《加速スキルの使い方!〜年は最速で最強を目指す〜》変わった日常
父さんと母さんが王都に向かって1週間が経過していた。あれから俺は毎日欠かさずスキルの可能を模索すべく、魔力切れギリギリまでスキルを使い続けての特訓をしている。他にも、基礎能力をあげるための訓練も欠かさない。
父さんが出発する前にあの謎のドリンクを置いて行ったので、渋々訓練後に飲んでる。ちなみにコーサに飲ませたら吐いた。
でもそのドリンクの効果はてきめんで、ステータスも結構上がっていた。見た目にもしっかり筋がついてきている。
「なんか最近イクス格良くなったね。し背もびたんじゃない?」
「ん?そう?」
朝食のパンを齧りながら向かい側に座るフィアが話しかけてきた。
「なんていうかこう、ガシッとしてきたじ」
「確かに、兄さんお父さんとの訓練の前より格が良くなってます。腕もしなやかな筋がついてきましたし」
そう言いながら橫に座るティアが俺の腕をってくる。そう言われるとなんか恥ずかしいな。
「むぅ.........イクス、私にも腕らせて」
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「え、そうなると俺飯食べられないんだが」
「じゃあ私が食べさせてあげる。はい、あーん」
「い、いやいや!今じゃなくてもいいだろ!普通に食べさせてくれ!」
フィアが食べさせてくれるのは嬉しいが、橫にティアもいるし恥ずかしいので勘弁してほしい。おまけにフィアのお母さんの、カーサおばさんが「あらあら」って生暖かい目で見てくるし。
「わかった!わかったから!あとでらせてやるから普通に食べさせてくれ!!」
結局、朝食後腕の筋をらせるという條件で、俺は平穏な朝食を手にした。
「どうしたイクス?なんかテンション低いな、よっと」
「朝からフィアとティアが筋を巡ってもめてな、よっと」
「は?筋?」
朝の農作業の手伝いで畑を耕している。今日はコーサの家の畑の手伝い。コーサの家の野菜を良くもらってるからその恩返しだ。
「そういえばお前なんか腕とか肩とか筋ついてきたな?」
「らせないからな」
「お前にいったい何があったんだよ」
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コーサが哀れな目でこっちを見てくる。
「まぁ、いいや。晝までには終わらせて、晝からはスキル練習しようぜ」
「そうだな。ところでフィアとティアちゃんは?」
「あいつらは今カーサおばさんに頼まれて、自警団の詰所にお弁當とデニッシュ持って行ってるよ」
「いいな〜。カーサおばさんのデニッシュすげー味いし。いいよなイクスは。フィアの家泊まってるから毎日デニッシュ食べ放題じゃん。羨ましい」
「あぁ、毎日食べ放題だよ........フィアのな」
「.........すまん。羨ましいなんて言って悪かった。災難だったなお前」
カーサおばさんの作るリンゴのデニッシュはすごく味しいんだが、フィアのデニッシュはハッキリ言って兵だ。
フィアは料理が下手なわけじゃなく、むしろすごく上手いのだが、お菓子や特にデニッシュは兵と呼んでいいほど酷いのだ。一度ティアが食べて気絶したことがある。
本人に言おうとしたことは今まで何度もあったが、フィアの想を求める笑顔を見ると言えず、結局そのままだ。昨晩もフィアがクッキーを焼いてきたが、あれはヤバかった。あともう一枚でも食べていたら確実に気絶していただろう。ティアはクッキーの焼ける匂いがしてきたらさっさと寢た。
「もしかして俺たちの晝飯にフィアのデニッシュはないよな?」
「安心しろ。昨日までに俺が々と菓子を作って材料を消費済みだ。今日のおばさんのデニッシュで最後だ」
「良くやった」
コーサがグッとやってくるので、俺もグッで返す。しばらく雑談しながら二人で畑を耕す。
すると、道の向こうから會いたくない奴がやってきた。
「ハハッ!朝から呑気に農作業か?いいねぇ〜クズスキルは練習する必要もないからな」
「へへ、全くだぜ」
皮たっぷりの笑みでゴーデンとフェスタが俺たちを見て鼻で笑う。ゴーデンは手に木剣、フェスタは木の槍を持っている。ゴーデンは【剣A】でフェスタは【槍B】だから二人揃ってスキルの練習をしに行くのだろう。
「テメェら、いい加減に.....!」
「いいってコーサほっとけ。飽きたらさっさとどっか行くだろ。俺たちはさっさと作業を済ませよう」
こういったことに時間を割くのはバカらしい。それにこういうときは言わせておけばいいって父さんも言ってたし。
そう言って俺はコーサを連れて奧に行こうとする。けど、それがゴーデンには気に食わなかったみたいで、
「何テメェ無視してん、だっ!!」
「イクス!」
ゴーデンが固めた土塊を俺に向かって投げてきた。土塊の速度はそこまででもないが、後ろを向いていたので反応が遅れた。
だけど、
(ーーー【走馬燈】)
心の中でスキルを念じた瞬間、世界がスローになる。通常よりしゆっくり流れる世界の中で、俺は迫る土塊を捉え、その直線上にクワを振り上げる。
パァアンッ!!
クワと土塊が衝突し、土塊がバラバラに砕けて辺りに散った。
その景にゴーデンたちはもちろん、コーサも固まっている。
だが今の俺には別にどうという事はない。父さんの斬撃に比べたらあくびが出るほど遅すぎる。父さんの攻撃は【走馬燈】を使っても視認できなかったほどだ。
「ほら、さっさと続きしようぜ。早く終わらせて、フィアの作った、弁當を食べよう」
「お、おう」
そう言って俺はその場を後にする。わざとフィアの手作りを強調したのは、ちょっとしたお返しのつもり。
事実ゴーデンは俺に攻撃を防がれたことと、フィアの手作りと聞いて、顔を真っ赤にしてその場から去っていった。ざまぁみろ。
「イクス、今の攻撃良く防げたな?」
「【走馬燈】っていうスキルのおかげさ。もっとも、反的に使ったけど、意外と遅かったし使う必要なかったかもな」
「すげぇ.........俺らの中で後天スキルをにつけたのイクスが最初だしな。どんだけキツイ訓練したんだ?」
「1萬回死にかける拷問」
「え..........」
若干引き気味のコーサ。でも本當に死にかけたんだからそれ以外に言いようないし。
「兄さ〜ん!コーサさ〜ん!」
「お晝持ってきたよ〜!」
ちょうど休憩をれようと思ったところで、ティアとフィアがお晝のったバスケットを持って來た。し早いけど、お晝にしよう。それで、晝からはスキルの練習だ。
お晝を食べて、コーサの手伝いも終わったら、ようやくスキルの練習だ。
いつも練習する森に向かう。この間父さんが伐採した木々があるので、もうし深いところまで行って練習する。
「まずは、【走馬燈】の練習をするか」
そう言って俺は森の中に立つ。周りには吊るされた木の幹がいくつもぶら下がっている。
 
俺はそれを一つづつ木剣で弾いて行く。すると木の幹が俺に向けて戻ってくる。それを左にかわすと、今度は左から木の幹が飛んでくる。
左からの幹を今度は木剣を使って強引に進路を変える。そして後ろから迫る幹を右に避けてかわす。
これは父さんが教えてくれた反神経と狀況判斷能力を鍛える訓練で、次々と襲いかかる木の幹を【走馬燈】を瞬間的に使ってかわす訓練だ。
戻ってくる速度が遅くなれば、また木剣で弾いて速くする。ゴウッ!!と橫を掠めて行く木の幹に冷や汗を掻きながらも、冷靜に避ける、避ける。
ただ避けるだけではこの攻撃は躱せない。一つ一つの攻撃を回避するのではなく、回避作を次の回避作に繋げることが大事だ。
右に移しながらしゃがんで頭部への攻撃を避け、前方に転がり真橫からの攻撃も避ける。そこから更に跳ね起き、左右同時に迫る幹に、右は回転して回避して、左は木剣で打ち払う。前の俺ならすでにやられていたが、【走馬燈】にも慣れてきた今なら対処できる。
だが、徐々にスピードは増していき、いい加減【走馬燈】の効果も役に立たなくなってくる。威力ももろに當たれば人男の蹴りくらいの威力はあるだろう。
「グッ!!」
そうこうしているうちに、避けるタイミングを失敗し、右側から木の幹が襲いかかった。
ギリギリ回避したが、腕を掠めてバランスを崩した。
だが危うい均衡を保っていた狀況で、しでもミスすればどうなるか。バランスを崩したところへ、左右前方から木の幹が飛んできた。
「まず、いっ!」
焦る思考の中、それでも幹は無慈悲に迫る。バランスを崩したこの狀況で、三つ同時に対処は不可能。
そうなれば、殘された手段はただ一つ。
「【加速】ッ!!」
加速のキーワードと共に、俺のがグッと引っ張られるように加速する。加速して回避したのは、後方。回避した後、先程まで俺がいた場所で、三つの幹が派手な音を立てて衝突。
なんとか間一髪間に合った。
「はぁ......!はぁ.......っ!あ、危なかった.......。あれ以上の速度は辛いな.......」
ギリギリ自分が反応できる速度がこれだ。父さんなら目を瞑ってでも回避できる。実際に目を瞑っての見本も見せてもらったし。バケモノめ。
「昨日よりかは若干上がってきてはいるな。でも、魔力の消費が予想より多いな.....」
スキルは魔力によって発する。だから必要なタイミングでのスキル発は魔力を管理する上で重要なのだ。俺の【加速】はほとんど魔力を使わないが、【走馬燈】はそこそこ魔力を使う。だから【走馬燈】を瞬間的に使って魔力の消費をしでも抑えるんだ。
「ふぅ.......し休憩したら今度は【加速】スキルの練習をしよう。てゆうか【恐怖耐】スキルをどうやって練習しようかな〜.........帰ったら父さんに聞いてみよ」
切り株に座って休息をとる。もうししたら今度は【加速】スキルを発しながら森を走ろう。
そうして俺は腰を上げ、更に森にっていった。
けど、その時俺は帰っていればよかったと、あとで思った。
夕焼けが森を赤く照らし、木々の木れ日が俺を照らした。
「そろそろ夜になるし、帰ってカーサおばさんの手伝いでもしよう」
日が暮れると森は一気に危険度が増す。この森にはそこまで強力なモンスターはでないけど、熊なんかは出たりもする。
木剣を鞘にれて腰に下げ、荷をまとめてカバンにれる。
あと、訓練中に木にぶつかって落ちてきた鳥も抱える。結構大きな鳥で、すぐに抜きもしたから臭いも殘らない。いやー運がいいな。
「よっし、忘れはないな。はぁ〜腹減った.......この鳥でカーサおばさんに焼き鳥でも作ってもらおっと」
今晩の夕食はし豪華になるなぁ〜なんて思いながら帰路に著く。だいぶ深いところまで來たから帰るのがし大変だ。
「やべ、思ったより長くいたんだな。日が沈む前に森を抜けないと」
森の中がし暗くなり始めた。し速足で帰る。
行く手を阻む木々を避けながら走ると、だんだんと森の出口が近づいてきた。
そして森を抜け、そこにはーーーー
「ーーーえ?」
俺はその景に、持っていた鳥とカバンをその場に落とした。
俺の見つめる先では、村が赤く染まっていた。それは、夕日によるものではなく、
ーーー炎によって。
夕日が村を赤く照らす中、村のあちこちから火の手が上がり、それが更に村を赤く染めている。
「な、なんだよ.....これ........一、何が.........っ」
呆然と立ち盡くす。それでもなお炎は勢いをあげ、それに混じって人の悲鳴と金屬がぶつかる音・・・・・・・・・・・・・が微かに聞こえた。それに良く見ると、いくつかの炎の塊がいているのが見える。
そう、村が襲われているのだ。
「ーーーッ!!フィア!ティア!コーサ!」
そう理解した瞬間、俺は弾かれるように村に向かって駆け出した。
今もなお燃える村に向かって、みんなの名前をびながら。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
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