《最弱の村人である僕のステータスに裏の項目が存在した件。》第2話 裏項目

村の広場へと向かうとそこには見たことのない男が數人いた。

僕と同じくらいの歳のみんなに囲まれている。

もしかしなくてもあの人たちが勇者様一行なんだろう。

そういえば何でここに勇者パーティの人たちが來たんだろうと思ったけどすぐに思い當たることがあった。

神託で勇者だと分かった人は経験を積むためにんなクエストをクリアしたり、街々を旅したりするらしい。

この村にも何かしらの経験を積むための一環なのだろう。

みんながこちらに気付くけど僕だと気付くとすぐに興味を失って勇者様に視線を戻した。

って、意外と若いな。

あの人が勇者? 僕よりし上くらいじゃないだろうか?

赤い髪だ。

以前聞いた噂通りの見た目だけどその年齢は予想外だった。

華奢で余計なお世話だろうけど剣を振れるのかと心配になってしまう。

「お、坊主もシャル様に興味があるのか?」

すると僕の2倍近くありそうな大男の人が聲をかけてきた。

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頭は短い茶髪でその筋はまるで鉄のようだ。

威圧凄いな。

「その呼び方はやめてって言ってるでしょう?」

「がははっ、こまけーこと気にするなよ」

すると赤い髪の勇者様らしき人が苦々しく言ってきた。

大男の人は見た目通り豪膽な格らしい。

がはがはと豪快に笑っている。

すると緑のエルフ裝束を見に纏ったブロンドヘアーのの子……エルフだな。

そのがフォローするように言った。

「ガノフ……シャルが嫌がってるでしょう?」

「ああ、悪かった悪かった。アーシャも固いよなあ」

ふむ、一気に名前が分かったな。

勇者様がシャルでエルフのがアーシャ。

大剣を背負った大男はガノフというらしい。

「勇者様勇者様! それよりももっと聞かせてよ!」

「ワイバーン倒した後どうなったの!?」

そして、皆が勇者の……シャル様というより様付けを嫌がってるみたいだったから僕はシャルさんと呼ぼう。

シャルさんは一人一人の質問に丁寧に答えていく。

「坊主も勇者になりたいのか?」

「いや、あんまりかな」

「がははっ、強がるなよ!」

いや、強がりとかじゃないんだよな。

僕は冒険者になって自由気ままに生きたい。

変なしがらみはあまり心惹かれるものじゃないな。

どっこいしょと年寄りみたいな掛け聲と共にし離れた切り株に腰かけた。

僕のいないところで話は盛り上がる。

そして、勇者様の次はガノフさんにも順番が回ってきた。

一人が頑張ったら強くなれるのかと質問している。

「坊主も頑張れば俺くらいにはなれるぜ?」

「ほんと!?」

「ああ、ほんとだほんと」

豪快に頭をでまわす。

やたらと暴なで方だけどされてるほうは意外にも嬉しそうだ。

すると別の一人がこう言った。

「えー、でも僕勇者になりたいよ!」

するとガノフさんはまたも豪快にがははと笑った後で「そりゃあちと難しいかもな」と、言う。

ちょっと意外だった。

何となく何でも論で通してしまいそうに見えるけど。

「なんで?」

難しいと言われた男の子は疑問を浮かべる。

「勇者ってのは選ばれないと駄目なんだ。俺も昔は勇者に憧れててなあ」

その目にはどこか憧れのようなが見て取れた。

もしかしなくても勇者になりたかったんだろう。

仕方なく冒険者を選んだんだ……まあ、それで功してるから凄いけど。

「村人だけど俺には3つのスキルがあったんだよ」

「すげー!? 3つ!?」

みんながわいわいと騒ぎ出す。

3つか……それは凄いな。

村人は普通1つだ。

2つでも凄いくらいだし、冒険譚の勇者の仲間には、そもそも村人自中々いない。

よほど才能があったんだろう。

「アーシャさんは何個あるの?」

「私は4つね」

おおー! と聲が上がる。

さすがエルフだ。

人間よりも魔力が高いらしく、スキルの平均數も多いとされている。

騒ぎ出した皆に聞かせるようにガノフさんが口を開く。

「だけど俺は勇者にはなれなかった……子供の時は」

悲しそうに語り出すガノフさん。

するとエルフのアーシャさんがガノフさんの話を遮った。

「また始まった……はいはい、ガノフの話は長いんだから」

「なにぉう!?」

そうして言い合いになる二人。

けど険悪というじではない。

どことなく慣れている喧嘩仲間ってじだ。

するとアーシャさんがこちらに気付いて近付いてきた。

一人離れている僕が気になったのだろうか?

目線を落として優しく聞いてくる。

「あなたは何になりたいの?」

答えようとしたところで先ほどまで質問していたやつに遮られる。

「えー、そいつに聞いても無駄だよ!」

「?」

不思議そうにしているアーシャさんに……というより周りに聞こえるように大きな聲で言った。

「だってそいつ能無しだもん! 無能だってとーちゃんも言ってた!」

能無しとは能力なしの略稱……つまりスキルを持っていない人間の蔑稱だ。

職業が村人なのはまだいい。

だけどスキルを一つも持っていないというのは珍しい。

勿論今後取得する可能もあるけど可能は低い。

というのもスキルは元々持っているものというのがほとんどだからだ。

僕は言われ慣れてるから何とも思わないんだけどアーシャさんはそうじゃなかったらしい。

し怒ったように眉を寄せた。

「あなた」

「僕は冒険者になりたいな」

アーシャさんの言葉を遮るように答えた。

それに毒気を抜かれたアーシャさんはし不満そうにしながらも引き下がってくれた。

子供相手に大人げないかもしれないなと思ってくれたのだろう。

こっちとしても変に気まずくなるよりはそっちのほうがいい。

ガノフさんもそれに乗ってくれる。

「おおっ、分かってんじゃねえか坊主! 冒険者はいいぞー! 自由がある!」

「勇者にはないの?」

僕の質問にし頭を捻るガノフさん。

「ないことはないが面倒ごとも多いな」

まあ、そういうものだよね。

語とかは綺麗だけどたまに大人向けの冒険譚を読むと殘酷なこととか々書いてある。

それが嫌で僕は冒険者になりたいって思ったんだ。

しかし、ガノフさんはやたらとしみじみとしている。

まるでそれを知っているかのよう……いや、知っているんだろう。

シャルさんのパーティ仲間なんだし。

「あなただって頑張ったらきっと凄い人になれるわ、例えスキルのない村人でもね」

気付けば頭をでられる。

アーシャさんだ。

これだけ可い人……って年上に言うのも変かもしれないけど容姿の優れたエルフの人に褒められると男としては嬉しく思う。

だけどその言葉だけは否定する。

それは同だ。

努力ではどう足掻いても覆らない壁というのは存在する。

みんなの興味がまた勇者の人たちへと移る。

それを見て誰もこっちを見ていないのを確認する。

僕はこっそりと家へと戻っていった。

村人の僕がいなくなっても周囲は気付かない。

だけど、何となくシャルさんの視線だけが僕のことを見ている気がした。

そうして、家へと帰りベッドに腰かける。

とても古いものでぎしりと今にも壊れてしまいそうなほどベッドが軋んだ。

それを気にすることなく橫になり、鑑定スキルを使った。

―――――――――

レン

職業 村人

スキル なし

―――――――――

最弱の職業村人。

それに加えてスキル部分の空白が寂しい。

これだけ何もないといっそ清々しい。

馬鹿にされるのも當然かもな。

一般的に鑑定はここまでだ。

これ以上の報は表示されない。

だけど僕はさらにスキルに念じて2ページ目を閲覧した。

―――――――――

レン

(裏)職業 勇者

(裏)スキル 鑑定眼、治癒、???、???、???、???、???

―――――――――

そこには裏の表記と村人ではない職業、そして不明なものを含めて7つのスキルが表示されていた。

このことを知っているのは僕だけだ。

今はいない親どころか、神託でスキルを調べた神様でさえ知らない事実。

ハァ、と大きくため息を吐いた。

「めんどくさ……」

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