《創造神で破壊神な俺がケモミミを救う》第68話
「驚かせてしまったかな?」
異形の姿となったナーシェンは大きく笑みを浮かべると、自慢でもするかのようにガランが切り落としたはずの左腕を前方に掲げる。
掲げられた左腕は不自然なほど出した太い管がドクドクと脈をうっている。
その左腕に侵食されたようにナーシェンの左半は腐敗したように紫に変しており、左目に関しては今にも落ちそうなほどに眼球がむき出しになっていた。
「お前一何をしたんだ・・・?」
あまりにも悍ましい姿に変化してしまったナーシェンの姿に眉をしかめたままガランがその姿になった理由について聞く。
「この左腕はね、昔人間が魔族と戦爭をした時に幹部の魔族から刈り取っただそうだ。この魔族は固定魔法っていう魔法の存在を固定する強力な魔法の使い手でね。僕はこの腕を自分に移植することで固定魔法を扱えるようになったって訳だよ。」
その後、ナーシェンは固定魔法がどのような魔法なのかを得意気に説明し始めた。
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固定魔法とは他の魔法に付加することで効果を発揮する魔法であり、固定魔法を付加された魔法はその存在をその場に固定させることになる。
つまり固定魔法を付加された魔法はいかなる手段を用いてもその魔法の存在を破壊すること出來なくなるというものだった。
魔力吸収を持った虎鉄が弾かれた原因はこの固定魔法により土槍の存在を固定したことで、虎鉄による斬撃や魔力吸収を無効化していた為であった。
しかしそれだけ強力な魔法を代償無く手にれられるわけがなかった。
「けどそのは・・・」
「そうだね。君の思っている通り魔族の細胞っていうのは生命力がかなり強いらしくてね。移植してまだそんなに経っていないんだがこの有様だよ。」
ナーシェンは自分のが既に魔族の細胞に侵されていることを笑いながら明かす。
「多分僕は遅かれ早かれこの戦爭で命を落とす。けれどそんなことはもうどうでもいい。僕は君さえ殺すことが出來ればそれでいいんだ。」
それまで笑みを浮かべていたナーシェンの顔が急に憎悪に満ちた表へと変わる。
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帝國の貴族として生まれ、エリート街道を得て生兵開発局第一室長となったナーシェンはアーヴ右腕として常にその期待に応えていた。
ボレアスでの作戦の時も他の室長が立候補する中、アーヴから直々に命令をけるほどアーヴから厚い信頼を寄せられていたナーシェン。
しかしそのボレアスでの出來事が彼の運命を大きく変えることになる。
作戦を失敗したばかりか左腕を落とされ、致命傷をけて帝國まで逃げ帰った彼を待っていたのは、他の室長からの罵倒と嘲笑。
そしてアーヴからの一般研究員への降格命令。
これまで挫折とは縁遠かった彼が初めて経験した挫折は彼の人間を大きく歪めてしまった。
そんな人間を歪めてしまった彼の中に唯一殘っていた。
それは自分がこんな目に合っている原因を作ったガランへの憎悪であった。
ナーシェンはガランへの復讐を果たす為、アーヴの実験になることを進み出た。
アーヴもナーシェンほどの素を実験に使えることは自の研究を進める上でも有意義なことだと考え、かねてから考えていた魔族の生組織の移植をナーシェンに行った。
結果だけ見れば完全な失敗であった。
ナーシェンのは魔族の生組織に侵食され、徐々にそのを朽ちらせていった。
それでも大きな魔力値やその魔族の持つ固定魔法を扱えるようになったことから、今後の研究のデータを収集する目的でアーヴはトームへとナーシェンを連れてきていた。
「君と出會って僕を取り巻く環境は大きく変わってしまった。君に敗れ、僕の地位は地に落ちた。再起を図ろうとした実験も失敗に終わり、後はただ死を待つだけのになってしまった。それもこれも全てガラン・・・君のせいだ。」
表を大きく歪ませながら、黒く淀んだ殺気を放ってくるナーシェン。
「はっ! それは自業自得ってやつだろうが。そもそもお前らが私利私に塗れて行を起こさなければこんなことにはなってねぇんだからな。」
ガランはナーシェンの発言を鼻で笑うと、居合いの構えを取る。
「君のその武はもう僕には通用しないとわかっているだろう?」
ナーシェンは構えを取ったガランに対して、哀れな者を見るような目を向けると、先程と同じ土槍をガランへと出した。
土槍は速度を上げながらガランの心臓目掛けて飛んでいく。
「別に切るだけが剣の使い方じゃないんだぜ。」
土槍がガランの心臓を捉えようとしたその瞬間。ガランは鞘から剣を引き抜くと土槍の側面をでるような剣筋を繰り出す。
側面をでられた土槍は大きく進行方向をずらすと、ガランの左側へと反れていき後方の城壁へと突き刺さる。
「ほう。直接切れないのであればいなしてしまおうという訳か。」
ナーシェンは心した様子を見せながら、周囲に多數の土槍を出現させると、それをガランへと連していく。
ガランは迫りくる多數の土槍の側面を剣で穿つことにより、土槍の攻撃をいなしていく。
「素晴らしい剣の腕前だな。しかしいつまでそれを続けられるかな?」
ナーシェンは土槍を次々と連していきガランに息つく暇を與えない。
「くっ・・・これじゃ埒が明かねぇぞ!」
ガランは土槍をいなしながらも防戦一方になっていることに危機をじていた。
近接距離での戦闘を得意としているガランにとって、遠距離での攻撃を繰り返すナーシェンは相が悪い。
ナーシェンもガランの剣の腕や虎鉄の脅威を知っている為、ガランとの距離をめる様子は見られない。
「はぁはぁ・・・」
息づかいが荒くなってくるガラン。
いなした土槍の數は百を越えようとしていた時、疲れから一瞬集中力を切らしてしまったガランの左肩に土槍が突き刺さる。
「ぐはっ!」
ガランは激痛に思わず片膝を著いて左肩を押さえる。そんなガランの命を刈り取ろうと土槍は手を休めることなくガランに迫っていく。
迫りくる土槍をいなそうと右腕を振るうガランであったが、左肩の痛みによりきに彩を欠き、いなしきれなかった土槍が次々とを掠めていく。
ガランは全に走る痛みにきを止めてしまう。
「畜生・・・がかねぇ・・・」
全に大きな切り傷を作りけなくなってしまったガラン。
「くそが! けよ!」
ガランが必死にに鞭を打ち立ち上がろうとした時、ある人が土槍とガランの間に割ってってきた。
「マヒア! 何故ここに!?」
ルーメルと戦っていたはずのマヒアが目の前にいることに驚くガラン。
「うちの大將がピンチになっているのが見えたのでな。」
「馬鹿野郎! あの魔法は虎鉄でも破壊出來ない魔法だ。お前まで巻き込まれちまうぞ!」
マヒアは驚くガランを目に腰に下げている五本のレイピアを展開した。
展開されたレイピアはマヒアの周囲に浮かび上がると、その周囲を変化自在にき始める。
「無駄なことを・・・いかなる魔法を持ってしても私の土槍を切ることなど不可能ですよ!」
「それはどうかな?」
マヒアは展開した五本のレイピアを迫りくる多數の土槍からガランと自分を守るように配置する。
そして土槍がマヒアへと差し迫った時、五本のレイピアは急速にそのきを速めると、迫りくる多數の土槍を々に切り裂いた。
「そんな馬鹿な! 固定魔法をかけられた土槍が切られるなど!」
固定魔法に絶対的な自信を持っていたナーシェンは驚愕する。
「さぁガラン。ここから逆転といこうか。」
マヒアは周囲にレイピアを展開させながら小さい笑みを浮かべた。
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