《転生屋の珍客共〜最強の吸鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜》第4話 気弱な悪魔
まさか死神が弟子になるとは思わなかった。どうやら不死の存在に憧れているらしい。
代われるものなら代わってやりたいが。
「それにしてもリルフィーのやつ遅いな」
「多分ベルを探してるんですよ。あの子、仕事はきちんとこなすんですけど他人と関わろうとしないから隠れてるんです」
「隠れてる? それでこんなに時間がかかってるのか。それじゃあ俺も探すのを手伝ってやるとするか」
「では私もついて行きます師匠」
「い、いや一人で十分だ。リルフィーと隠れている奴の気配は既にじ取れている」
この転生屋の部を知らなくともそれで事足りる。別に初めての弟子に戸っているわけではない。
「そうですか……。ではお気をつけて」
さて、まずはリルフィーだ。あんなに勢い良く行ったがどうやら何処に隠れているか見當もついていないようで同じところをグルグルと回っている。
「稽だな」
「ルイン、何でここに來てるのよ」
話しかけるとリルフィーは愕然とした表を浮かべる。走り回っていたようで汗で服が濡れている。
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「何時まで経っても戻ってこないからな」
「あともうしで見つけるところだったのよ。結構絞られてきてるんだから」
「必要ない。お前が探している奴はここにいる」
ルインが近くにある金庫の扉を開けるとそこには黒髪のが頭を抱えて隠れていた。
「ふ、ふぇ〜〜」
「あ! そこにいたのね。まあ、わかってたけどね」
噓をつけ。散々ここをグルグルと回っていた癖に。まあ、それを言っても話がこじれるだけだし、そういうことにしておこう。
「それでこいつも店員なのか隨分と小さいが……」
しゃがんでいるせいなのかと思ったが、実際に子どものように小さい。てというか子どもだな。
「そうよ。ほら、観念して出てきなさい」
力盡くで引っ張り出されたは頭に乗っかっている小さな黃金の王冠を大事そうに抑えながらルインの方を見つめている。
「本當にここはんな奴が揃っているな。まさか死神の次は悪魔とは」
「わ、私が悪魔だって何でわかったんですか〜」
「悪魔とは何度か會っていてな。そいつらと同じ気配がした」
アズリエの場合、神は気配が人間と似ていて區別がつかなかったから気づけなかったが悪魔は獨特で分かりやすい。
しかし、こんなビクビクしているが悪魔とはーー普通、悪魔は我儘で傍若無人のはずだが。
「ご、ごめんなさい」
こんな大人しい悪魔は初めて見た。人間の子供ではあるまいし。
「別に謝る必要はないだろ」
「こいつはそういう奴なのよ。ほら、自己紹介しなさいよ」
「え〜と、ベルです。悪魔です。よ、よろしくお願いします」
「ああ、俺はカレイド・ノスフェラトゥーグ・ルイン。ルインと呼んでくれ。それでリルフィー、こいつが最後の店員か」
「そうよ。この転生屋にいるのはこれで全員、後は神様だけどそれは會った時にしといて」
「そうしよう。しかし、あの死神とこの悪魔の仕事は何なんだ?」
「アズリエは死の処理、ベルは魂の処理をしてるの」
「なるほど、納得の仕事だな。しかし、俺の手伝えることはあるのか」
「う〜ん、それは本人たちに聞いて回ってよ。正直、自分の仕事で手一杯でその辺は分かんないから。それじゃあ私は今日中に終わらせないといけない仕事あるから」
また嵐のように去るリルフィー。
これからどうしたものか。気配を辿れば迷うことはないが、一どうしたものか。アズリエだと師匠、師匠とうるさいからな。
となると消去法でこいつに聞くしかあるまい。
「おい、貴様」
「ひぇ⁉︎ すいません、すいません」
「だからどうして謝る? 俺は仕事のことを教えてしいんだ。手伝えることがあるなら手伝いたいんだ」
用心棒ということになっているが、ここに誰かが攻め込んで來るというのはまずないから仕事がないに等しい。
これから世話になるというのに仕事がないというのは忍びない。何か手伝いは出來ないかと思ったのだが、それを馬鹿にするような甲高い聲が響いた。
「ケッ、それが人にモノを頼む態度かよ」 
聲の正は小さな蟲だった。目を凝らさないと見つけられないほど小さな存在は何故か態度だけは大きい。
「何だこの生意気な蠅は」
「蠅じゃねえ。ビュート様だ。言葉遣いには気をつけろよ新人」
「す、すいません。私の使い魔です」
使い魔か。そういえばあの悪魔にもいたな。あいつのはこんなに口の悪い奴ではなかったが。
主が大人しいから代わりに使い魔の方が悪魔らしくなってしまったのか。
「ならしっかり捕まえておけ」
人生の大先輩を新人呼ばわりとはいい度をしている。個人的には気にったがその蠅がいては話が進みそうにない。
「は、はい。え〜とお仕事のことでしたよね。私は説明が下手なのでアズリエさんから聞いた方が良いと思いますけど……」
「死と魂とじゃあ同じ処理でも違うだろう。それに貴様のことも知りたいしな」
「盛ってんじゃねえぞ新人! ロリコンかよ」
何処からともなく出現した使い魔の蠅はまた甲高い聲でルインを煽る。
「誰がロリコンだ。おい、そいつは二度と出てこれないようにしておけ」
空間の狹間にでも放り捨ててやりたいところだが、それは流石に可哀想だからやめておこう。
數分費やして使い魔であるビュートを説得すると二人は仕事場へと向かった。
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