついてその二人の顔を見上げた。
雙子のようだ。容姿がそっくりで見間違えるかもしれない。
「お初にお目にかかります。クルウェント王國のケルビン王子、マミー王」
二人の顔は先程以上に笑っていた。見た目通り子供だな。どうやって捕まったのか、どうしてこんな場所にいるのか謎だ。
そう、この二人は俺たちが向かっている西の先にある國、クルウェント王國の王族だったのだ。
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