そこには特別な力がある。

しかし、それはほんの一握りしか使えない。

故に彼たちは敬われ、世界を象徴する存在となった。彼たちは『魔』と呼ばれ、自分ののままに生きている。

それがこの魔の世界。

もう來ないだろうと思っていたがとんぼ返りする羽目になったルインたちは途方に暮れていた。

「來たはいいがこれからどうする？　ネクロマンサーの居場所は摑めていないんだろ」

「はい。バルドル様からの報によるとこの付近で反応があったみたいですが、的な場所などは一切判明していません」

「手がかりはほぼゼロか。これは本腰をれないとな」

「とは言ってもどうするのよ。こんなに報がないんじゃあ手の打ちようがないわ」

「なら報を集めるしかないな。今は文句を言っていても仕方ないさ。セリエはその本で仕れられないのか？」

「殘念ながらこの本に記載されているのは大まかな事しか分かりません。それにネクロマンサーはこの世界とは関係ありませんので」

流石に彼の本も萬能ではないという事か。それは俺にも言える事だ。

不死ではあるが死者を蘇らせるなど不可能。それを可能するネクロマンサーには興味がある。

「となると本格的に俺らがかないとか」

「でも……何をしたらいいんでしょう？」

「まずは報収集だが……俺たちみたいな余所者ではな。協力者がいると助かるが」

聞き込みでは大した報は得られそうにないが、それ以外の方法となるとこの世界に詳しい何者かの力を借りなくては。

「協力者って私はごめんよ。あんなのとまた関わりあうなんて」

「魔の世界にいるんだ。関わらないで事を済まそうというのは無理な話だろ。しかし、問題は誰に協力を求めるかだ」

あのアルチナは論外として殘されたのはロニかメディアとなる。

「そうね。けど、心當たりなんてあるの。そんな簡単に會える訳ではないでしょ」

騒のせいでカヴンは中斷され、あの區畫は封鎖されてしまっている。またあそこに行っても有益な報を摑めるとは思えない。

「いや、どうやらその心配はないようだぞ」

彼らの前に突如として黒い塊が現れた。

それは人の形をしているが口はなく言葉は発しず、ただジッと彼らを見つめている。

「きゃっ！　これ何よ」

「それからは魔力がじられる。俺たちを迎えに來たようだ」

「迎えに？　もしかして私たちが來るのを見越して」

「だろうな。奴もネクロマンサーに気づいて手を打とうとしているんだろ」

打つ手がない以上、ルインたちはその黒い塊について行くという選択肢しか殘されていなかった。

「また出會えて嬉しく思うよ」

案された場所はとある家屋の地下部屋。

そこには魔法陣が展開されており、その奧には黒髪の魔が首を長くして待っていた。

「こちらもだ漆黒の魔殿。しかし、よく俺たちが戻って來るのが分かったな」

セリエの本による転移は魔法ではないからいくら優秀な魔だとしても探知するのは不可能のはずだが。

「僕に教えてくれた不思議な方がいてね。多分、君たちのお仲間だと思うけど」

それはバルドルに違いない。

どうやら既に手筈は整っていたようだ。

「る程、ではネクロマンサーの件も聞いているのだな」

「聞いているも何も絶賛捜索中だよ。でも中々尾が摑めなくて困っている」

「捜索中？　メディアがどうして追う必要がある」

こちらには世界のバランスを崩しかねないネクロマンサーという存在を転生屋として何とかしなくてはという義務がある。

しかし、彼にはそんな義理はないはずだ。

「あのアルチナと手を組んでいるからだよ。おかげで防衛するので手一杯だ」

「防衛？　それがお前がここにいる理由か」

「その通りだよ。僕は……いや、僕たちはアルチナがネクロマンサーと手を組んでこの帝都に攻め込んで來たからその迎撃の為に王様に呼ばれたんだ」

「ネクロマンサーが表舞臺に？　それはちょっと信じられないわね」

「確かに、もしそのような存在だったら俺の耳にも屆いていたはずだ。となるとこれは一人のネクロマンサーが獨斷でとった行と考えるのが妥當か」

「一人でこれ程とは末恐ろしい存在ですね」

「けどそれぞれの主張が強過ぎるから複數でく事はまずないわ。でも獨自のルールに従ってるからきは予想しやすいと思ったけど、殘念ながら今回ははぐれみたいね」

「はぐれ？」

「ネクロマンサーにはコミュニティがあって互いに報換したりしてるみたいなんだけどそこにはルールがあるの。その一つとして目をつけられないように表舞臺に出ない事。それを破ってるって事はコミュニティに屬していないのを所謂はぐれって呼ばれてるわけ」

「ふむ、はぐれのネクロマンサーか。それはまた隨分と厄介そうだな」

そうなると捕らえても他のネクロマンサーの報を集められそうにない。とんだ骨折り損になりそうだ。

「それに加えて魔もいるんだから困ったものよね。でも私たちに協力してくれるんでしょ。そこの魔が」

「僕だけじゃなくて迎撃命令が下されている魔は協力は惜しみはしないさ。けど君たちの事はどう説明しようか」

「適當に頼む。それよりも今後の対策を考えないとな」 

相手は死者を蘇らせる狂気な存在とそれと手を組んだ裏切りの魔。

綿な計畫を練らなくては。