《創造神で破壊神な俺がケモミミを救う》第70話

それぞれの城門前でゼーレやルル達が勝利を納めている中、ペンタゴンからし離れた北の地では青龍スタイルの犬斗とバセルダが激しい拳撃の打ち合いを行っていた。

「なんだお前のは? いくら攻撃を當てても手ごたえがねぇな。」

バセルダは拳撃が當たっているにも関わらず、ダメージをけている様子のない犬斗に怪訝そうな表を浮かべる

「くっ速すぎる・・・・」

犬斗は青龍スタイルの理攻撃無効化のおかげでダメージはないものの、バセルダにいいように打ち込まれていることに苦しそうな顔をしていた。

青龍スタイルを使っている犬斗に対してバセルダは一切強化系のスキルや魔法を使っていない。

の狀態であるにも関わらず、バセルダは自能力と戦闘技のみで犬斗を圧倒していた。

犬斗はたまらず一旦後方に下がって距離を取ろうとするが、すぐさまバセルダが距離を詰める。

そんな攻防を繰り返すうちに犬斗とバセルダは西北の城門から大きく離れ、ペンタゴンの北部にあるデュセオ領地とボレアス領地の境まで移していた。

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「おいおい。お前の実力はこんなもんなのか? アーヴを倒したっていうからそれなりに強いのかと期待したがとんだ期待外れだ。」

退屈そうな様子を見せながら犬斗に拳撃を食らわしていくバセルダ。

犬斗は青龍スタイルではバセルダの速さに対抗出來ないと判斷すると、朱雀スタイルへと切り替える。

「おぉ! 面白い技を使うじゃないか。」

バセルダは水を纏った竜人の姿から炎を纏った鳥人の姿に変化した犬斗を見て、楽しげな顔をのぞかせる。

朱雀スタイルになったことで俊敏を大きく向上させた犬斗はバセルダの拳撃をけ止めると、バセルダの腹部に拳をめり込ませる。

「ぐふっ!」

バセルダは腹部を打たれたことで後方へと吹っ飛ぶが、空中で一回転するとそのまま足から地面へと著地する。

「やれば出來るじゃねぇか。」

打たれた腹部をさすりながら愉悅に満ちた表を浮かべたバセルダは初めて魔法を発させた。

魔法を発したバセルダの姿は徐々に人間ではないものに変化していく。

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「僕と同じじゃないですか・・・」

バセルダの変化した姿を見て、思わず言葉をらす犬斗。

バセルダの変化した姿は、犬斗の朱雀スタイルと全く同じ炎を纏った鳥人の姿だった。

「何を驚いてやがる。お前と同じ力だろうがよ!」

バセルダは驚く犬斗に向けて自分の持つ力は犬斗と同じものだと告げる。

「ではあなたも魔獣を使役出來るのですか?」

「はぁ? 魔獣を使役? 何で魔獣を使役しないといけないんだよ。俺は魔獣を生きたまま喰うことで魔獣の力を自分のに出來るんだよ。お前も同じじゃねえのか?」

「僕は生きた魔獣を食べたりなんかしません。この力は使役した従魔の力を借りているだけです。」

「はぁ? 魔獣から力を借りるだと? 溫いことを抜かす奴だな。信じられるのは己だけだろうが・・・借りた力などたかが知れている。」

バセルダは魔獣の力を借りていると話す犬斗の事を馬鹿にしたように鼻で笑った。

実はバセルダは宮廷魔法師でありながら、六屬全てに適をもっていない。

そのかわり生きたまま食べることによって魔獣の力を自分のと出來る悪食魔法という固有魔法を使って宮廷魔法師第七位の座まで上り詰めていた。

バセルダが固有魔法に目覚めたのは期の壯絶な経験からくるものであった。

帝國の外れにある小さな村でその生をけたバセルダは期に家族と親戚を盜賊の襲撃により全て失っていた。

盜賊の襲來時、當初いたずら好きだったバセルダは父や母を驚かせようと裝箱の中に隠れてその機會を待っていた。

しばらくして家の中からバセルダを探す父と母の聲が聞こえ始める。

バセルダは自分の思通りに父と母が自分を探し始めたと気付き裝箱から姿を見せようとした。

しかしその時、急に大きな音が家に響いたかと思うと、心配そうにバセルダを読んでいた父と母の聲が悲鳴へと変わる。

急に響いた大きな音に驚いたバセルダは恐る恐る裝箱の蓋の隙間から様子を窺った。

バセルダの目の前に繰り広げられていたのは盜賊により切られ、からを噴き出していた両親の姿だった。

いバセルダはその景に怯え、その後村人に発見されるまで裝箱の中で震え続けていた。

唯一死を免れたバセルダであったが、帝國の外れにあるような貧しい村にいる村人では寄りのないバセルダを養う余裕はなく、自然とバセルダは厄介者扱いされるようになる。

一日一日を生きていくことに必死だったバセルダはそのうち力というものに大きな執著心を持つようになる。

家族を失って初めて迎えた冬の時期、野草や作等が育たない冬の環境ではろくに食べるを口に出來ず、バセルダのは酷く痩せこけていた。

バセルダは何とか食べるものを探そうと村の北部にある森へともたつく足を必死にかしながら進んでいく。

既に何日もまともな食事を取れていなかったバセルダは森の中で遂に力盡き倒れてしまう。

なんで俺がこんな目に・・・俺にもっと力があれば・・・

意識を朦朧とさせながらも両手両足を使い、這うようにして前へと進もうとするバセルダ。

そんな時、わずかにの香りがすることに気付いたバセルダは殘った僅かな力を削りながらの香りのする方へと進む。

の香りは徐々に強くなっていきようやく香りの正を見つけた。

その正とは村人が治安維持の為に設置していたトラバサミ型の罠にはまっていた犬型魔獣の子供だった。

犬型魔獣の腹部にはトラバサミの刃が食い込んでおり、犬型魔獣は淺い呼吸を繰り返していた。

など家族を失って以來口にすることのなかったバセルダは、目の前で死にかけている魔獣を見つけると一心不に噛みついた。

バセルダに噛みつかれたことで小さな悲鳴を上げながら必死に抵抗する犬型魔獣。

しかしそんな犬型魔獣には見向きもせずひたすら自の空腹を満たす為だけに魔獣のに喰らいついたバセルダは、その後魔獣の皮、の一片も殘さず平らげた。

バセルダが久々に得た満足に浸っていると、自分に妙な力が備わっていることに気付いた。

「これは・・・」

バセルダがその力を確認するように手のひらを前方の木に向け、力を込めると炎の弾が木に向かって放たれた。

目の前で燃える木々を見ながら、自の力に驚くバセルダ。

に力がないことを嘆き、大きな力を渇しながら、毎日生き抜く為に食べていくことばかり考えていたバセルダは本人も知らない間に悪食魔法を使えるようになっていた。

直観的に自に備わった力を理解したバセルダはその後村から姿を消すことになる。

そして二十年後、帝國に存在する魔獣を喰らい盡くしその力を手にしたバセルダは帝國の宮廷魔法師の地位にまでなっていた。

期の頃から力を渇し魔獣と命懸けの戦闘を毎日のように行っていたバセルダはその経験から我流での戦闘技と類稀な能力を手にしていた。

犬斗とは正に対極的な方法によって力を得ていたバセルダ。

犬斗は自と同じ姿をしていながら圧倒的な存在を放つバセルダの姿に思わず後退りしてしまう。

犬斗の額には一滴の汗が靜かに流れていた。

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