《転生屋の珍客共〜最強の吸鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜》第22話 き出す者たち

ザックスが聖杯捜索作業に加わってからし経つと奧の方から一人の兵士が額に汗を流してダーバンの元へと駆けつけた。

「どうした何かあったのか?」

その様子から何か問題が発生したと判斷したダーバンはその兵士に小聲で話しかける。

「それが……」

兵士は息を整え、その容を耳打ちする。

「何⁉︎」

あまりにも信じ難い容でつい大聲を出してしまい、それにマクアスが反応し歩み寄って來た。

「騒がしいな。聖杯が見つかったのか?」

「いえ、それが申し上げにくいのですがザックス様が侵者に殺害されたと報告が」

「ザックスが死んだ……だと。敵の數は?」

「一人、とてつもなく強い者が暴れていると」

ここにいる一萬の兵士には武を常備裝備させているが疲労困憊で正直、使いものにならないと判斷しているダーバンはあの一騎當千の猛者であるザックスを倒した侵者を排除は出來ないだろうと確信している。

「つまりあのザックスが一騎打ちで負けたというのか。それほどまでの兵がハインツにいたとは」

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「嘆いても仕方のない。聖杯を奪われてはザックスに合わせる顔がないぞ。ここは々汚い手ではあるが二人で応戦するとしよう」

「ここの守りは良いのですか? どうせ侵者は隙をついて奇襲した卑劣な者。それなら私一人でも」

「仇を討ちたいというお前の気持ちは分かるが敵を軽視してはいけない。そもそもザックスが奇襲程度でやられる剣士ではないだろう」

それは長年、共に戦場を駆けて來た二人だからこそそれは良く理解している。だからこそ負けたという報告には驚きを隠せないでいる。

「そうでしたね。ではこの場の守りは任せるとしますダーバンさん。もし、我々に何かあった場合、後は頼みます」

「弱気な発言とはお前らしくないなネグリス」

「私が予想するに相手は聖剣の後継者。となると私も命を賭けなくては勝てませんので」

ネグリスのその一言には彼の決意が込められており、それを確認したマクアスは小さく頷き奧の方へと歩みを進めた。

「ダーバン指揮。我々はどうしましょう」

「どうするも何も現段階での最優先事項は侵者の排除だ。出來るだけ兵を集めろ。もし、あの二人まで亡くなられたらグラハグ帝國にとって大きな損害だ」

聖杯を手にすればーーという考えもあるがこのダーバンはそれを信じてはいない。何故なら彼が唯一信じているのは自分自だけなのだから。

それでも聖杯探しをしているのはそれが上からの命令だからだ。

「ですがネグリス様はこの場の防衛を指示していましたが、それは良いのですか?」

「あの連中に任せておけ。どうせ俺の手に負えないんだ。いざとなれば全責任を連中にりつけてやる」

「そ、それはあまりにも危険ですよ。あの方はこちらとしても有力な存在ですから」

それは言われなくても分かっている。だからこそ苛立ちを抑えられなくなってきた。

「だから自分が犠牲になれと? くだらん。あんな狂った奴よりも俺の方がよっぽど國の為に働ける。それよりお前は俺の指示に従っていればいいんだ。さっさとけ!」

に任せて吐き散らすと兵士は急いで來た方向とは違う道を走って行き、命令した本人は殘り二人となった三剣豪の後を追った。

「行った……わね」

そしてこの場に殘ったのは隠れてその會話を聞いていたアンネ。実は作戦とはルインが囮となってそこに聖杯の位置が分かるアンネが今のうちに捜索するという単純はものだった。

「三剣豪は俺が全てけよう事になったが文句は言うなよ」

肩に乗ったルインの分であるコウモリが皮を言うがアンネは首を橫に振ってそれに答えた。

「言わないわ。それじゃあ、道案お願い」

地図はあるが今、そこに敵がいるかいないかはコウモリの姿で誰にも怪しまれないこの狀態のルインが捜索するのが最適だ。

「承った。だが急ぐ事を進める。お前の言っていた一萬の兵、そして三剣豪だけでなくここにはまだ敵がいる事が判明した」

「さっき聞こえたやつね。まだ報告が屆いてきないからその前に見つけて戻るようにするわ」

この先からは必ずここに戻ってこないと帰れないようになっているが、迷路のようなこの鉱山の道を利用すれば會わずに済む。

その可能を信じ、彼は死地へと飛び込んだ。

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