《転生屋の珍客共〜最強の吸鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜》第11話 珍客からの無理難題

「元の世界にだと?」

「私にはやり殘した事がある。もし葉うのならそれをし遂げたい」

「あんな無理難題を押し付けられていい様に利用されたというのに懲りない奴だな」

俺が使った能力でここに來る前の記憶を追験してみたが同せざるを得ないものだった。

ちなみにこの能力、便利なのだが追験をする際は痛みも験してしまうのであまり使いたくはない。不死でも痛みをじないという訳ではないのだ。

「それでも私はあの世界に平和をもたらしたい」

「勇者としての責任か。一度死にかけたというのにまだやるというのか」

個人的には死にかけるという経験をしているのが羨ましいが、それは特殊な癖があるという事ではない。

「まだあの人に恩を返せていませんので」

「止めはしないが実はここで働く事になったのはつい最近でな。可能かどうか確認して來るのでし待っていてくれ」

同じ世界となると転生するのでまた勇者としての力を有しているのかというのは定かではないが、まず前提としてのそれが許されるのかどうかが問題だ。

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この転生屋の店長であるリルフィーならその辺を知しているのではと席を外して聞きに行こうとしたが、その瞬間にとある男が出現した。

「やあ、突然ごめんね。僕はここの責任者、バルドル。一応神様やってま〜す」

いきなりの事でシュエルは驚きの表を浮かべるが、驚きの連続で慣れたのかすぐに元の無想な顔に戻った。

「丁度いい。どうせ話は聞いていたんだろ。同じ世界に転生させるというのは可能か?」

「普通は駄目だよ。けど彼のいた世界を統括している神が厄介事を起こしてね。だから今回だけ特別に僕が許そう」

「上から目線というのが癪だが可能ならその方向でいこう。しかし、厄介事とは何だ」

いくらこいつが飄々とした奴でも腐っても神だ。自分で決めた規則を簡単に破ったりはしないはず。

となるとその厄介事とやらの容は気になる。

「その事でわざわざここに來たんだ。シュエルちゃん。聖杯について教えてくれない?」

「聖杯……あまり思い出したくないが私たちの世界では昔から語り継がれる伝説だ。王族がひた隠しにしていたからほとんどが実在しているとは知らない」

「それはいつからあるか分かる?」

「伝説は大昔からある。戦爭が始まる前からあったかもしれない」

「あの戦爭ばかりしている世界となるとそれは隨分と前だね。そうかそれは隨分と長い間誤魔化されていたみたいだ」

「おい、何一人で納得してやがる。俺たちにも分かるように説明をしろ」

「勿論、説明するよ。特に彼にはこれを聞いた上で本當に元の世界に転生するかどうか決めてほしい」

いつになく真剣なバルドル。

それにシュエルは頷く。

「分かった。教えて」

「実は聖杯というのは作り出すのに許可が必要となっているんだけどシュエルちゃんがいた世界にはその許可は出されていないんだ」

「無斷で聖杯を自分の作り出した世界に送ったというのか。一そんな事にどんな得がある」

「それは本人に聞いてみないと何とも。でもこれは許されざる行為だ。だからこれから証拠を抑えてその神を裁こうと思っている」

「じゃあ、転生させるのはその神をやってからか」

神がいなくなった世界がどうなるかなど知らないが、そんな問題のある世界に転生させるのはあまりにも酷だ。

「だね。流石にお客様をいざこざに巻き込む訳にはいかないから」

と気を利かせたのだがシュエルは驚きの一言を発した。

「待って。その厄介事、私も巻き込んで」

「な、何を言っているんだいシュエルちゃん。いくら勇者だからって相手は神だからここは僕らに任せてくれないかな」

「私では役に立てないか?」

「いや、役に立てる立てないの問題じゃなくてね……」

流石のバルドルもこれには戸う。

黙って困った姿を見ているのは面白そうだがここは彼に助け船を出すとしよう。

「いいではないか。証拠を抑えるという事は聖杯を確保するのだろ? だったら彼がいた方が何かと良いはずだが」

「はぁ〜、僕は知らないからね。それじゃあ準備しといて。僕もみんながその世界に行けるようにしておくから」

こうして俺の初仕事は勇者と共同で神を裁くお手伝いとなった。

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