《加速スキルの使い方!〜年は最速で最強を目指す〜》旅の始まり
あれから1ヶ月。俺たちは未だ父さんと母さんの強化訓練中。
1ヶ月間ひたすら地獄のような訓練を続けていた。
ステータスも今ではかなり上がり、スキルもいくつか増えた。これも訓練の賜だ。
「《撃ち據え破ぜろ》!【破水】!!」
フィアが一節で唱えた水魔法が父さん目掛けて飛んでいく。
フィアは最初は三節で唱えていた【破水】も今では一節で唱えられるようになっていた。
唸る水流は父さんを呑み込むべく襲い掛かる。だが水流は父さんの目の前でまるで何かにぶつかったかのように方向を変えていった。
「ふふっ、いい最初に比べて魔法行使速度も上がってきてるけど、まだまだよ」
母さんが右手を突き出している。水流をそらされたのは母さんの風魔法だろう。
「くっ!イクス!コーサ!」
「「おう!」」
フィアの攻撃が防がれたが、構わず俺とコーサは走り出す。
「うぉおおおおおーーッ!!」
一方先に飛び出したのはコーサ。コーサは新たに習得した【強化】スキルを使って先制攻撃を仕掛ける。
だが、
「コーサも筋は良くなってるが、もっと力の流れを意識しろ」
父さんはコーサの全力の拳をいとも簡単に拳でけ止めた。
「まだだコーサ!【加速】!」
俺はコーサに【加速】スキルを付與する。付與するのは【拳撃加速】
「いくぜぇえええええ!!」
「おっ、」
俺の【加速】スキルのアシストをけて目にも留まらぬ連続攻撃を繰り出すコーサ。
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最初は加速合に戸っていたコーサだったが、俺が加速を調節できるようになってから、コーサの対応できる最高速が出せるようになった。
この複合技は父さんにもまだ見せていない技。これで倒せるとは思ってないが、それでもしは足止めになる。
その隙に俺は父さんの後ろに回る。
「【加速】【斬撃加速】!!」
俺は凄まじい勢いで父さんに背後から薄すると、腰から二本・・の木剣を抜く。
「ぜぇあああああああっ!!」
「よっ、ほっ」
俺とコーサを合わせて四つの攻撃を父さんはかわしていく。
だが俺は構わず剣を振るう。まるで次の斬る位置がわかるように。
そう、俺はスキルを覚えたのだ。その名は【雙剣】。
本來剣を二つで扱うのは非常に難しい。右手と左手で別々の剣をかし、さらにはそれを連続して攻撃に繋げなければまともに使えないのだから。
故にスキルとして習得するのはとても難しく、稀なスキルなのだが俺にはそれができた。
それは【報処理能力加速】。処理速度を加速させることによって二本の剣をることにも功した。
さらに俺は【長加速】というものも発させており、そのおかげで普通上がりにくいスキルの練度も通常より速く上がった。
そういったこともあり、俺は比較的簡単に習得することができた。
「行くぞコーサ!」
「おう!」
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コーサと連攜して父さんを追い込む。連攜攻撃もだいぶ上手くなり、今ではお互いに遠慮せず全力で行くことができる。
1ヶ月間の訓練と【長加速】の影響もあり現在の【雙剣】はランクF。
だが、【斬撃加速】や【報処理能力加速】によって今の俺の【雙剣】スキルはEランクレベルに匹敵するほどになっている。
「ハハッ!なかなかの連攜じゃねぇか!削りだがお互いに上手く相手の行を制限している」
「そんな事っ、言いながらっ、軽々と避けてんじゃっ、ねぇよ.......ッ!」
左右同時の斬り込み。だが父さんは「ほっ」と地面を蹴って離れる。
「くそっ!」
「もう一度行くぞコーサ!」
「お前ら。俺に集中するのはいいが、周りを見ろよ?」
「ーーー二人とも避けて!」
その瞬間暴風が俺とコーサを襲う。咄嗟に後ろに跳ぶ。フィアの一聲がなければ確実に呑み込まれていた。
しかし完璧に避けられた訳ではなく、暴風によって俺とコーサは派手に吹き飛ばされた。
「母さんか!」
「正解。イクスとコーサくんももうし周りを見たほうがいいわよ」
「ごめん二人とも......!抜かれた......っ」
母さんの魔法を阻止していたフィアが膝をついて倒れている。顔が真っ青なことから魔力欠乏を起こして、母さんを止められなかったんだ。
「フィアちゃん、魔法で迎撃する際はよく見なさい。魔法にいちいち同じ威力の魔法をぶつけて相殺していたらキリがないわよ。小さい威力と魔力で魔法を逸らしたりして迎撃することも重要。適した魔法選択と魔法分配をもっと鍛えなさい」
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「は、はい.......っ」
息絶え絶えの狀態のフィア。こうなった以上フィアの補助はめない。殘るは俺とコーサのみ。
「コーサ。まだ、行けるか?」
「なんとか.....。けどもう魔力も力も、保たないぞ」
「だな。俺もそろそろ魔力が盡きそうだ」
俺の魔力容量は今現在魔法師のフィア並みにある。それだけあってももうすぐ盡きそうだ。
「さーて、殘すはお前ら二人だし。そろそろ本気と行こうか」
ここに來て初めて父さんが腰の木剣を取る。その橫には杖を持った母さん。
今日も今日とて勝てなかった。
「「「..........!!」」」
目の前の飯に俺たち三人は黙々と食べすすめていく。作りは食べること、と母さん特製の野営飯を凄い量平らげていく。
いつも訓練は気絶ギリギリのハードなもので、毎回の食事はこんな風だ。
「そんなに急がなくてもまだまだありますよ」
ティアがとり寄せてくれる端からドンドン食べる。コーサは前から結構食うが、フィアはかなり食べるようになった。食べたカロリー全て訓練で消化するからだろう。
『ティアよ。頼まれていた木の実取ってきたぞ』
「ありがとうございますラグネスさん」
ラグネスが首に下げた袋からオレンジの木の実を用に出してくる。訓練中の間ずっと遊んでいたからかティアとラグネスはすごく仲良くなっている。
「フィオーレ。おかわり」
「はいはい。ふふっ、あなた口元にソースが付いてますよ」
「じゃあフィオーレが取ってくれよ」
「もう、子供たちの前でしょっ。.......それは帰ってから、ね?」
子供の前であってもこの二人の惚気る。だけど今はそんな事より飯だ!飯が俺を呼んでいる!
そうして食べ進めていき、大鍋いっぱいのシチューとは綺麗になくなった。
食後の飲みとして疲労回復効果のあるお茶を飲みながら、今日の訓練の反省會を行う。
「イクス。お前は相手を追い込もうとして深りし過ぎる。相手が離れたからと言ってた
直ぐに追いかけるな。それだと敵の思うツボだ」
「ぐっ.....。た、確かに......」
そのせいでさっきも母さんの魔法に引っかかった。
「コーサはもっと一撃一撃の攻撃を意識しろお。踏み込み、腰の捻り、腕、拳、力の伝わりを常に意識しておけ。一連の作をよりスムーズにしろ」
「は、はい.....」
「フィアちゃんはさっきも言ったけど魔力配分と適した魔法を選択する判斷能力をもっと鍛えなさい。魔法師は狀況に応じてに考えてかなきゃダメよ」
「わ、わかりました......」
二人も撃沈。俺たちはこの1ヶ月間こんな調子だ。訓練でコテンパンにされては厳しくダメ出しを喰らう。
反省を活かして行しても、今度は別の課題が次から次へと出てくる。でもそのおかげでスキルの練習だけではわからないこともわかってきた。
「まぁでも三人もと最初に比べたら隨分と長したな。これなら學園に行っても十分通用するはずだ」
「學園、か..........」
そうもう後1ヶ月もしないうちに學園への學試験がある。それぞれがどう進路を決定するかの大切な時期だ。
「それでイクス。お前はどうするんだ?」
「俺は.......」
みんなの視線が俺に集まる。前は俺はスキルのせいでどこへ行くこともできないと諦めていた。
あの時俺はどうするかなんて考えることはできなかった。
けれど今は俺には俺にしかない才能スキルがある。だからその才能を一杯活かせるものになりたいと思う。
「俺は、冒険者學園に行く」
俺はスキルに制限のある騎士學園と魔法學園には學できない。でも実力さえあれば冒険者にはなれる。冒険者として強くなれば、道は違えど父さんに追いつくことはできる。
「.......そうか」
そう言った父さんは優しい表で頷いた。母さんも嬉しそうに微笑む。
と、ここでコーサとフィアが話し掛けてくる。
「あー、っとイクス。実は俺も冒険者學園に行こうと思ってるんだ」
「実は私も」
「え!?お前らもか!?」
てっきり二人は騎士學園と魔法學園に行くものだと思っていた。スキルもあれば父さんの訓練のおかげでそれぞれの學園でも十分に通用するはずだ。
「なんでだ?」
「俺確かに強くなりたいってのもあるんだけど、騎士の堅い風習とか苦手だし、それなら冒険者として活躍したいなーと」
「私も魔法學園で魔法ばっかり研究とかしてるのはなんか違うなって。どうせイクスは冒険者學園に行くだろうってことで、それなら三人で冒険者やる方がいいねってコーサと話してたの」
「そうだったのか.......」
「だからよイクス。俺たちと一緒に冒険者目指そうぜ!」
そう言って手を差しべてくるコーサよフィア。
二人にはそれぞれ自分の才能があるのだからと諦めていたが、俺は心のどこかで三人での學園生活をんでいたかもしれない。二人のその申し出は俺の心を大きく揺さぶった。
どうしようもなく嬉しさが込み上げてきて、俺は目頭がし熱くなるのをじる。
この気持ちをどう表現したらいいか。
上手く表現できないから俺は二人の手を強く取ることでこの気持ちを現す。
「ああ!よろしくな!」
「おう!」
「うん!頑張ろうね!」
二度目の人生でも俺はいい友人を持った。一緒に同じ夢を追い求める仲間。
あの時転生したことは間違いではなかったと今この時ほど強く思ったことはない。
「イクスはいい仲間を得たな」
「ええ。そうね」
笑い合う俺たち父さんと母さんが微笑みながら見守る。ティアとラグネスも同じように喜んで笑っていた。
「そうなると絶対に落ちるわけにはいかないなお前たち。だったら學までの殘り、冒険者としての心得や戦い方をみっちり教えてやる!しっかりついて來いよ?」
「「「はいっ!!」」」
殘り後僅か。俺たちは今同じスタートラインに立った。
♢
「いよいよか」
「なんかあっという間だったね」
「そうだな」
訓練から數十日後。學試験日一週間前ということで俺たちはいよいよ村から旅立とうとしていた。
父さんと母さんからの餞別として、昔使っていた予備の魔法鞄を背負っている。
魔法鞄とはマジックアイテムの一つで、魔法によって鞄の容量を大きくして通常より多くのがる鞄だ。もらった鞄は小部屋一つ分くらいの容量だそうだ。
正直とてもとてもありがたい。魔法鞄は珍しくはないが、そこそこ値段はするらしいからな。
「全員準備はできたか?」
「ああ。バッチリ。それで、馬車はいつ頃來るんだ?」
「もうすぐ來ると思うから待ってろ。っと、馬車より先にお客さんだ」
「ん?」
父さんが向く方向を見ると、村の方からユウとユウのお母さんが小走りにかけてきた。
「イクスおにぃちゃん!」
「ユウ?どうしたんだ?」
急いで來たのかし息が荒い。息が整うのを待ってあげると、ユウのお母さんが代わりに言う。
「あのねイクスくん。この間の事ユウがお禮を言いたいって言ってたの。イクスくんたち最近朝早くどこかへ行っちゃうから言う機會がなくてね。ほら、ユウ」
「イクスおにぃちゃん!コレ!」
「ん?コレは?」
しゃがんで目線を合わせると、ユウが手に持った袋を渡してくる。
「ユウがイクスくんにプレゼントしたいってお菓子を焼いたのよ」
「へぇ!」
袋を開けてクッキーのようなお菓子を取り出す。形が崩れていたりし焦げでいるところはあるが、ユウが一生懸命頑張って作ったのだとわかる。
一枚取って食べる。
「うん!すごく味しいよ。ありがとうねユウ」
「えへへ〜!イクスおにぃちゃん!ユウとおかあさんをたすけてくれて、ありがとう!」
「私からも。本當にありがとうねイクスくん」
二人の謝の言葉。俺はが熱くなるのをじる。気恥ずかしい気持ちではあるが、素直に嬉しい。
「こちらこそありがとうだよ。ユウがあの時大きな聲でフィアの名前を呼ばなかったら、俺はみんなを守ることができなかったんんだから。よく頑張ったねユウ」
あの時はとにかく教會へ行く事ばかり考えていて、意識が集中していた。もしあの時ユウが聲を上げずに気付けなかったらと思うとゾッとする。そう言う意味ではユウは俺の救世主とでも言えるのだろうか。
「そうだね。あの時私は前に立つ事だけしか考えてなかったから、ユウが聲を上げてイクスを呼んでくれなかったら私たち死んでた。私からもありがとうねユウ」
「俺はけないけど気絶してたから覚えてないけど、そう言う事なら確かにユウのおかげでもあるな。ありがとうユウ」
「フィアちゃんとコーサくんもありがとうね。ユウを庇ってくれたんでしょ?コーサくんは特に酷い怪我を負ったって言うし、本當にごめんなさいね」
「い、いやいや!大丈夫です!あれは弱い俺が悪いだけだから!それに今はこの通りピンピンしてますし!」
どうやらコーサ褒められるのは苦手な様子。フィアもし恥ずかしそうにしている。
「コレみんなで食べてね。こっちもユウが一生懸命作ったから」
「あっ!ありがとうございます!」
フィアがけ取った袋には俺の貰った焼き菓子以外にも々とっているっぽい。これは道中が楽しみだ。
「それじゃあそろそろいいか?馬車のおでましだ」
父さんの言葉と同時に「ヒヒィーン!」と馬の鳴き聲が聞こえた。村のり口には一つの輸送用の馬車が來ていた。
「ヴィランさーん!遅くなってすいません!」
馬車から一人の男が出てくる。
一見闘いとは無縁のただの商人と言った風。
だけど幹はスッとしっかりしており、護衛もなしで王都からここまで來れる事を考えると、かなりの実力者なのかもしれない。
「ルーアテ久しぶりだな。元気にしてるか?」
「おかげさまで。ヴィランさん、工房の旦那から荷を預かってきましたよ」
「サンキュー。荷はそこへ置いておいてくれ。それで早速で悪いんだが、息子たちを王都まで頼むぞ?」
「もちろん!お任せください!息子さん達私が責任を持って必ず王都まで連れて行きます!」
ルーアテと呼ばれた男は父さんの頼みに自信満々に頷く。
ルーアテの父さんに対する尊敬の念がありありと伝わってくる。一どういう関係なんだろう?
「ルーアテ・ファルモットーと言います。王都で商人をやっています。イクスくん、王都までよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。ファルモットーさん」
「自分のことはルーアテと呼んでください」
「じゃあそうさせてもらいます」
子供の俺相手でも敬語なのは彼の格なのか。それに言葉の端々から彼の育ちの良さがわかる。どこか大きな商會の人間なのだろうか。ますます謎が深まる。
ルーアテはコーサとフィアにも同じように挨拶して、俺たちは馬車に乗り込む。
馬車の中は広くてしっかりとした作り。荷車を引く馬も力強くて大きな馬だ。
「それじゃあ出発しますね」
父さんが一歩前に出てくる。
「イクス。お前は今後そのスキルの特異故に厄介な事に巻き込まれるかもしれん。でも忘れるな。お前には頼れる仲間がいて、信じるべき才能スキルがある。その事を絶対に忘れるんじゃないぞ」
「わかったよ父さん」
今まで様々な闘いを経験してきた父さんだからこそ、俺のに降り注ぐ事を十分に理解しての言葉だろう。
もちろん俺も覚悟はしている。
あの時、このスキルを選んだ時點で、俺の覚悟は決まっているからだ。
父さんが拳を向けてくる。
ーーーだから俺も力強く拳を當てた。
「それじゃあ出発します!」
乾いた手綱の音で馬が走り出す。
力強い馬力で馬車がき出し、俺たちは村から離れていく。
り口から手を振ってくれるみんなに手を振り返す。
「イクス」
「ん?なんだ?」
「これから、楽しみだね!」
旅立ちに浮き足立つフィア。初めての冒険とも言えるものにとてもワクワクしているようだ。
コーサも同じ様子。
もちろん俺も楽しみだ。第ーの人生では味わえない冒険というものに俺は今立っているのだ。ワクワクしないわけがない。
目指すは王都の冒険者學園。
俺、イクス・アーラスの旅は始まったのだ。
虐げられた奴隷、敵地の天使なお嬢様に拾われる ~奴隷として命令に従っていただけなのに、知らないうちに最強の魔術師になっていたようです~【書籍化決定】
※おかげさまで書籍化決定しました! ありがとうございます! アメツはクラビル伯爵の奴隷として日々を過ごしていた。 主人はアメツに対し、無理難題な命令を下しては、できなければ契約魔術による激痛を與えていた。 そんな激痛から逃れようと、どんな命令でもこなせるようにアメツは魔術の開発に費やしていた。 そんなある日、主人から「隣國のある貴族を暗殺しろ」という命令を下させる。 アメツは忠実に命令をこなそうと屋敷に忍び込み、暗殺対象のティルミを殺そうとした。 けれど、ティルミによってアメツの運命は大きく変わることになる。 「決めた。あなた、私の物になりなさい!」という言葉によって。 その日から、アメツとティルミお嬢様の甘々な生活が始まることになった。
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