《神様との賭けに勝ったので異世界で無雙したいと思います。》第19話 別行
僕と姫木さんが戻ると秋山さんと栗田さんが駆け寄ってきた。
姫木さんが頭を下げる。
「すみません、ご心配をお掛けしました」
そんな姫木さんに秋山さんが笑いかける。
「き、気にしないで下さい。それよりそっちは大丈夫でしたか?」
姫木さんはどこか清々しい顔で頷いた。
よかった……正直やりすぎたと思って焦ったんだよね。
だけど立ち直ってくれたようで何よりだ。
しかし、そこで栗田さんが僕を見る。
「ほらっ、佐山先輩も謝ってください!」
言われてみれば確かに謝ってなかった。
勝負前にも煽りまくったことだしここは素直に謝るべきだろう。
僕は姫木さんに謝った。
すると……
「いえ、謝る必要はありませんよ」
ふふっ、と笑みを浮かべる。
今一瞬「誰!?」って、思った。
さっきからだけど僕に笑いかけてくれる姫木さんって今日が初めてな気がする。
「むしろ私の方こそ謝らないといけません。さっきも言いましたが今までひどい態度を取ってしまいすみませんでした」
それを見て目をぱちくりさせる栗田さんと秋山さん。
栗田さんが慌てた様に言ってくる。
「な、なんか仲良くなってません?」
「そうかもしれませんね」
そう言ったのはまさかの姫木さん。
姫木さんの脳でどんな化學反応が起こったのか気になるところだ。
だけど栗田さんはし複雑そう。なぜだろう?
秋山さんがそれを見て長い前髪から見える瞳をキラキラさせてた。
「ら、ラノベみたい……!」
うん、僕も今回ばかりはそう思った。
テンプレではあるけど、現実でもこういうことってあるんだね。
そして、ゼンさんもこちらにやってきた。
心配させてしまっただろうことに対して姫木さんがゼンさんに謝罪する。
「ゼンさん、すみませんでした。突然抜けてしまい」
「ああ、大丈夫だ。それより吹っ切れたみたいだな」
心なしかゼンさんとの距離も僅かにまっているように見える。
さっき姫木さんが男がどうとか言ってたけど心境の変化でもあったんだろうか。
なんにせよ雰囲気がらかくなっているようで僕としては接しやすい。
「さて、さっそく続きを……と、言いたいところだが、確か秋山詩織と栗田真子のスキルは魔導と聖だったな」
ゼンさんが確認する。
確か魔導が魔法の取得がしやすくなるのと威力向上。
聖スキルが回復と補助だったかな?
「この二人に関しては待っている間に簡単に確認しておいた。勇者とはいえ戦闘スキルがないなら単獨での実戦はまだ危険だろう」
ん? 栗田さんの聖スキルは補助だから分かるとして魔導は戦闘スキルじゃないのか?
いや、違うな。
現時點ではって意味か。
よく考えたら魔導スキルも補助スキルだ。
魔法を覚えてないなら意味のない力。
それなら秋山さんは戦闘の前に魔法を覚えるのが優先されるだろう。
「そこで君たちには別行をしてもらう。連攜も大事だが個々の地力がないと連攜もクソもないからな」
ゼンさんが皆に簡単なアドバイスとこれからやることを伝えていく。
秋山さんは主に魔法の知識を座學で習ってその取得を目指す。
栗田さんと姫木さんは二人で組んでさっそく簡単な魔との戦闘らしい。
王城に殘る秋山さんと違いこの二人は外へ行くらしいが、それにはゼンさんと數名の騎士の人がついていってくれるそうだ。
し心配ではあるけど姫木さんは強い。
栗田さんもついてるなら回復は問題ないだろう。
何より経験富な騎士の人たちが護衛してくれるなら心配無用に思う。
って、あれ?
「あの、僕は?」
「君に関しては、団長とマンツーマンで訓練をしてもらう」
団長? って誰だ?
そういえばゼンさんは副団長だって言ってたな。
ゼンさんの上司ってことだろう。
「君はスキルを3つ持ってる。それだけ期待されてるってことなんだろう」
ということはそれなりに厳しいことでもするのかな?
高校では帰宅部だったけど、運自が嫌いなわけではない。
ファンタジー世界で生き抜くためのノウハウも教えてもらえるんだろう。
そう考えるとワクワクするね。
しかし、ゼンさんの表は優れない。
「君には俺も期待している……まあ、だから……なんだ……死ぬなよ」
妙に歯切れ悪そうにゼンさんが言ってくる。
死ぬなって、僕何するの?
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