「助けてください……だと？　この狀況を作り出したのはお前だろ。今更命乞いとは」

「違うんです。私はあの吸鬼にそそのかされただけなの。実際、手伝ったのもほんのしだし」

そういえばネクロマンサーが何かをしたという報告は聞いていない。それにゴーレムの軍勢だって力を貸したのはユースだ。

魔の力を利用するのは俺を捕獲する為、しかしこいつには協力する理由がまるでない。

「まさか本當に無関係だと」

「無理やり手伝わされたから無関係ではないけど、私は悪いことしてないの。だから助けて」

「ではお前はユースが用意した俺をき寄せるための餌で利用されていただけということか？」

思えば俺たちはネクロマンサーがこの世界にいるということを知り、戻ってきた。もしその報告がなかったらこんな世界に來ることなどなかった。どうやら俺たちはまんまとユースの思通りにかさられていたらしい。

「まさか全てが仕組まれていたとはな。しかし、それならこの問題は解決したと言っていい」

「私を助けてくれるの？」

「はぐれでも役に立つかもしれんし、無意味な殺人は好まん。ただし今後死霊を使うのは止する。そいつも捨てるんだ」

死霊はネクロマンサーにとって武のようなものだ。そんなものを有している以上、完全に信じることなど不可能だ。

それを理解してくれたのか彼は小さく頷いた。

「うん。それじゃあ解除するね」

元気良く反応していたがその死はいまだにいてこちらへと近づいて來ている。

「おい、いてるぞ。まさかここまで來て抵抗しようというのか？」

「ち、違う。私はもう解除したはずなのに」

「何？　なら誰がこれをっている。まさか……」

「そのまさかだよルイン。言ったでしょ。僕は強くなったと」

「一どんなカラクリだ？」

確かにあの一撃は直撃したはず。だというのに無事なはずはない。あの獣はではなく魂を切り裂いたのだから。

「はじめから吸鬼である僕を倒す為にの化を使うと予測していたから魂をこの死に移していたんですよ。勿論、一部は元のに殘しておいたせいで完全な狀態ではないけど今の君なら十分に倒せる」

ここまで計算盡くとは流石と言わざるを得ない。魂が見えるアズリエがいたのならこんな風にはならなかっただろうが、今更そんなことを言っても仕方がない。

「自分の魂を別のに移して俺を騙すとは長したな。昔のお前とは思えない無茶な作戦ではあるが」

「こうでもしないと君には勝てませんから」

「ふん、もう勝った気になるなよ。油斷するのはお前の悪い癖だ」

心臓を抉り再びあの獣を呼び出す準備を始める。

「まさかまたの化を呼び出すつもりですか。そんなことをしたら君のは……」

「お前も強くなったようにこの俺も強くなっているのさ。しかし、今度は別のをお見せしよう」

先程の雄々しくしい翼を持っている獣ではなく、醜く全てを深淵へと飲み込む獣。赤黒く細長いそれはユースをその大きな口で建ごと喰らう。

「いくら不死であってもそいつの腹の中からは出られんぞ。むしろ不死だから苦しい思いをするだろうな」

だが同はしない。こうでもしないとやられていたのは俺の方だ。もうあの世界に戻るわけにはいかない。

「し、死んじゃったの？」

心配そうに橫でネクロマンサーはぽっかりと空いたを見つめる。

「いいや、だがこれで終わりだ。後は魔たちに任せて俺たちはこの場を去るとしよう」

ここは魔の世界。目的を達してはいないがこれはこれで良しとして、部外者はお邪魔するとしよう。