《転生屋の珍客共〜最強の吸鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜》第68話 戦場での再會
地下室で王様と面會してから數日、遂にこの時が來た。
ゴーレムの大軍が帝都に攻め込んで來たのだ。數は見える限りで千はくだらない。これは予想よりも遙かに多い數だ。
「ゴーレムというのは短時間でこれ程錬できるものなのか」
「いいや、一人では無理だ。何者かの協力がない限りはこの數は用意できない」
「となるとネクロマンサー以外にも協力者がいるということか」
ネクロマンサーにゴーレム錬の手伝いなどできないはず。ならばアズリエに賛同する魔が協力しているのだろう。
「それでも急に作戦変更はできないよ。ここに殘ってゴーレムを倒しても新しいのがまた送られてくるだろうし」
「ああ、だがここが攻め落とされてはあちらの思う壺だ」
この數が相手では押し切られてしまう。せめて守りに徹しやすい環境にしてやりたいが今からでは遅い。
どうしたものかと頭を悩ませているとそこにアズリエが割ってってきた。
「待ってください師匠。さっきゴーレムたちを見て來たんですけどし変なんです」
「変とは?」
「中に魂の反応があるんです。それも普通の魂じゃなくてまるで誰かが作り出した紛いみたいなじのもので」
「それは気になるな。全部がそうなっているのか?」
「全部じゃないですけど結構な數のゴーレムにってました」
「ああ、もしかして魔力反応のないゴーレムはそれなのかな。僕の勘違いかと思ったけど魔力の代わりにそれを力源にしているのならあとは土臺を用意するだけだからこうなったのも頷ける」
勝手に頷かれても困るが気になったのは実際のゴーレムは魔力が力源になっているというような発言だ。
「力源がその魂ならその魂を抜けばゴーレムはかなくなるのか?」
「抜けたら土の塊になるはずだよ」
それは朗報だ。
死神である彼なら魂を抜き取るなど造作もないこと。これで數の問題はし解消された。
「ふふん。師匠、ここは私の出番みたいですね。大船に乗ったつもりで師匠はネクロマンサーをお願いします」
「任せておけ。そちらが片付く前に決著をつけてみせるさ」
指揮はローランに任せるとして彼らは敵の本拠地へと転移する為に一箇所に集まった。
「じゃあ、準備は良いわね」
セリエが本を開きつつ最後の確認を取ると周囲にいた數鋭の者たちは頷く。
それを見て本の能力で転移を開始し、到著すると同時に彼らはき出した。
魔たちはアルチナとその協力者の相手を、ルインはネクロマンサーを探しに。
「なあ、セリエ。ここのどの辺りにネクロマンサーがいるかわからないのか」
死人は気配がなく、ネクロマンサーは探知されないように何かを施しているのか今も意識を集中させているが見つからない。
アルチナのいる場所だけ分かったのでそれだけはメディアに伝えておいたが。
「分かっていたら野放しにしてないわ。この本も萬能ではないの」
「そうだったな。変なことを聞いてすまん。では後は俺たちに任せてお前はリルフィーたちのことを頼む」
あいつだけは見栄っ張りの癖に転生の時以外はまるで役に立たないから誰かが見張らなくては。
常に冷靜な彼は最適な人材だ。
「ええ、了解したわ」
再び本を開いて帝都へと戻るセリエを見送って、砦の地図を開いてネクロマンサーがいると考えられる場所を虱潰しに探すことにした。
まず最初に地下だ。
あの王様が隠れていたように上よりも下の方が安全だからそこにいるのではないかと考えたのだが隠し部屋のようなものもなく、無駄足に終わった。
代わりにとある男と再開を果たす。
「久しぶりだね。ずっと探していたんだよ」
赤い髪のその男をルインは知っていた。
彼の名はユース・ヘル・アーデルハイト。
不死の吸鬼である。
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