《神様との賭けに勝ったので異世界で無雙したいと思います。》第16話 テスト

場所は変わり王城の中庭。

今日はこの場所を貸し切り簡単な実戦形式のテストを行うらしい。

どれだけ戦えるかの確認だね。

「俺は王國騎士団副団長のゼンだ、これから君たちには簡単な魔との実戦訓練を行ってもらう」

と、軽鎧を見に纏った短髪のおじさんが僕たちにそう言った。

だけどそのは鍛えられているものだということが分かる。

裝備を著ていても隙間から見える筋は大きく隆起しているのがはっきりと見えた。

姫木さんは相変わらず冷靜に見える。

だけど栗田さんと秋山さんはどこか張気味……し怖がっているようだった。

「しかし、その前にどの程度戦えるか確かめないといけない。俺と手合わせをしてもらいたいんだが誰から來る?」

「では私が」

と、即座に手を上げたのは姫木さん。

さすがにあの時の刀は持ってきてないらしい。

だけど訓練用に用意されている木剣も當たれば怪我をしてしまうと思う。

そう思うとちょっと張してしまう。僕が戦うわけでもないのに。

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だけど姫木さんに気負った様子はない。

「スキルの使用は自由だ。だが大怪我を負わせるような攻撃は止だ。但しそれ以外は何でもアリ。こちらもできるだけ手加減はするが実戦だと思って本気でかかってきてくれ」

「分かりました」

すると姫木さんは木剣を靜かに構えた。

上段。

上から振り下ろす形だ。

綺麗だった……剣道とか剣のことはよく知らないけど、素人目にも分かる。

あれは完璧だ。

僕の目にはこれ以上ないと思えるほど完されているように映った。

「それじゃあこの小石が地面に落ちたらスタートだ」

お互いが向き合った狀態で構えている。

二人の距離は5m程度。

心なしか気迫で二人が大きく見える気がする。

ひょいっとゼンさんが空高く小石を投げる。

やがて落下してくるそれを僕たちはじっと見ていた。

そして―――

「ふっ!」

ゼンさんが踏み込んだ。

地面を強く踏み込むとその勢いを利用したまま突っ込んでいく。

シンプルすぎるくらいシンプルなその作。

だけど単純に―――速い。

瞬きした次の瞬間には姫木さんの目の前にゼンさんがいた、とでも言えば分かるだろうか。

とにかく一瞬だった。

しかし、姫木さんが一瞬ブレたような錯覚をじた。

きは見えた。

だけどなんだろう。

不思議とスローモーションで再生された。

まるで走馬燈を見ているような覚。

―――ストン。

気付けば姫木さんの手に持っていた木剣が振り下ろされていた。

え……? という栗田さんと秋山さんの唖然とした呟きが隣から聞こえてきた。

ゼンさんは小さく汗をかきながら降參の姿勢を取る。

「なるほど……こりゃあ、勝てないな」

ゼンさんの武は真っ二つになっていた。

木剣の斷面はらかで、まるで日本刀で切り捨てられたかのような。

木剣で木剣って切れるの……? いや、木剣も剣として扱われるなら剣姫スキルの力もあるんだろう……にしても姫木さんのきの無駄のなさには恐怖すら覚える。

だけど姫木さんのステータスってそんなに高い項目無かったと思うけど……

ううむ、この世界のステータスについてはまだ教えてもらってないから何とも言えない……だけどステータスが全てってわけでもないのだろうか。

ていうか、えー……姫木さん……強すぎない?

そのまま頭を下げて、ゼンさんにアドバイスのようなものをしている。

年下の姫木さんからの指摘。

だけど、ゼンさんは真摯な態度でそれを聞きれている。

「それなりに自信あったんだがな……俺もまだまだってことか。鍛え直しだな」

「いえ、全力を出さなければ負けていました。それに弛まぬ努力を惜しまないその姿……尊敬します」

「ハハ、勝者に言われたのに嫌味に聞こえないってのが凄いよな……まあ、ありがとな」

そうしてゼンさんが新しい武を手に取る。

「さあ、次は誰だ?」

おおう、怪我がなかったとはいえいきなりだね。

僕だったら腰が抜けてしばらくけないかもしれない。

だけどそんな僕を見て姫木さんが冷ややかに言ってくる。

「佐山悠斗、あなたにあれほど真摯に自分に向き合うことは出來ますか?」

「ん?」

突然の言葉に反応できずにいると、イラついたように姫木さんが続けてくる。

「あなたは、この世界で遊びばかり……本気で使命を果たす気があるんですか?」

「あーどうなんだろう」

リリアのことを言っているんだとじてつい曖昧な言いになってしまう。

だけど姫木さんは後半の言葉に対するものだと思ったらしい。

語気をしだけ強くする。

「私と手合わせをしませんか?」

「姫木さんと僕が?」

「ええ、まさか逃げるとは言いませんよね?」

いや、正直言いたい。

逃げたいです。

だって姫木さん怖いし。

「ふん、勝てない相手には立ち向かわないんですね。軽蔑しますよ」

「いや、そっちじゃなくてさ」

「?」

「僕が勝ってもいいのかなーって」

空気が凍った気がした。

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