《転生屋の珍客共〜最強の吸鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜》第32話 巨大な客
「最近は何だか順調ね。ずっとこんなじが続けばいいんだけど……ってルインはどうして落ち込んでるのよ」
「いや、店が順調なのは喜ばしい事だが個人的には俺を殺せる奴がいないのは殘念でな」
早々見つからないと覚悟はしていたが、こうもいないとなると今後に期待をしていくしかないが次の客は一どんな奴なのだろうか?
「知らないわよそんなの。そんな事ばっか言ってると仕事増やすからね」
と言ってリルフィーが扉を開けるとそこには巨大な怪がいた。
そのは堅牢な鱗で包まれ、その吐息はまるで炎のように熱く、その琥珀の瞳からは強烈な殺気がじられる。
いわゆるドラゴンという奴だ。
突然の事にリルフィーはぶでもなく、放心狀態となってその場に座り込んでしまった。
「大丈夫か?」
「だ、だめ。腰抜かしちゃったわよ」
「ごめんな。驚かすつもりはなかったんだけどよ」
「ドラゴン……か。これほど大きな個となるとそれなりに力のある者か」
「冷靜に分析する前に手を貸しなさいよ」
忘れていた。
餅をついているリルフィーにルインは手を貸して立ち上がらせる。そして彼はまるで何もなかったように腕を組む。
「しかし、どうする? この大きさでは店にる事は無理そうだが」
「その事なら問題ないぜ。この通り、人間の姿にもなれるからな」
瞬きするほどの時間でその巨を人間へと変貌した。有難いがとんだご都合主義だな、これは。
「出來るなら最初からその姿になってほしいわね」
「この姿だと本來の力が発揮出來ないし、々と面倒なんだ。それよりもここは招待狀にあった転生屋で間違いないんだよな」
「そうよ。あんたが今回の客ね。じゃあ、これから詳しい説明するわ」
「いや、必要ない。それよりも転生はし待ってくれ」
「どうして?」
「実は今、戦爭中なんだよ。人間との共存をむドラゴンと拒絶するドラゴンとでな。ちなみに俺は共存をむ方」
ニカッと笑い、無邪気な笑顔を見せるこの男。
最初は変な奴だと思ったが、戦爭が起こっているというのにこれ程余裕があるとは意外と大かもしれん。
「そう……確認してくるから待ってて」
リルフィーは端末を取り出してバルドルへ指示を仰ぐ。
それにしてもこの男、気さくな奴だが何か違和がある。これは何か隠し事をしている奴だ。んな奴を見てきた俺だからこそ分かる。
「俺の顔に何かついてるか? それともそんなにドラゴンが珍しいのか?」
ジロジロ見ていたせいで不思議に思われたようだ。ここで指摘をしても答えてくれるとは思えない。話を逸らして誤魔化すとしよう。
「いや、ドラゴンなら何度か見たことあるさ。戦ったことも。しかし、そいつらは人間には変できなくてな。ドラゴンにも世界によって違いがあるのだなと心していたのだ」
「ふ〜ん。よく分かんねえけどお前強いんだな。ドラゴンと戦って生き殘ってるなんて」
「生き殘ってるというより生き殘ってしまったというのが正しいがな」
こいつとは別のドラゴンに出會ったのはここへ來る前、能力で世界を放浪していた時だ。ドラゴンも俺を殺すには至らなかった。どうやら今回も外れのようだ。
「?」
ルインの意味深な発言にドラゴンの男は首を傾げる。そこにリルフィーは
「上から許可が下りたわよ。ただし監視つきだけど」
「それで大丈夫だ。よし、そうとなったら早速行くとするか‼︎」
姿を元へと戻し、二人を乗せてその大きくも頼もしい翼はためかせ大空へと羽ばたいた。
「ちょ、ちょっと! まだこっちの準備できてないのに〜〜〜」
「時間ないんだよ。それじゃあ、ちゃちゃっと元の世界に戻してくれ」
「だ〜か〜ら〜準備してないって言ったでしょ。今、転移能力を持ってるのはーー」
「いるぞ、ここに。セリエよりには劣るが力盡くで道を開けてやろう」
ここに來た時と同様にありったけの力で空間を歪めてを開ける。このは普段は何処へ続いているか分からないがこのドラゴンの記憶を読み取り、その世界を意識することで確実にそこへ転移することができる。
欠點はあの本のように一瞬というようにはいかないのと、道中に神を蝕まれるということだ。
後者の方は二人に黙っていよう。
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