《創造神で破壊神な俺がケモミミを救う》第49話

大地が會談を終えてボレアスに帰ってから一週間が経った頃。

ボレアスの獣人約四萬人を乗せた大型バス八百臺がデュセオ領地に向かって長蛇の列をしながら移していた。

本來ならばもうし余裕を持って出発する予定だったのだが、ヘイデン以外の西側の領主達は會談後に帝國が介してくる前に東側を乗っ取るべきだと、すぐさま自の保有する衛兵等の兵士を全てミッテに近いデール領地に進軍させていた。

唯一軍をかしていなかったヘイデンからの手紙でそれを知った大地は大急ぎでデュセオ領地の都市マルタまで向かっていた。

何故そんなに急いでいるのかだって?

それは領主もいなくなり、衛兵もいなくなってしまった街がどのようになるか想像してもらえればその理由もわかってもらえるだろう。

この世界には警察という組織がいない。

代わりにそれぞれの國の兵士や衛兵がそのかわりを擔っている。

まぁ擔っているといってもその國の王や領主に逆らうことさえなければく事のない形だけの警察といったじではあるのだが。

しかしそんな形だけの衛兵や兵士もいるだけでそれなりの抑止力にはなる。

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そんな警察代わりの衛兵たちが領主共々、街から急にいなくなればその街はどうなってしまうだろう。

答えは一つ。そう199X年世紀末化である。

大地はガルムが街を出たと聞き、マルタにいるケンプフ達が心配になり、急いで出発の準備を整えたのであった。

現在大地は大型バスの防備を犬斗とガランに任せ、一足先にルルとメリアを連れて大型バイクにてマルタへと向かっていた。

マルタに著くと予想通り街は世紀末狀態になっていた。

それなりに整備されていたはずの中央通りには倒れた人、壊れた家や店、あらゆるところから聞こえる悲鳴等、同じ場所だと言われてもわからないぐらいに変化した慘狀が広がっていた。

大地はルルとメリアに住民をマルタり口付近まで避難とそれを妨害する者の始末を指示すると、ケンプフのいる教會へと走っていった。

教會への道中、冒険者崩れのような奴らが襲い掛かってくるが、銃剣により眉間に一発喰らわすことで全てを軀にしていく。

悪漢と化した冒険者の相手をしながら教會へと辿りついた大地はすぐさま教會の扉を開ける。

教會の扉の先には周りを囲む冒険者の一隊とその中心で肩にて息をしているケンプフがいた。

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よく見るとケンプフの周りには既に軀と化した冒険者達の殘骸が散らばっている。

ケンプフの様子を見て、危険な狀態だと察知した大地はケンプフにセキュリティをかけると両手に試作機であるバルカン砲を出現させ、それを勢いよく連していく。

ケンプフの周りを囲んでいた悪漢はバルカン砲の銃弾により原型を留めないほどに滅多撃ちにあい、悲鳴を上げることなく片と化していった。

悪漢を始末した大地は銃口からいまだ煙を吹いているバルカン砲を一度消すと、ケンプフの元へ歩み寄っていく。

「大丈夫か? 悪いなし遅くなってしまった。」

「大地・・・? 生きていたのか!?」

「あぁもちろん他の獣人達も無事だ。」

大地が生きていたことに驚きを見せるケンプフ。

教會に靜けさが戻ったのと同時に教會の右奧の扉が開いた。

中からはリリーナと教會で一緒に暮らしている子供達が現れた。

どうやらケンプフが賢明に悪漢をしのいでいたおかげでリリーナや子供達は無事だったようだ。

大地はケンプフ達の無事に安堵しながら、マルタが今どういった狀況なのか詳しい事をケンプフに聞いていく。

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「ケンプフ今のマルタについて詳しい狀況を知る限りでいいから教えてくれ。」

「俺も教會にいたから詳しくは知らないが、領主とその衛兵達が東側との戦爭に出て行ってからは覧の有様だ。衛兵達だけじゃなくて腕利きの冒険者やギルド職員も同じ時期にいなくなったものだから、取り仕切る者のいなくなったマルタはもはや無法地帯になってしまった。」

ケンプフは自分の知る限りの報を大地に伝える。

大地はケンプフの話を聞き自分の想像通りの慘狀になっている事を理解すると、リリーナと子供達にセキュリティをかけ、ケンプフと共にマルタの口まで避難をさせようとき始める。

ケンプフの案で近道を通ったことで、悪漢に襲われることもなく口まで辿りつくことが出來た大地達。

口に辿りついたと同時に先頭を走っていたガランと獣士団の乗った大型バスがマルタへと到著していた。

「大地! これはいったい何が起きているんだ!?」

「とりあえず理由は後だ! この街の住人を避難させてくれ! 邪魔する奴らは始末して構わん!」

「わかった! お前ら五人で一つの隊になれ! 住人を見つけ次第ここまで連れてこい! 怪我人はリリスの元までだ!」

ガランは手慣れた様子で編隊を済ませると、獣士団をマルタゆ進軍させる。

その後続々とバスから出て來る獣士団員にガランが素早く指示を出して住民の避難を進めていく。

途中リリスも到著したようで部下の研究員と共に怪我を負った住民の治療にあたった。

ガランの迅速かつ的確な指示もあり、住民の避難と悪漢の制圧を完了するまでに一時間もかからなかった。

連れて來られる住民の中には獣人を怖がり恐怖の表を浮かべる者も多かったが、口まで保護され、怪我まで治療されたあげく、飲みや食べを出された時點で恐怖の表を浮かべたままの者は誰一人としていなくなっていた。

子供等はまだ純粋なようで、獣人に興味があるのか治療をけながらもリリスの羽を何度もつつこうとしてリリスに怒られる子もいた。

ケンプフとリリーナは唖然とした表でよく訓練された獣人のきをみていた。

「なぁ獣人が裝備している武って何で出來ているんだ?」

「あぁ、あれはディシント鋼だよ。うちの鍛冶長が最近実用化させて簡単な剣ぐらいなら量産出來るらしいぞ。」

「あのぅ・・黒鳥の獣人さんが使っているのってハーフポーションでは?」

「さすがポーションの調合していただけあって良く知っている。あれはうちの研究長が作しただ。あの程度なら腐らせる程作ることが出來るらしい。」

「はぁ~。帝國はとんでもない集団を相手にしているみたいだな。俺は帝國を裏切って正解だったみたいだ。ある意味リリーナは命の恩人になりそうだな。」

「てっていうかハーフポーションなんて貴族の人達でもない限り使える代じゃないはずですよ! それをあんな履いて捨てるように使っているなんて・・・」

ケンプフとリリーナは目の前で繰り広げられているあまりにも規格外な出來事に開いた口が塞がらない。

それも無理はない。ディシント鋼を加工して剣を作るなど小人族を有していた時の帝國ですら功した事がない技である。

それにハーフポーションなんて作れる技があれば、どの國でも國賓扱いをけることが出來る。

そんな規格外の技を有しているのが、他でもない獣人であることに驚きを隠せないケンプフ達は、大地の言っていた獣人の國を作るという発言が伊達や酔狂でなかった事を理解した。

何はともあれマルタの住人計五萬人の避難と怪我人の治療を完了させたことを確認した大地は拡聲を手元に再現すると、いまだ何が起きているのかわからない住人達に向かって話を始めた。

「あ~あ~マイクてすマイクてす・・・皆さんどうも初めまして。ボレアス領主代行の石田大地と言います。」

大地の大きな聲がマルタに響き渡ったことで五萬人の視線が大地に集まる。

大地は大勢の視線が自分に向けられていることを確認すると、住民を安心させる様に穏やかな聲で話しだす。

「皆さんいきなりたくさんの獣人達が現れて驚かれたと思いますが、私達は敵ではありません。近々このトームで戦爭が起きます。私達はその戦爭から皆さんをお守りするためにボレアス領地から來ました。今から皆さんが戦爭中に避難する場所に案します。もし私達が信用出來ないようであれば、このままマルタに戻ってもらっても構いません。信用できると思った方だけついて來てください。」

大地から戦爭が始まるという話にめ驚いた住民達であったが、それ以上に住民達が驚愕したのは自分達を守りに來たという発言だった。

これまで領主が自分達の為に行したことなど一度もない。

そればかりかマルタに至っては冒険者が住民に対してどれだけ理不盡な振る舞いをしても、領主や衛兵は見て見ぬふりをしていた。

そんな環境で育った彼らはそれが領主であり、貴族だと悟っていた。

そんな領主しか知らない住人達が領主代行の立場であり、尚且つ獣人と一緒にいる大地の言葉をそう簡単に信用出來る訳はなかった。

しかし今のマルタの街は荒らされ、暴徒と化した輩がいまだ居るかもしれない。

現実的に考えて、とても生活を出來る環境では無くなってしまっている。

住人達はマルタに戻っても仕方がないことや、獣人達が自分達を助けようといていたことから、大地達に敵意はないと判斷し大地に従うことにした。

後の住民達はこの時の自分達の判斷に対して大いに謝することだろう。

何故ならこの判斷のおかげで、彼らは結果としてこの世界で最も安全で平和な場所で生活できることになったからだ。

大地は住民達がこちらの指示に従う決斷をしたことを確認すると、アウトプットにて大きな壁を作っていった。

その絶壁はゆうに五十メートルは超えており、連なるように再現された絶壁は徐々にその形を作っていき、大きな五角形をかたどる大きな城壁へと姿を変えた。

この城の名はペンタゴン。

大地が某國の防総省から形を借りて作った城だ。

大地は優に二十萬程度なら収容可能な大きさのペンタゴンを一瞬の間に住民の目の前に作りだした。

あまりに非現実的な事が起こった為、思考が止まる住民達。

そんな中何処かられるように聲が聞こえてきた。

「もしかして・・・・創造神様?」

何処からかれたその言を皮切りに、ぽつりぽつりと「創造神様」という言葉が住民達の中から聞こえてくる。

つかの間の靜寂に響く「創造神様」という言葉。

その言葉は徐々に増えていき、住民達の中に大地が創造神様ではないかという思いが募っていく。

そして住民達の思いが確信へと変化した時、ペンタゴン前の住民達は大きな歓聲を挙げた。

「「「「創造神様!」」」」

「創造神様が私達を救いにきてくれたんだ!」

「ありがたや・・ありがたや・・・」

五萬人から崇拝の眼差しを浴びる大地。

中には両手を合わせて拝んでいる人達や涙を流しながら頭を下げている人達もいる。

あぁなんだこの懐かしいじは。俺はしがない生粋の日本人だってのに。

まぁ崇拝してくれた方がこの後も何かとやりやすいか・・・

大地はまたもや神と勘違いされていることに頭を悩ましながら、熱狂に包まれる五萬人の住民を見つめていた。

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