《加速スキルの使い方!〜年は最速で最強を目指す〜》霧の谷の竜

神界から送られて俺は意識が浮上してくる覚を覚える。

右手をばす覚でかすと確かに腕のがある。

そうして俺は目を開いた。

「ここは.........俺の、部屋か」

見慣れた天井に向かってばした手を下ろし、上を起こす。よかった、俺がここにいると言うことは山賊は対処出來たんだろう。父さんがいるなら一人で山賊なんて壊滅させられる。

「ーーっ!まだ、は痛むな......」

見れば中包帯だらけ。両手を開いてみたり、足をしバタつかせてみるが、どこも折れてはいない。

窓の外はすでに明るく、どうやら俺が神界にいる間に夜が明けたらしい。

「俺は......イクス・アーラス。よし、記憶の混濁は起きてない。ちゃんと阿澄優の記憶もある」

幸いにも記憶の混濁は起きていない。俺の中には阿澄優とイクス・アーラスの二つの記憶があるが、いずれこの覚も気にならなくなるだろう。

俺はベットから降りて窓による。

窓の外から見える村は、悲慘だった。

どこもかしこも焦げて黒くなり、村のどこからでも見える護木も今はもうない。道には破壊された木材の破片と、.......飛び散ったの跡。

今回の襲撃で何名が犠牲になったのか。

それは避けては通れぬ問題だ。

「終わった、んだよな.......」

それに答えてくれる聲はなく。寂しく部屋に響く。

いつも聞こえてくるご近所さんの笑い聲も、

農作業にを出す人の聲も、

朝早くからはしゃぎ回る子供達の聲も、

今日は何も聞こえない。

ギィッと扉が開く音がした。窓から視線をかし扉を見る。

「イク、ス.........?」

口元を手で隠し、震えた聲で俺の名前をフィアが呼ぶ。

俺はいつも通り答えた。

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「おはよう、フィア」

「ーーーッ!!イクス!!」

フィアが走ってきたので俺はフィアをけ止める。が痛んだが、そんなものは気にならない。

「イクス........!イクス.......!」

「なんだよ、フィアは泣き蟲だな」

「だって.....!イクスがこのまま目覚めなかったらって........!そう考えたら、私.......!」

「バカだな。俺がそう簡単に死ぬと思うか?あの父さんの拷問を乗り切った俺だぞ?」

「だからって、心配させないでよ.......」

「......悪い」

俺の腕の中で、泣きながらフィアは一つ一つ心のらしてく。

俺は絶対に離さないというようにギュッとフィアを抱き締める。

腕の中にある暖かさをじると、俺はちゃんと守りたい人を守れたんだと実できた。

あの時父さんは俺が何を求めるかをじっくり探していけばいいと言ってた。

でももう答えは俺の腕の中にある。

俺はこの溫もりを、大切な人を護り切るための力求める。その力が俺のスキルなんだ。

「ほら、フィアそろそろ離れてくれ。これじゃけない」

「.........もうしだけ」

いつもなら恥ずかしがってすぐに離れる場面だが、よっぽど心配を掛けたらしい。

「わかったよ」

もうし好きにさせる事にして背中をポンポンと叩く。ついでに頭も優しくでると、一瞬ピクッと反応したが、すぐになすがままになった。

サラサラと手から零れ落ちる黃金の髪はいつまでもっていたくなるほど気持ちいい。そのまま耳の裏あたりの髪をると、「んっ......」と子貓みたいに頭をちんまりとかすのが可い。

やがてし落ち著いたか、フィアが目の涙をぬぐい俺の顔を覗き込む。すると俺の顔を見て驚きの表になる。

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「イクス、その目.......!」

「目?」

俺はそう言って部屋に置いてある小さな鏡を覗き込む。

すると俺の瞳は赤くなっていた。

元々の緑の瞳ではなく、今は鮮やかな赤である紅をしている。

「なんだコレ.......あ、そういえば.......」

原因に心當たりがあるとすれば、あの戦闘しかない。あの時は無理矢理に視覚能力を上げたため負荷に目が耐え切れず管が破れたんだった。

「大丈夫?なんだったら私が治してあげようか?本領の魔法じゃないけど、水魔法も回復魔法が得意なんだから」

「いや、そこまでしなくてもいいよ。いずれ治るさ」

それにこの鮮やかさは出によるものではない気がする。きっとまだ見に余る加速スキルの力を無理矢理引き出した後癥かなんかだと思う。

まぶたを閉じたり開いたりしてみるが、目の機能に問題はないし、放っておいてもいいだろう。

そんな風に鏡の前で考えていると、階段から誰かが上がってくる音がする。

徐々に廊下の足音が早くなって、扉から誰かが飛び出してーーー

「兄さん!!」

「ぐぼぉあ!」

腹にとんでもない衝撃が!

飛び出して來たティアがロケットのように俺に抱きついて來た。ボロボロの俺のではロケットティアをけ止めることなど出來ず、そのまま床に背中を打ち付けた。

「兄さん!起きたんですね!よかった......本當に、よかったです......」

「わ、わかったから取り敢えず降りてくれ。兄ちゃんが限界なん、だ......」

「きゃああああああ!?兄さん起きてください!」

バシン!バシン!

い、痛い!?頬に響くような痛みが!?

あ、ダメだ、意識が.......

「ティアちゃんストップ!ストップ!?イクスが気絶し掛けてる!?」

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フィアがだいぶテンパってるティアが引っ張って俺を助けてくれた。

なんとかなったと思ったが、今度はフィアの助け方が問題だった。

「んむっ!?」

フィアが俺の頭をに抱えてティアから引き離した。そのせいで俺はフィアのかなに顔を埋めることに。

顔全に沈み込むようならかいと、ふんわりと甘い香りが鼻腔をくすぐる。

「んむー!?んんーー!?」

「ひゃう!ちょっとイクス喋らないで、やんっ.....!く、くすぐったい......!」」

「フィアさん何してるんですか!?ずるい.....じゃなくて不健全です!!早く離して下さい!」

「んむんむんむーー!!(いいから落ち著けー!!)」

俺はなんとか聲を発そうと必死にもがく。だけどしようとすればするほど狀況は悪化して、鼻と口をフィアのに塞がれ若干酸欠気味になってきた。

まずい、の子ので酸欠死なんて笑われもの以外の何者でもない。

俺は必死に抵抗した。

結局その後部屋に來た母さんに助けられた。惜しい気もするが、今のの狀態だとまた気絶しかねない。

母さんの話では襲撃からどうやら2日も俺は寢ていたらしい。神界ではそんなにいた気はしないが、まぁ神様の世界だし。時間とかその辺違うんだろうと納得しておく。

でもの方は2日何も食べてないのは覚えているようで、とんでもない空腹に襲われる。を濡れタオルで拭いてが滲んだ包帯も換して一階に降りる。

「よう、イクス。起きたか」

「父さん」

リビングに出ると、そう言っていつも通りの態度で父さんが聲を掛けてきた。

父さんは立ち上がると俺に歩み寄り、暴に頭をでた。

「よくやった。流石は俺の息子だ」

「............うん」

父さんの言葉に俺は照れ臭くて小さく返す。憧れたあの背中にはまだ遠いけど、今の言葉でし、ほんのし近づけたような気がする。

父さんは満足気に俺の背中を叩く。

「ははは!なんだイクス。もっとシャキッとしろ!お前はちゃんと守ったんだろ!」

「いーーッ!?バカ!あんま叩くな!まだ痛いんだよ!いてッ!!」

「あん?たるんでんじゃねぇのか?確かに俺は褒めたが、闘いに関しては無駄がありすぎだ。無駄や隙が多過ぎる。反省し、ろっ!」

「ぐがっ!?てか、見てたんだったら早く助けろよ!?危うく俺死にかけたぞ!?」

「あれくらいで死ぬようじゃあお前はそこまでだ」

「鬼ッ!!」

ビシバシ叩くたびに骨が痛む。父さんが振り上げた瞬間、一歩下がって回避しようとしたが、逆の手から用に背中を叩かれた。

「ーーーッ!?」

「ほら甘い甘い。こりゃあ傷が回復したら特訓だな」

「大丈夫?イクス」

「か、回復魔法をぉ.........」

死にの狀況にフィアに救いの手を求める。

フィアに回復魔法を掛けてもらってしずつ痛みが引いてくる。

一旦落ち著いたことで、父さんが真面目な口調で言ってきた。

「さて、イクス。お前には知る権利がある。今回の事件をな」

「そうね。ちょうど朝ごはんもできたことだし、食べながら説明しましょう」

「!わかった」

全員で席について朝ごはんを食べ始める。2日ぶりの食事にとにかく食べまくった。

「もぐもぐ.........んっ。それで、山賊は壊滅したの?」

「おう。お前が倒れた後、食料庫の方を母さんが、協會の方の山賊を俺が全部かたずけた。もっとも、協會に駆けつけたときはすでに爺さんが大半をかたずけてたがな」

「母さんの方は?」

「60人くらいだったけど、あんな連中に負けるような母さんじゃないわよ。もう、第六位階魔法一発で倒れるなんてし張り合いがなかったわ」

「いや、おばさん。普通それ死んじゃう」

フィアから聞いたけど、第六位階魔法って確か対軍レベルだったはず.......てか、そんなレベルの魔法を撃ってよく山賊だけを倒したな.....。

「それでだ、イクス。お前が戦ってた大男。実はあいつは今回の山賊のリーダーだ。『銀斧のザーガ』、それなりに名の知れた山賊で元騎士だ。國から賞金もかけられてる」

「え!?そうだったの!?」

まさかリーダーだったとは。でもそう言われて納得できるほどの強敵だった。斧はもちろん魔力作、破壊力。強かったのは確か。

未だに覚えてる、あの時の腕を打つ。あの時は本當に死を覚悟した。

「そんで、今回の襲撃はどうやら俺をよく思わない貴族からの嫌がらせだったらしい。俺と母さんがいないタイミングで襲わせたんだと。俺は平民上がりの騎士だからな。々と面倒なのさ」

王宮騎士団に団するにはそれはもうとんでもなく難しいらしく、そこへ平民の父さんが団したことで団できなかった貴族から反を買ったらしい。

結局その貴族たちは父さんが試合で圧倒的な実力を見せつけて勝って黙らせたらしいが、それでも心チャンスを伺っていたらしい。

俺はそれを聞いた途端頭にがのぼるのをじる。一今回の襲撃でどれだけの犠牲が出たことか。

「そんなくだらないプライドで.......ッ!!」

「貴族ってのはそんなもんだ。プライドで形作り、それが脅かされるならなんだってする。貴族社會ってのは人間の醜い部分の集まる魔窟だからな。心配すんな。その貴族には俺の昔の仲間から徹底的にお仕置きをしといてもらったから、二度とこんなバカな真似はしねぇさ」

父さんはそういうが、俺は湧き上がる怒りを抑えきれない。フォークを握る手に力がる。

下らないプライドでフィアたちが危険に曬された。実際コーサの怪我は相當なものらしく、今も自宅療養中と聞いた。もしあのまま治療が遅れていたら、死んでいたかもしれないのだ。

湧き上がる怒りを必死に握りしめて........フィアが俺の手を握ってきた。

フィアを見ると優しい笑みを浮かべていた。

手を包む溫もりに次第に俺は冷靜さを取り戻す。

「........さて、落ち著いたか?」

「ああ。納得はしてないけどな」

「それでいい。........ま、もうこの話は終わりだ」

そういう言って父さんがイスから立ち上がると母さんも立ち上がってキッチンへ向かった。ついでに父さんは外行きの外套を被る。

「え?どこか行くの?」

「まだ騎士學校の學會議の最中だからな。3日前襲撃を聞いて途中で抜けてきたんだ。そろそろ戻らないとな」

「え?3日前?」

王都からこの村までは結構な距離がある。襲撃のあったのが3日前で、どうやっても間に合うわけがない。

「ちょっと外に出てみな」

父さんが俺たち3人を促して外に出す。家の庭に出ると父さんが「ピーッ!」と指笛を鳴らす。

「...........何も起きないけどーーーッ!?」

と言葉を続けようとした瞬間、俺は迫る巨大な気配にバッとその方向を向く。

フィアとティアも俺の視線を辿る。

その方向は、真上。

雲一つ無く燦々と太が照りつける青空。

そんな太に小さな影ができる。

影はしずつ大きくなり、やがて小さな丸が大きくなるにつれて明確な形を表す。

それは生きだった。

巨大な軀に長くしなやかに揺れる尾。そしてよりも大きい四枚の翼。

頭部にある二つの瞳は逆の影の中でも怪しく紅に輝く。

俺はそれを知っている。俺だけじゃなく、誰もが子供の頃に聞いたことあるその名は、

「竜......!!」

俺のつぶやきと同時に、四翼の竜は俺たちの前に降りてきた。

巨大な翼をはためかせると猛烈な風が地面に叩きつけられ、思わず転んでしまいそうになる。

幾度かの羽ばたきの後、竜は地面に足を下ろした。ズンッと響く揺れにフィアとティアは今度こそ転んで餅をついた。けど二人はそんなことは気にならないのか、初めて見る竜に唖然とした表で前を見つめていた。

それは俺も同じ。俺も目の前に立つ竜を見據える。

長十數メートルはあろう巨に、それと同じくらいの大きさの四枚の翼。に反してしく銀に発する寶石のような鱗をに纏い、翼の側は燃える焔のような紅

頭部は鋭く尖った歯が並び、そしてその瞳はまるでルビーのようにしい寶石のような紅の赤。だがその奧底には見えぬ深みがあるような引き込まれる凄みがある。

竜が俺を見つめる。途端ただでさえ強大な滝ともいうべきプレッシャーが俺を襲う。俺は思わず唾を呑み込んだ。

圧倒的強者。竜はすべてのやモンスターの頂點に位置する最強の生

俺は今その最強の前に立っている。

するとやがてあれほど強かったプレッシャーが消えてなくなる。俺はホッと息を吐く。

しの沈黙の後、竜は首をあげ口を開き、そして

『ふむ。なかなか肝が座っているなヴィラン。こいつがお前の息子か?』

「!?しゃ、しゃべった!?」

『何を言うか。竜だって喋るわ』

軽い口調で言う竜。人間との意思疎通ができる竜は長い年月を経て知を獲得した特別な竜のみ。と言うことはこの竜は竜の中の上位種《古竜》ということになる。

竜は年月が経てば経つほど強く、存在の格が上がっていくからだ。

「にぃさん、竜です......!しかも喋る竜なんて.....!」

「すごい.......綺麗.......!」

とフィアとティアが興した様子で目の前の竜を見る。普通は竜を見たら逃げ出すようなものだが、この竜はしく何より俺たちに対して敵意がない。むしろ若干好意的な雰囲気もある。

「お前たちは竜を見たのが初めてだったな。紹介しよう。こいつは俺のペットのラグネス」

『ヴィラン。いつから私はお前のペットになった?私は貴様の相棒として契約したはずだが......。まぁ、いい。その話は後だ。改めて、私はヴィランの相棒、ラグシャード・イグネスだ」

「「「ラグシャード・イグネス!?」」」

ラグシャード・イグネス。

その名は誰もが一度は聞いたことのある名前だ。

その名は【聖と霧の谷の寶竜】という話に登場する竜の名前。萬能の霊薬を求めて霧の谷を訪れた聖に、聖の涙の結晶と引き換えに霊薬の元となる寶石でできた鱗を與えたと言われる《銀紅の寶竜》。伝説上の竜の名前だ。

流石に冗談だと思ったが、竜の持つ存在は本だし、伝説に記述してある特徴とも一致する。

そんな驚いた表で俺たちがラグネスを見ていると、ラグネスはし誇らしげな顔で父さんに向き直る。

『うむうむ。これが普通の反応よな?ヴィラン。貴様、私が最初に名乗った時なんと言ったか覚えているか?忘れもせんぞ!私を見て貴様「今晩はバーベキューだ!!」と言っただろう!?』

「あー、そんなことも言ったな。まぁ冗談だって冗談。俺が大切な相棒を食うわけないだろ?」

『さっきペットと言った人間が何を言うか!3日前にはいきなり村まで最高速で飛ばさせておいてそのまま放置とか........貴様しは私を敬ったらどうだ!?』

「ええい!うっせーよ!この好きが!この間フィオーレの手作り弁當食わせてやっただろうが!」

『誰が好きか!この脳筋家族バカが!』

「んだとこの!!」

なんだかすごく低レベルな言い爭いが始まった。ただ低レベルでも二人ともとにかく強い。今も父さんの拳とラグネスの角が激突して衝撃波がビリビリと空気を揺らす。

フィアとティアは父さんと喧嘩するラグネスを見てぽかーんと唖然している。それもそうだろう。話では寶竜は気高くなおかつ兇暴な力を持っていると言われるのに、目の前の景はただの子供の口喧嘩だ。

「あらあら〜?何してるのかしら二人とも〜?」

「『い、いえ!なんでも!』」

そんなのんびりとした聲とともに気が付いたら母さんがやってきていた。

「ほら二人とも喧嘩しない。夕方までに戻らないとシルルカさんに怒られるわよ?」

「げっ、あのババァに怒られるのだけは免だ」

『う、うむ。私も勘弁したい』

シルルカさんという名前を出しただけで二人が靜かになった。父さんと伝説の竜をビビらせるほどのシルルカさんとは一に何者なんだろうか。

「はいあなたお弁當と剣。核がし傷んでいたから著いたら鍛冶屋にもっていきましょう」

「ありがとうフィオーレ。ほらラグネス、弁當くくるから首出せ首」

『フィオーレの弁當なら仕方ない。......あとで私にも寄越せよ?』

「安心して。ラグネスの分もちゃんと用意してるから」

『本當か!?』

弁當を首につるしながらウキウキ気分のラグネス。完全に母さんに飼いならされてるな。

「よし。それじゃあ行くとするか。イクス。數日家を空けるが、頼んだぞ」

そういうと父さんは腰に吊るした銀の長剣を鳴らしながらラグネスの背に乗る。

銀と紅に輝く伝説の竜の背に乗る父さん。その姿は竜をり戦う騎士、竜騎士のようで俺はその姿がとてもまぶしく思う。

年よ』

「お、俺?」

『そうだ。お前以外に誰がいる』

ラグネスは紅る寶石のような瞳を俺に向ける。

『お前の戦いを私は見ていたが、お前にはまだ力がない。お前の父親と比べお前には力も技もまだまだ何一つ及ばない。私は今までいろいろな人間と戦ったことがあるが、そのどれもがお前より格段に強かった』

ラグネスの言葉に俺は拳を握る。確かにそうだ。

俺が父さん勝てるところなどない。あの時も父さんがいれば俺みたいに苦戦することなく簡単に問題が解決できていた。

數々の英雄を見てきた竜に言われる言葉は重みが違う。

だけど、俺は今更そんなことを言われたくらいで折れたりはしない。

なぜなら、俺には大切なものがあるから。

大切なものを守るための才能スキルを信じることができるから。

俺は何も言わず紅い瞳を見つめ返す。想いを乗せるように。それだけで十分。この竜には一つの言葉もいらない。

『だが.......良い瞳をしている』

「え?」

ラグネスは息を吐くと父さんを一瞥して再び俺を見る。

『死をいとわず大切なものを守り抜くと立ち上がったあの気迫と姿。あの姿はお前の父親にも、今まで戦ってきた人間にも劣らぬ姿であった。.......やはりお前はこの男の息子なのだな。私に挑んできたときのヴィランにそっくりだ』

「......余計なこと言ってんじゃねぇよラグネス」

ラグネスの言葉に父さんが反応する。俺はその言葉に目を見開いた。

憧れた後ろ姿父さんに似ていると、生きる伝説がそう言った。

その言葉が何よりも嬉しい。心が満たされるような覚がする。

『誇れ年よ。お前の姿は誇るに値するものだ』

「わかった。ありがとう....!」

ラグネスは俺の反応に満足したのか頷くと、巨大な翼を空に向かって立てる。そして振り下ろすととてつもない量の風が巻き上がり、竜の巨が持ち上がる。

翼をはためかせるたびに太を反した鱗がきらびやかにる。

「それじゃあ行ってくるわ。留守番頼んだぞ」

「お土産買ってくるからね~。みんないい子にしてるのよ~」

どんどん上昇していくラグネスの背から父さんと母さんの聲が降ってくる。見上げようとすると逆が眩しく、見えるのは影のみ。

でもはばたく竜に駆る父さんと母さんはカッコよかった。

ラグネスが強く羽ばたくとものすごい勢いで影が小さくなっていく。

俺たちはお互いに頷くと大きく息を吸って聲を上げた。

「「「いってらっしゃーーいっ!!」」」

聞こえたかはわからないが、見える空の中で竜の翼が大きく羽ばたいた。

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