《転生屋の珍客共〜最強の吸鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜》第33話 ドラゴンの世界
「はあ、何か疲れた。まだ準備できてないのにどうして勝手なことをしたのよ」
無事、ドラゴンの世界へと転移できたところでリルフィーはいつもの調子を取り戻す。
「客が困っていたら助ける。それが俺たちの役目だろ。ただそれを実行したまでだ」
「その心意気は買うけどこっちにも事が、あるの。でも折角來たのに戻るっていうのも癪だからこのまま続けるわよ」 
「それは助かるぜ。でも監視だけなんだろ。だったら安全な所でジッとしてくれてたら數日で終わらせてやる」
「そいつは心強い。ではお前の軍が優勢という事か」
「ああ、これから仲間に會わせてやるよ。あっと自己紹介し忘れてたぜ。俺はニッグだ。よろしくな」
「俺は不死の吸鬼、カレイド・ノスフェラトゥーグ・ルインだ」
「私は転生屋の店長をしてるリルフィーよ。この世界に害が及ぶことをしたらこいつが全力で止めるからね」
「おう、よろしく。んじゃあ、他の奴も紹介するからちゃんと捕まってろよ」
そう言うとニッグは更に速度をあげる。リルフィーは涙目で隣にいたルインのにしがみついて悲鳴をあげた。
到著したのはものの數分。
その數分でリルフィーはどっと疲れた顔になってしまったが、それは怒りに変えていつもの調子に戻る。
「一何なのよ! 私は高いところ苦手なんだから勘弁しなさいよ」
「ごめんごめん。もうしないって。それより紹介させてくれ。こいつらが俺の仲間たちだ」
彼らが拠點としているのは山に囲まれたところでそこにいくつかテントを張っていた。この先に敵の本拠地があるらしく、ここに戦力を集中させて機を伺って一気に攻める作戦らしい。
そして何十もいる(敵に気づかれないように人型となっている)ドラゴンたちの代表格である三人がニッグたちの元へと集まって來た。
「私はファフナー、指揮を任されている者だ。我々の邪魔をしないのならニッグに免じて歓迎しよう」
腰までびた白髪と鋭い目、中的な見た目をしているがニッグが言うには男らしい。ニッグとは昔からの付き合いでこれだけの軍は二人で集めたと言うのだから驚きだ。
「ぼ、僕はヨルムといいます。よろしくお願いします」
ファフナーとは打って変わって弱気な雰囲気を漂わせる薄緑の髪が特徴的な男……と思ったらこいつはらしい。全く、紛らわしい。
「ラドンだ。まあ、気軽に頼むわ」
片目を失った茶髪の男。戦闘経験は誰よりもあるらしく、小難しいことを考えるのは苦手らしいがそれを補って余りある力量の持ち主だとニッグが説明をしてくれた。
「とまあ、大はこんなじで後はラドンとかの兵を借りてこの先にいる拒絶派と戦爭してるってわけだ」
「ふ〜ん、それにしても數が思ったよりないけどこの戦爭ってそんなに規模が大きくないってこと?」
「我々ドラゴンには制約がある。いや、呪いというべきかな。まだ私たちが産まれるよりもずっと前の話だが人間たちが我々の力を恐れ、爭えないようなにしたんだ。だが我々のように突然変異でその影響をけない者が出てきた。ここにいるのはそういった者たちだ」
ファフナーが嫌味を含んだ説明をしてくれたおかげで今の狀況が良く分かった。
「大変なのだな。では相手も同じような連中ということか」
「は、はい。しかもあちらの長はその制約をなくせるという噂が……」
オドオドとしているがヨルムは発言すべき時は発言をしたが、その後はルインたちとし距離をとった。
「それで急いでいるのか」
長期戦に縺れ込めば有利なのは兵を補充できる相手側だ。こいつらの力量を疑っているわけではないが、戦爭に絶対などない。
善が勝つとは限らない。それはこのをもって経験している。
「良く分からんが兵はもうしで全員集まる。そうしたらもう終いよ」
「じゃあ、私たちは手を出さないから頑張ってね」
「おう! 任せとけ」
こうして今回はドラゴン同士の爭いを監視することとなった。ただ監視をして決著がつくのを待つだけの簡単な仕事になるはずだったが、意外な結末を迎えるとは思いもよらなかった。
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