今、この魔は何と言った？

俺のが目當てだと？　いや、それよりも何故俺の正を知っている。自己紹介をした覚えなどないぞ。

「ニヒヒ、このロニ様を甘く見てもらっては困るのだよ。と言っても知っているのは彼の事だけ。他の事はぜ〜んぜん」

「俺ので何をしようというのだ。利用されるのは好きではないのだがな」

特に魔となると自分の手を汚さずに他人を利用して目的を達する者が多い。利用された側はたまったものではないが魔は悪気なく、さもそれが當たり前かのようにやってのける。

「利用……いやいや、これは互いの為。このロニ様は々と研究してるんだけど大きな野があってそれは吸鬼くんのむ事に繋がるんじゃないのかにゃ？」

「俺のみか……。ふむ、面白い事を言うな。くらいならいくらでもくれてやる」

どれだけ流しても困らないのだからそれを譲渡するのは厭わない。

もし、それで死ねる方法が見つかれば儲けものだ。あまり期待出來ないかもしれないが。

「話が早くて助かるよ吸鬼くん。では……」

「ただし消えた客を一緒に探してもらおうか。そちらに心當たりがなくてもお前が原因である可能が高いのでな」

「渉か。ロニ様は忙しいのだがここは吸鬼くんの口車に乗ってあげるとしよう」

「は客が見つかってからだ。とりあえず、現場に行くとするか」

立ち上がり現場に赴こうとするとベルが服の袖を引っ張ってきた。その顔からは不安がじられる。

「だ、大丈夫なんですか？　相手は魔ですよ」

「それは重々承知している。だがここで追い返してもまた懲りもなく來るに決まっている。ならば早く終わらせてしまった方が今後の為というものだ」

そしてまた客探しをしなくてはいけなくなるのは面倒だ。いや、次はそれだけでは済まなくなるかもしれない。

「ですか……それならもう何も言いません」

穏やかな表を浮かべるベル。

そしてれ替わるようにアズリエが深刻な顔つきで他の人に聞こえないように小聲で話しかけてきた。

「師匠、し言い難いのですが今回の客、須藤 隼人さんなのですが死相が見られました」

それは彼がルインの前で初めて死神らしい一言を発した。

「ここに來る者は全員そうなのではないか？　転生をするのだから、むしろなくては困るだろ」

「いえ、ここに來る方は特殊で死相は見られません。生と死の狹間ですので」

「となると死相があるのはおかしいのか。それは既にリルフィーたちには報告したんだな」

「はい。お二人はあの魔がやったのではと思っているようですが」

消去法でそう考えるのは妥當だろう。しかし、個人的には魔でも人殺しをする奴にはどうしても見えない。

「まあ、無理もないな。ではその可能も考慮してみるとしよう」

まだ彼が死んだという確証はない。

それにもしこれから死にそうになっていたとしてもきっと救ってみせる。この転生屋の一員として。