《創造神で破壊神な俺がケモミミを救う》第44話

ガランがナーシェンを、リリスがマリオネスを撃退していた頃、犬斗とアーヴはいまだに激しい戦闘を繰り返していた。

周りにいたアーヴの使用人達は霊獣により既に倒されていたが、その戦いで霊獣も深い傷を負ってしまい、犬斗の加勢を出來ずにいた。

朱雀スタイルの犬斗は両手、両足の武に炎を纏わせアーヴへと連撃を加えていくが、アーヴは変異させた両腕、両足にてそれを防ぐ。

「防だけして勝てると思ってるんですか?」

「そんな事は思ってはいない。君の強さを知っているからこそ、今は防に徹しているだけだよ。」

アーヴはサイラスに扮して一年間犬斗と共に過ごす中で、犬斗の能力、戦い方の解析を行っていた。

犬斗の奧の手である霊獣との同化を行う「トランスフォーム」は犬斗の能力値を大幅に強化出來るだけでなく、霊獣の固有の技まで使える高能なスキルだが、それ故に魔力の消費が激しい。

アーヴは何度も犬斗のトランスフォームを見ており、その能力と維持できる時間についてデータを集めていた。

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アーヴの集めたデータによると、犬斗のトランスフォームを維持出來る時間は戦い方にもよって差異はあれど、長くても一時間程度しか持たない。

戦い始めて既に五十分は経っている事を確認しながら、アーヴは自分の思いとおりに事が運んでいることに笑みを浮かべる。

「時間稼ぎが目的って訳ですか・・・それなら!」

犬斗はアーヴの思に気付くと、インファイトの狀況から一旦距離をとり、両手をアーヴに向けて掲げる。

その瞬間、ワーレン戦で見せた青い炎を火炎放のようにアーヴに向けて放った。

巨大な青い炎はアーヴを飲み込むと、その後ろにあるディシント鋼で出來たクーポラの壁すら溶かして貫いていく。

肩で息をしながら青い炎を放った先を見つめる犬斗。

高威力の技を放ったことで多量の魔力を消費した犬斗はかろうじて朱雀スタイルを維持するだけの魔力しか殘っていなかった。

犬斗の視線の先には犬斗が放った青い炎により溶けたディシント鋼が蒸気化したことで白い靄がかかっている。

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「さすがに凄い火力だな。これほどの痛みを覚えたのは久々だ。」

白い靄の先からアーヴの聲が聞こえた。

仕留め切れなかったことに犬斗が苦い顔を見せていると、白い靄が切られたかのように晴れていき、アーヴが姿を現した。

アーヴの姿は全の皮が溶けており、左の肘から下は焼け落ちていた。

生きていること自不思議な狀態のアーヴが何事もなく話している姿も見て、犬斗は思わず疑問の聲を挙げる。

「そんな狀態で生きているなんて・・・」

「いやなかなか危険な狀態だったぞ? このを見てみろ。もう使いにならん。」

アーヴは自分のを見ながら嘆きの聲をあげると、サイラスの時と同じように背中を丸め出した。

丸まった背中から亀裂がり、その亀裂から今度は金髪の青年が姿を表す。

「はぁ・・あのはなかなか使い心地が良かったのだが、犬斗の相手は厳しかったか。」

金髪の青年の姿となったアーヴは殘念そうに、抜け殻を見ながら呟く。

犬斗はアーヴがまた姿を変えた事に驚きながらも、自の殘った魔力を使って、隙だらけのアーヴに炎の羽を機関銃のように放つ。

アーヴは犬斗の攻撃に気付くと、それを必要最低限のきで避けながら犬斗へと近づいていく。

アーヴは犬斗との距離を詰めると、両手足を剣の様な形に変異させ、インファイトを仕掛けてきた。

犬斗も両手足に炎を纏い、仕掛けてきたアーヴに応戦しようとするが・・・

「ぐわっ!」

「魔力が盡きてきたかな? きが遅くなってきているぞ?」

「くそぉ・・魔力が・・・」

「そろそろ終わりかな?」

アーヴの繰り出す拳撃を捌ききれず、犬斗はに切り傷を作っていく。

魔力があまり殘っていない犬斗は回復にまで魔力を回せなくなってきていた。

犬斗は余裕のない表で必死にアーヴの攻撃を防いでいくが、徐々にける傷が深いになっていく。

「一年一緒にやってきた仲だ、せめて苦しまない様に一瞬で終わらせてあげよう。」

アーヴは全に切り傷を作り苦しそうに呼吸を繰り返す犬斗から大きく距離をとると、右手に魔力を込める。

アーヴの右手から悍ましい雰囲気を持つ黒い球が姿を見せると、その球はブラックホールの様に引力を発生させた。

犬斗と霊獣はなんとか踏ん張り、その引力に吸い込まれないように耐えるが、周りにいた使用人達の軀は次々と黒い球に吸い込まれていく。

「くっ!ぐぅぅ・・・」

「どうした? 踏ん張るのに必死でけないか?」

アーヴは必死に黒い球の引力に耐えている犬斗に哀れみを込めた瞳を向ける。

犬斗はその場で踏ん張ることしか出來ず、苦しそうな顔を見せていたが、急にうっすらと笑みを浮かべるとアーヴを挑発し始めた。

「そのご自慢の球を早く僕にぶつけたらどうですか?」

「この狀況で減らず口を叩けるとは。さすが犬斗だ。お前は私が戦ってきた中でも最強の部類にる。誇って死ぬが良い。」

アーヴは犬斗が危機的狀況にも関わらず余裕のある様子だった事に疑念をじたが、目の前の犬斗のボロボロの姿を見て、自じた疑念は気のせいだと思い直すと、犬斗に向けて黒い球を放った。

放たれた黒い球は床を削り、周りのを吸収して、その積を増やしながら犬斗へと向かう。

避ける素振りをみせない犬斗に自じた疑念がやはり気のせいだったと勝利を確信し笑みを見せるアーヴ。

そして黒い球が犬斗を吸収しようと犬斗を飲み込んだ。

黒い球が犬斗を飲み込むと更にその積を大きくし、周囲のを吸収していく。

アーヴは犬斗が黒い球飲み込まれたのを見て、高らかに笑い聲をあげる。

「はっはっはっは! あの犬斗ですら分析してしまえば敵ではなかった。後は大地を始末するだけ。大地さえ始末すれば、私の研究は更なる進化を遂げる!」

その後黒い球は徐々に小していき姿を消していった。

黒い球が消えていくのを笑みを浮かべながら見つめるアーヴ。

しかし黒い球が消えた後の景を見たアーヴはその愉悅にまみれた顔を驚愕にまみれた顔に変化させることになった。

「痛い痛い痛い! めちゃくちゃ痛い!」

そこには黒い球に飲み込まれたはずの犬斗の姿があった。

犬斗はを丸めながら床にこまっている。

犬斗にさっきまであった夥しい數の傷は全て無くなっており、殘存魔力がなくなったことによる苦しそうな表も消えていた。

犬斗が無事な理由がわからず、アーヴは思わず口を開く。

「犬斗・・お前いったい何をした。」

「痛たたた・・・え? これは僕の力じゃないですよ。」

犬斗は傷一つないはずのを痛がりながらとぼけた様子を見せる

アーヴはデータ以上の事が起こっている事に恐れをじ、額から一筋の汗を垂らしていた。

犬斗朱雀スタイル専用防「陵りょうこう」

この防は朱雀スタイルの犬斗に合わせて作した防であり、トランスフォームの弱點を補う機能が組み込まれている。

その機能とは組み込んだ変換魔法により防けたあるを自の魔力に変換するというものであった。

しかしトランスフォームの弱點を補える裝備にも関わらず、犬斗は出來る限りこの防を使わないようにしていた。

その理由は魔力へと変換する、あるが魔法によるダメージ、言い換えれば痛みだったからである。

けた魔法ダメージを魔力に変換することで、トランスフォームによる魔力消費を補う仕組みになっている。

朱雀スタイルの犬斗の再生能力があれば、魔法ダメージをけた瞬間から痛みを魔力に変換し、自の再生に使える為、この防を付けた犬斗は再生力に関しては実質無敵に近い狀態になる。

しかし犬斗は痛い思いをしなければ魔力を回復出來ないこの防に対して「僕はドMじゃないんですから!」と使うことを拒否していた。

それでも大地の真剣な説得により大地がミッテに言っている間のみという條件付きで犬斗は陵を裝備していた。

相手から喰らう魔法ダメージが大きければ大きいほど自の魔力へと変換できる陵を裝備していた犬斗は、アーヴが放った黒い球を削られながら、その痛みで得た魔力により削られた傍から再生を繰り返し、黒い球の攻撃を防いでいた。

アーヴは大地から犬斗にそんな防を渡していたとは聞かされていなかった。

の予想を遙かに越える出來事にアーヴはただ犬斗を見つめ唖然とするのだった。

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