ナーシェンが目の前で々に切り刻まれた土槍を見てありえないといった表を浮かべた時、ナーシェンの後方にルーメルが姿を現した。

「ナーシェン・・・あのが持っている武はやばい・・・俺の幻影魔法ですら簡単に切り裂きやがった・・・」

ルーメルは全に切り傷を作り、満創痍の狀態でナーシェンにマヒアの持っている武の危険について忠告する。

ガランとナーシェンが戦っている時、ルーメルは実を持たない魔法を作りだす幻影魔法を使い、マヒア相手に戦いを優位に進めていた。

実のない幻影であるが故に破壊することが出來ない幻影魔法と、実のある屬魔法を組み合わせて使うことにより、マヒアをわしながら効果的に魔法攻撃を仕掛けていたルーメル。

しかしマヒアがあの五本のレイピアを周囲に展開させてからは、形勢が大きく傾くことになった。

マヒアが展開した五本のレイピアは破壊することが出來ないはずの幻魔法をいとも簡単に切り裂いてしまった。

幻影魔法が意味を為さなくなってしまったルーメルはその後じりじりとマヒアのレイピアに追い詰められていった。

しかしマヒアの五本のレイピアがルーメルに止めを刺そうとした時、マヒアがガランの窮地に気付き、ガランを助ける為にレイピアを収めたことでルーメルは急死に一生を得ていたのであった。

マヒア専用レイピア型武「獅子神楽ししかぐら」

マヒア専用に作られた獅子神楽はマヒアが最も使い慣れているレイピア型の剣に変魔法と遠隔作を組み込んだものである。

フィアと違い戦に長け、魔法の作、魔力値共に高い値を持つオールマイティなマヒアは遠隔作により五本のレイピアをマニュアルにて作している。

また獅子神楽には組み込んだ変魔法により、切ったの質を変異させるという特徴がある。

これにより実のない幻影魔法を実のあるものに、固定魔法を付加した魔法の質を固定されていないものに変異させ破壊していたのであった。

相手の魔力を吸収し、振させることで切れ味を大幅に向上させているガランの虎鉄が攻撃特化型の剣であるならば、マヒアの獅子神楽はどのような攻撃をも切って捨てる防に特化した剣となっている。

をもってマヒアの獅子神楽の脅威をしていたルーメルはナーシェンに一時後退を提案する。

「俺とお前の魔法ではあいつの武と相が悪い。量で押し込めるラネッサやグラに応援を要請した方が良い。」

「私が命を懸けて手にれた固定魔法があんな細長いだけの武に劣るとでも言いたいのですか？」

ナーシェンは一時後退を提案したルーメルの方へ向くと、既に腐敗が始まっている左側の額をヒクヒクとさせながらルーメルへと詰め寄る。

「おい・・・どうした・・・」

ルーメルはいつもと様子の違うナーシェンに戸いながらも聲をかけるが、ナーシェンは黙ったままルーメルの正面まで迫った。

「あなたも室長の一人であるならば、後退などという戯言はよした方がいい。」

「だがあの武は本當にやばい！　他の室長達と連攜してかかったほうが―――――」

グサッ！

「え・・・？お前・・・どういうつも・・りだ・・・」

ルーメルは自の腹部に走った激痛に気付くと、そっと自の腹部を覗いた。

ルーメルの腹部にはナーシェンの左腕が深々と刺さっており、背中まで貫通していた。

「他の室長と連攜だと？　私を嘲笑いこけにしてくれた奴らに強力を仰げと？」

「何してんだてめぇぇええ！」

ルーメルは口から大量のを吐きながら、ゼロ距離でナーシェンに向けて魔法を放とうとする。

しかし魔法を放つ前にナーシェンはルーメルを貫いた左腕を上に掲げ、ルーメルのを上空へと放り投げる。

「まだ戦えるでありながら、後退を選択するなど室長の名折れ。そんな奴に室長を名乗る資格はない。」

ナーシェンは上空に放り投げられ無防備な狀態となっているルーメルの左右に土壁を出現させると、ルーメルを押しつぶすように左右の土壁の間隔を狹めていく。

「ナーシェンぎざまぁ！」

ルーメルは土壁に魔法を放ち、土壁の破壊を試みるも、固定魔法をかけられている土壁には意味を為さない。

反吐をまき散らしながら必死に抵抗するルーメルであったが、間隔が徐々に狹まっていく土壁はそのままルーメルを飲み込んだ。

左右ぴったりとくっついた土壁からはルーメルの鮮が滴り落ちていた。

「仲間をあんな風にするなんて・・・」

「あいつは俺への憎悪でおかしくなっちまってるんだよ。」

何の躊躇もなく仲間を手にかけたナーシェンの姿を見て、眉を歪ませるマヒアとガラン。

「マヒアさっきは助かった。」

「そんなことはどうでもいい。それよりどうやってあいつを倒す？」

「あぁ。それについてなんだが、マヒアのそのレイピアは遠隔でも作可能か？」

「ある程度の距離なら可能だが・・・もしかして！」

マヒアはガランが何を考えているのか気付くと大きく頷いた。

ガランもマヒアが自分の作戦を読み取ってくれたことを理解すると、念のために持っておいたリリス特ポーションを左肩にかけ、これから行う作戦の準備を整える。

「じゃあ任したぜ。」

「ああ。任せてくれ。」

ガランはマヒアと軽い笑みをわすと、ナーシェンの元へと走り出した。

「あぁ・・・次は君だよガラン！」

ナーシェンは腐敗が進み、もはや焦點の合っていない左目をガランに向けると、これまでより二回りほど巨大化させた土槍をガランに目掛けてしていく。

「ガランに傷一つ付けれると思うな。」

マヒアは獅子神楽をガランの周囲に展開させると、ガランを守るように迫りくる土槍を切り刻んでいく。

「な・・・ななな・・邪魔をするなぁ！」

ナーシェンはガランを守っている獅子神楽をるマヒアに目線を移すと、土槍をマヒアに放とうと左手をマヒアの方へとかざす。

「馬鹿が！　隙だらけだぞ！」

ナーシェンがマヒアに意識を向けたその一瞬の隙を見逃さなかったガランは帝國兵を切った際に虎鉄が吸収していた魔力を全て込めて、炎熱を纏った風の刃をナーシェンに向けて放った。

ガランの放った風の刃はマヒアに向けて突き出していた左腕を切り落とす。

「ぐわぁぁぁぁああ！　またしても私の腕がぁ！」

腕を切り落とされたことで、発狂したように敵味方関係なく辺りに土槍を放っていくナーシェン。

「そんな適當に放った土槍を喰らうわけないだろうが。」

ガランは素早いのこなしでナーシェンとの距離をめながら虎鉄を鞘に納める。

発狂しながらもガランがこちらに近づいていることに気付いたナーシェンは前方に三角錐型の大きな土槍を出現させ、ガランを押し潰さんとそれを放った。

「マヒア頼んだぜ。」

ガランは目の前に大きな土槍が迫ってきているにも関わらず真っ直ぐにナーシェンへと向かっていく。

三角錐型の土槍がガランへと著弾しようとした時、ガランの周囲を旋回していた獅子神楽は剣先を合わせ、ドリルのような形に陣形を組むと、まるで掘削機のように土槍を削っていく。

土槍に出來たを通りナーシェンの目の前まで迫ったガランは渾の居合切りをナーシェンに向けて放った。

「今度こそ終わりだ。」

「何故だ・・・何故私が獣人如きにぃ！」

ガランの放った居合切りはナーシェンのを切り裂き、上半と下半を分かつ。

「私が・・・こんな・・・」

ナーシェンが何かを呟こうとした時、分かたれた上半が地面へとずり落ちた。

地面へと落ちたナーシェンは腐敗した顔を悲痛によって歪ませたままかなくなった。

ガランはなんとかナーシェンとの戦いに勝利を収めると、大地とアーヴがいると思われる上空へと目を向ける。

「大地こっちは何とかしたぞ。敵の親玉は任した。」

ガランは小さく呟くとマヒアと共に殘りの帝國兵の掃討にのりだした。